本編
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「ほらね、僕の言った通りだっただろ?」
ヒノックスが塵になったのを確認してからリーチェの方を振り向く。
「い、今のはリーバル様のお力あってこそでございます!私一人ではとても…」
「やれやれ、まだそんなことを言ってるの?」
リーチェはどうしても自信がもてないらしい。…でもまあ、そんな彼女だから守ってあげたくなるわけだけど。
「まったく…君は本当に気が弱いな。僕がついてなきゃダメだね」
「リーバル様…」
「ああ、迷惑だなんて思ってないから安心しなよ。幸い君と僕、かなり相性がいいみたいだからさ」
そう付け加えると目を丸くして、それから嬉しそうな笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。あのっ私も…貴方様のお役に立てるよう、もっと弓の稽古に励んでまいります」
「フン、期待しておくよ」
健気なリーチェに愛おしさが湧いてくるのとは裏腹に、やっぱり僕の口からは素っ気ない返事しか出てこない。それでも変わらない笑顔を向けてくるのだから…まったく彼女も大概だ。
ーーー
姫からの頼みで、先程の戦闘で砂や飛んできた瓦礫で汚れてしまった女神像をリーチェの風で綺麗にすることになった。
「貴女も疲れているのにごめんなさい。どうしてもこのままにはしておけなくて…」
「私も姫様と同じ気持ちでございます。綺麗にいたしますのでお任せくださいませ!」
そう言ってリーチェは女神像の前に立つと、銀色の風で女神像を包んで瓦礫と砂埃を優しく取り除いていく。
ーーその時、女神像が突然眩しく光った。
「っ…?!」
強い光で辺り一面が白くなる。しかしそれは一瞬のことで次の瞬間に光は収まり、伏せていた目を開けると女神像の前でリーチェが倒れていた。
「リーチェ!!」
急いで駆け寄って抱き起こす。
「しっかりするんだ…!」
「…うっ……リーバル様…」
見たところ外傷はなさそうだが彼女の身に何らかのことが起こったのは確かだろう。
「一体何があったんだい?!」
「…わかりません……ただ…私の中に霊力が流れ込んできて…その反動で意識を失ったのだと思います…」
「それって…女神像からってこと?」
「おそらく…」
身体に相当な負荷がかかったのか、意識を取り戻しているものの疲弊していて顔色も良くない。
ふと顔を上げたインパが「あっ」と声を上げる。
「見てください!女神像の後ろに隠し部屋があります…!」
倒れたリーチェに気を取られて分からなかったが、先程まで女神像の後ろにあった壁がなくなり更に奥に空間が広がっていた。
「女神像に風を当てたことで仕掛けが作動したのでしょうか?…しかし今はリーチェの状態が心配です。一刻も早く引き返したほうがいいでしょう」
「いえ…行ってくださいませ」
「君、何を言って…!」
上半身を起こしたリーチェが懸命に訴えかける。
「この先にあるものを私は見なければならない気がするのです。ですから姫様、どうか…」
姫は困惑した表情でリーチェを見つめた後、静かに頷いた。
「わかりました。ただし何があるか分かったらすぐに引き返しますよ。…それでいいですね?」
「はい。…ありがとうございます」
「行きましょう」という姫の言葉を切っ掛けに皆が隠し部屋へ向かう。僕もリーチェを横抱きにして立ち上がった。
「リ、リーバル様っ自分で…」
「歩けるわけないでしょ」
「そうですよ!リーバル殿では嫌なら私がおんぶしますからね!」
隣で心配そうに妹を覗き込むインパがそんなことを言い出す。
「はあ?君の腕なんかより僕の上等な羽の方がいいに決まってるじゃないか」
「そちらこそ何を言っているんですか?私は幼い頃からリーチェをおんぶしてきたんですからね!」
「やれやれ…そんなの昔の話だろ?」
「なんですって!?」
「お、お二人とも喧嘩は…」
口論になりながら足を進めると、隠されていた空間には壁一面に壁画が彫られていた。一通り観察した姫が戸惑いながら呟く。
「これは厄災討伐の様子なのでしょうか…?」
「ですが姫様、カカリコ村にある壁画とは随分違いますね」
「ええ」
竜のような姿の厄災ガノン、退魔の剣の騎士と封印の力を宿す姫、しかしこの壁画には神獣もなければガーディアンもない。そして何より…
「この女性は……何者なのでしょう」
姫の他にもう一人、以前に僕らも見せてもらった壁画にはなかった銀髪の女が描かれていた。
弓を持つその姿はまるでーー
僕に抱きかかえられたまま壁画を見つめるリーチェに視線を向ける。
………まさかね。そんなわけないじゃないか。
確証はないけど僕にだって何となく分かる。それでも今の彼女の姿を目の当たりにしていると、そう思わずにはいられなかった。