本編
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ああどうしよう……!
たったの一泊とはいえ殿方と…あろうことか密かに恋慕うリーバル様と同じ部屋になってしまったのだ。
「ねえ」
「はいっ!」
私のあまりの緊張ぶりにリーバル様は呆れた様子で肩をすくめる
「やれやれ…君がそんな調子じゃ僕も気が休まらないんだけど?」
「もっ…申し訳ございません」
「……まあ君の気持ちもわからないじゃないけどさ。とりあえず座りなよ」
先程よりも優しい声色で促されて躊躇いながらお隣に腰掛けるとまたリーバル様に真っ直ぐな視線を向けられた。
「っ…」
その翠緑の瞳に見つめられると自分でもわかるくらいに顔が熱くなってしまう。自覚があるくらいだから当然リーバル様にも気取られてしまい今度は笑われてしまった。
「どんどん赤くなってるじゃないか。君の顔、そのうちイチゴみたいになっちゃうんじゃないの?」
「か、からかわないでくださいませ…!」
「いくら君の頼みでもそれは無理な相談だね。でも目元は本当に赤いな…冷やしたほうがよさそうだ」
「何かもらってくるよ」と仰って立ち上がろうとするリーバル様を慌てて止める。
「それでしたら自分で…」
「いいから待ってなよ。君も色々あって疲れただろ?」
リーバル様は私の肩に手を置いて僅かに微笑むと部屋を後にされた。
ーーー
廊下に出て少し歩くと丁度近くにいた宿屋の従業員に声を掛けて氷袋を借りる。これで冷やしておけば明日になって目が腫れているなんてこともないだろう。
…僕が部屋に戻ったらまたリーチェを強張らせるだろうか。
彼女の初々しい反応は心底気に入っているが二人きりで過ごす時間なんて滅多にないわけだから欲を言えばもう少し打ち解けたい。
さて、どうしたものかな…。
ーーー
「お待たせ」
お戻りになったリーバル様は氷袋とコップを2つ乗せたトレーを手に持っていた。
「それは?」
「ホットミルクさ。気休めだけど少しは落ち着くだろ?」
手渡されたコップと同じようにリーバル様の思いやりがとても温かい。
「…お心遣い感謝いたします」
「フン、どういたしまして」
ホットミルクのおかげか私の緊張も和らぎ、それからはソファーに並んで他愛のない話をしていた。
「なあリーチェ…君はまたリトの村に来たいと思うかい?」
「はい。空気か澄んでいてよい所でございましたから」
「…それなら丁度いいか」
「丁度よい、とは?」
私が首を傾げると何故かお顔を明後日の方向に逸らされる。
「もし本当にまた来たいと思っているなら、今度リトの村で開催する飛行大会……君も観にきなよ」
「私が行ってもよろしいのでしょうか…?」
「君なら村の皆も歓迎するよ」
「それでしたら是非行きとうございます」
「決まりだね」
リーバル様は上機嫌になって残りのホットミルクを飲み干した。
「さて、明日も早いしそろそろ休もうか」
「そうですね。あの…リーバル様のおかげで楽しい時間でございました」
「それは何より。僕も……まあ君との時間は心地がいいと思っているよ」
「ふふ、嬉しゅうございます」
穏やかな表情を浮かべていたリーバル様が目を見開く。
「どうかなさいましたか?」
「っ…何でもない!おやすみ!」
「えっ…リーバル様?」
ーーー
初めて見る声を出して笑うリーチェは愛らしくて思いきり動揺してしまった。
悪いけど今の僕には困惑する彼女をフォローしてやる余裕はなさそうだ。
「えっと…おやすみなさいませ」
「……うん」
口から出るのは素っ気ない返事だけで、これじゃあスマートに振る舞っていたのが台無しじゃないか。
……考えるのはやめだ。今日はもう寝てしまおう。