本編
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「ほら、もうからかったりしないから顔を上げなよ」
「……本当でございますか?」
「本当さ」
恐る恐る顔を上げると困ったような笑みを浮かべたリーバル様と目が合う。
「今回ばかりは少しからかいすぎたみたいだ。その……すまなかったよ」
「い、いえ…!私の方こそリーバル様を困らせてしまい申し訳ございません」
あまりに笑われるものだから居たたまれなくてリーバル殿のお顔から逃げてしまったのだ。リーバル様は何も悪いことなどなさっていない。
「ならこの話はここまでにしよう。……それでいいかい?」
「もちろんでございます」
私が頷いたのを見てリーバル様も頷いてくださる。
「じゃあ行こうか」
「…はいっ」
ーーー
魔物を倒しながら先へ進んでいき、ついに遺跡の最奥と思われる開けた空間にたどり着いた。
「どうやらこの広間が最深部のようですね。リーチェ、ここまでの案内ご苦労さまでした」
「ありがとうございます。姫様」
「それにしても…」
隣りにいたリーバル様が広間の奥に視線を向ける。その先には誰かが来るのを待っていたかのように女神ハイリア様の像が佇んでいた。
「まさかこんな所に女神像があったなんてね。それもこんな大きさのさ」
「そうですね。様々な場所で修行をしてきましたが私もこれほどの女神像は初めて目にしました」
姫様の仰るとおり…今まで見てきた中で最も大きかった始まりの台地の女神像よりも一回り大きく、高さに至っては天井に届きそうなほどである。
「ですが私達で発見できてようございましたね。きっと女神様もお一人で寂しかったことでしょうから…」
「寂しい、か。石像にそんな心があるかはさて置き…たしかにこんな所に放置されたままじゃ女神もあんまりだよね」
そう言いながらリーバル様は大げさに両手を広げてみせた。気取って見える言動もリーバル様が行うと様になってしまうのだから不思議だ。
ーーズシィン…!
「っ!」
引き返そうとした矢先、突然の地響きにサッと血の気が引く。
「今のは一体…?!」
「リーチェ、さっきの地図は出せるかい?」
「は…はいっ」
慌てて風読みをすると1匹の魔物が広間に向かっていた。
「どうやら大物のお出ましのようだね」
リーバル様が出入り口を睨んだ直後、轟音と共に大きく崩れた壁の瓦礫と土煙から一つ目の魔物ヒノックスが現れる。
「そんな……」
初めて見る超大型の魔物を前に身体が震えて弓をまともに握ることができない。
そんな私の手に紺色の温かな羽毛が重ねられる。
「怖がる必要なんてないさ」
「リーバル様……」
「なんと言ったって君の隣にはリト族一番の戦士、この僕リーバルがいるんだからね。ある意味これ以上安全な場所なんてないかもしれないよ?」
リーバル様のその自身に満ちたお声と不敵に浮かべられた笑みは恐怖を安心に変えてくださった。
「そうやもしれませんね」
「それに僕は、君が奴に敵わないなんて思ってないよ」
「えっ?それはいくらなんでも買いかぶりかと…」
私の言葉を遮るようにリーバル様はオオワシの弓を構えた。
「さて…前座はあの二人に譲ったことだし、今度こそ僕らの出番だよね」
「あ、あの…それは…つまり……」
「出来ないとは言わせないよ?それにもう…敵は待ったなしみたいだ」
そう仰ると振り上げられたヒノックスの右手をバクダン矢で相殺する。
「そ、そんな…」
有無を言わさないリーバル様とこの状況……とても恐ろしいけれど他に選ぶ余地は残されていない。
「わっ私も…お力添えさせていただきます」
「いい返事だね」
やや強引に心を決めた私を見てリーバル様は楽しそうに笑っていた。
「攻撃は僕が防ぐから君は奴の目を狙えるかい?」
「っ…かしこまりました!」
深呼吸をして弓を構える。
私が狙いを定めやすいようリーバル様は矢で牽制しながらヒノックスの周りを飛び回って動きを止めてくださった。
瞬間、矢じりと相手の瞳孔が重なる。
「当たってくださいませっ…!」
祈るように放った矢は空気を切るような音を立てて真っ直ぐに飛んでゆき奇跡的に眼に命中した。急所を射抜かれたヒノックスは呻きながら目を押さえる。
「これで止めだよ!」
リーバル様はその隙を逃さず一層高く跳ぶと華麗な連射を浴びせて見事ヒノックスの討伐を成し遂げたのだった、