本編
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先の古代遺跡の任から数週間が経過した。
「おはようございます姫様」
「おはよう。リーチェ」
姫様のお支度の最後に御髪を結っていると鏡越しに見つめられる。
「いかがなさいましたか?」
「いえ、貴女の体調が戻って良かったと思って…」
「その節はご心配をおかけいたしました」
遺跡の最深部で流れ込んできた霊力に体がついていけず倒れてしまった私は、あの後も数日間に渡って不調が続いた。しかし今ではその霊力も私の中に馴染んで何事もなかったかように元通りの日々を過ごすことができている。
「それにしても…あれは一体何だったのでございましょう…?」
「プルア達が遺跡の調査を進めてくれていますから、そのことに関しても何らかの報告があるかもしれません」
「左様でございますね」
気にかかることは数多くあるけれど今はそれを待つより他ない。
「ところでリーチェ、明日の準備はちゃんとしましたか?」
「えっ……は、はい」
頷きながら顔が熱くなり、そんな私を見て姫様はくすりと笑う。
明日からの3日間お休みをいただき、以前にリーバル様からお誘いを受けた飛行大会を観にリトの村へ行くことになっているのだ。
「ふふ、楽しんできてくださいね」
「あ、ありがとうございます。ですが…やはり私だけ良いのでしょうか?その…インパ姉様に申し訳のうございます」
2泊3日でリトの村へ行くことをお話したところ姉様も付いていきたいと仰っていたけれど、姫様から許可を頂けなかったと後日嘆いておられた。
「インパの気持ちは私にも理解できますが…今回ばかりは仕方がありません。彼女もきっと納得している筈ですよ」
「そうなのでしょうか…?」
落ち込まれていた姉様のお顔が思い出され、やはり申し訳ない気持ちになる。
「リーチェ、リーバルが貴女だけにその話をしたということは貴女一人に来てほしいということです。それなのに皆で押しかけては彼の迷惑になってしまいます。そうは思いませんか?」
「そ、それは確かに…」
「ですから貴女は何も気にせず楽しんできてくれればいいのですよ。私とインパはお土産話を楽しみに待っています」
「姫様…ありがとうございます」
姫様はにこやかに頷かれると今度は何かを思いついたようにお茶目な笑みを浮かべられた。
「あっそうそう…リーバルには応援していますと伝えてくださいね」
「?承知いたしました。必ずやお伝えします」
そして翌日ーーー
荷物を隣に置き、中庭の椅子に腰掛けてリーバル様をお待ちする。
「やはり早かったでしょうか…」
リーバル様に会えると思うと居ても立っても居られず、つい定刻より随分前なのに待ち合わせ場所まで来てしまったのだ。
ここまま座っていても落ち着かないので散歩をしていようかと立ち上がりかけたその時、いつかのように旋風が庭の中を駆け巡る。
「おや、もう来ていたのかい?」
「!…リーバル様っ」
「随分早いね。もしかして僕に会うのが待ち遠しかった、とか?」
ただの冗談だというのに瞬く間に顔を真っ赤にしてしまう私を見てリーバル様は意地悪な笑みを浮かべた。
「へえ…図星なのか」
「そっ…それ以上は言葉にしないでくださいませ……」
「はいはい。からかいすぎて行かないなんて言われたら堪ったものじゃないからね…まあそれだけ血色がいいなら体調も問題なさそうで何よりだよ」
そう仰ると先程とは違う安心したような笑みを向けられる。リーバル様とお別れした時はまだ本調子ではなかったから心配してくださっていたのだろうか。
「見ての通りもうすっかり元気でございます。どうかご安心ください」
「それならいいけど。あんな風に倒れられちゃ流石に心配はしたからね」
その時ふと疑問が浮かんだ。
「そういえば…リーバル様はどうしてこんなに早くいらっしゃったのですか?」
「っ!」
先程まで余裕を感じさせる笑みを浮かべていたリーバル様の表情が一転なさる。
「リーバル様?」
「ぼ、僕は偶然だよ!たまたま風向きが良かった。それだけだからね」
「左様でございましたか。それでしたなら…リーチェもこの時間に来ていたのは良かったのやもしれません」
きっと女神様のお取り計らいなのだろう。リーバル様と早く会わせてくださった女神様に心の内で感謝を申し上げた。
リーバル様は気を取り直すように咳払いをひとつして私に向き直る。
「…じゃあ、そろそろ行こうか」
「はいっ…で、では…よろしくお願いいたします」
ーーー
リーバル様のお背中に乗せていただきハイラルの空へ飛び立った。
「わあっ…!」
初めての経験で最初は緊張したものの、目下に広がる大地…どこまでも続く青い空ーー壮大な景色に思わず感嘆の声が漏れる。
「壮観だろう?」
「はいっとても清々しゅうございます!…リーバル様はこのような世界をご覧になっているのですね」
「ああ。僕もこの眺めは結構気に入ってるよ…そうだ、折角ならもっと上に行ってみようか」
「えっこれよりも上に…?」
少し戸惑う私に僅かに振り向いたリーバル様は得意げな笑みを向けられた。
「心配いらないさ。しっかり掴まっていなよ!」
「え…きゃあっ?!」
風を掴むように翼を大きく羽ばたかせると一気に舞い上がる。思わずしがみついた背中の逞しさと急上昇への驚きで私の胸は早くも鳴り止まないのだった。