本編
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遂に飛行大会当日ーー
「リ、リーバル様……」
「君が緊張してどうするのさ」
顔が強張っている私とは対照的に出場するリーバル様は堂々とされている。
「リーバル様は緊張なさらないのですか?」
「全くしないわけじゃないけど、皆に…それから君に僕の技を披露できるかと思うと楽しみのほうが遥かに勝るよ」
「…リーバル様らしゅうございますね」
いつもの通り不敵な笑みを浮かべてそう言ってのけるお姿は凛々しくて胸が高鳴った。
「それじゃあ、そろそろ行ってくるよ」
「はいっ…ご武運をお祈りしております」
「ありがとう。僕の優勝、期待して待っててくれよ?」
「承知いたしました」
出発地点に飛んでいくリーバル様を見送る。…きっとリーバル様なら優勝して帰ってきてくださるだろう。
「初の飛行大会、実に楽しみですなあ」
「!」
後ろを振り返ると大きなフクロウのような姿をした御方が立っていた。
「族長様っ」
「お久しぶりですな、リーチェさん。そんなに畏まらないでくだされ」
礼をする私に族長様は気さくに話しかけてくださる。
「リトの村はいかがですかな?」
「変わらず良い所でございます。色鮮やかな装飾は美しく、吹き抜ける風が爽やかで…私はこの村が好きでございます」
「ホウ、それは何より!リーバルもきっと喜ぶことでしょう。あやつは……おっと、そろそろ始まるようですぞ」
族長様に言われて出発地点に目を向けると、戦士の方々が整列して合図をしようというところだった。
「リーバル様…」
両の手を握って息を呑む。
ドォン!
離れたところから真上に打ち上げたバクダン矢の音を合図に一斉に空へ飛び出した。
この飛行大会は設置された大きな輪っかを潜りながら再び出発地点を目指すというもので、リーバル様曰く飛行の速さだけでなく正確な技術も求められるのだという。
最初は一つの塊のようになっていた戦士達も速さに付いて行けぬ方、速さを意識するあまり輪を潜れず失格になる方と次第にばらつきが出てきた。
しかしそのような中でも先頭を飛ぶリーバル様は群を抜いて速く、そして寸分の狂いもない軌道で輪を潜っていく。
その様に応援に来ていた村人たちから歓声が上がった。
「流石はリーバル。飛ぶことにおいても他を寄せ付けないとはのう…」
「左様でございますね。本当に…力強く鮮やかでございます」
やはり何度目にしても空を駆けるお姿は鮮烈なまでに格好良くて…そんなリーバル様に私はどうしようもなく心惹かれてならないのだ。
「おや…リーチェさん、顔が赤くなっておりますぞ?」
「っ?!あ、あのっこれは……」
「ホッホッホッ!若いとは素敵なことですな」
瞬く間に顔が熱くなっていくのが自分でもわかり、ますます恥ずかしくてたまらなくなってしまった。
ーーー
大会の結果は最後まで追随を許さなかったリーバル様の優勝で終わり、皆の拍手喝采を浴びながら先程駆け抜けた道を悠々と一周なさっている。
そして出発地点を通り過ぎると私の前にある手すりに着地してから地面に降り立った。
「お帰りなさいませ」
「ちゃんと見てたかい?」
「はいっ優勝おめでとうございます!」
「まあ当然の結果だけど…って族長、リーチェと観ていたのですか?」
「うむ。リーバルよ見事であったぞ」
「ありがとうございます。次もまた優勝してみせますよ」
敬語で受け答えをなさるリーバル様に目が丸くなる。姫様にも普通に話していらっしゃるから誰に対しても敬語は使わないのだとばかり思っていた。
「では私はこれで。夜には宴会もありますから、リーチェさんもよろしければ楽しんでくだされ」
「はい族長様。ぜひ参加させていただきとうございます」
族長様が去って行かれた後リーバル様が少し不満げな表情をなさる。
「さっき君、僕でも敬語を使うことがあるのか…って思っただろ」
「えっ?!それは、その……少しだけ」
「僕だって使うべきときはちゃんと使うさ」
「……姫様はよいのですか…?」
「姫はそんな感じがしないんだよ」
リーバル様は少し考える素振りをして私の耳元に口を寄せた。
「あのさ…分かっているだろうけど、姫に敬語を使っていないことは族長に言わないでくれよ?普段はあんな感じだけど、あの人…怒ると説教が長いんだ」
「えっ?」
普段のリーバル様からあまり想像できない頼みに思わず笑ってしまう。凛とされた佇まいの…少し遠くにいるようなリーバル様が何だか年相応の青年に思えたのだ。
「ちょっと、何で笑うのさ」
「ふふっ…リーバル様もそのようなことを仰るのかと思うとつい…」
「君ねえ………もういいや。好きに笑ってなよ」
リーバル様は照れたご様子で目を閉じると、そのまま顔を背けてしまわれた。けれどそんなお姿も今は可愛らしく見えてしまうのだった。