嚴白虎

◇ ◇ 山 道 ◇ ◇

山賊と私の部下達が観戦している。嚴白虎によく似た長身の青年が、とりわけ見入っていた。

山賊(甲): 嚴輿、あなたはお頭と孫策のどちらが勝つと思う?

嚴輿: もちろん我が兄が勝つさ。

嚴白虎の弟、嚴輿……調査によると、野心が強く扱いづらい人物だ。

すでに一刻がすぎていたが、二人とも疲れを知らぬ様に、なお戦い続けている。

私は嚴輿の動きに気づいた。

彼は首を傾げ、部下の一人に何か囁いている。
その人は袖の中から小さな弓を取り出し、密かに孫策に狙いをつける……


広陵王:嚴輿、よく見ていなさい。

小細工を見破られても厳輿は取り乱さず、冷ややかに笑って、何事もなかったかのように装った。

私は時刻を見た。孫策と厳白虎は、なお名残り惜しい戦いをして、一時は勝負がつかない様子であった。


広陵王:孫策、これ以上戦うな。時間がない。

孫策はその言葉を聞くと、攻撃をさらに激しくした。しかし次の瞬間……

嚴白虎:やめだやめだ!

孫策:降参か?

嚴白虎:フン!お前らの負けだろう。

孫策:嚴白虎、疲れたならハッキリ言え。俺たちは休憩する。俺はこれ以上お前を攻撃しない。

嚴白虎:ハハハ……お前はまだまだ甘いな!
お前は袁術と辰の刻に玉璽を引き渡す約束をしているんだろうが、俺とこれだけ長く戦っていたらもう時間がないだろう。
袁術みたいな器の小さい奴が、お前たちを待つわけがない。きっとお前が約束を破ったと思っているだろうな。

確かに彼らは戦いすぎた。今から全速で出発しても、約束の時間までに玉璽を届けるのは無理だろう。

嚴白虎:広陵王!お前が判断してくれ。俺のやり方が最善じゃないか?
俺たち三人兄弟の絆も守り、袁術が江東を手に入れるのも阻止した。ああ、俺ってなんて賢いんだ…

厳白虎は得意げな顔をしていたが、私と孫策は目を合わせただけで何も言わなかった。

山賊(甲):お頭!お頭!大変だ!!

嚴白虎:何が大変なんだ?

山賊:飛鷹から急報だ。さっき、兵士たち数隊が江東を出発した!
俺たちの人手はここに集中しているから、すべての道を守りきれず、検問できなかった……

嚴白虎から笑みが消え、信じられないという顔で私たちの方を見た。

孫策:袁術は確かに器が小さく、疑り深い性格だから、玉璽は時間通りに届けないといけない。

広陵王:本物の玉璽は、部隊の中に紛れ込ませて送った。おそらく先に南陽に届くだろう。

嚴白虎:お前ら……俺を騙したのか?
俺たち三人は兄弟の契りを結んだのに、お前たち二人は手を組んで俺を騙したのか?!

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【沈黙】
私は一言も発さず、沈黙を保った。

嚴白虎:何とか言えよ!もう言い訳もできないのか?
俺が間違っていた。こんな策を弄する連中と兄弟になるなんて!

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【恥入る】

広陵王:……すまない。大局のため、こうするしかなかったんだ。

嚴白虎:大局?大局ってなんだ?俺たち兄弟の絆よりも大事なのか?!

― ― ― ― ― ― ― ―

嚴白虎は怒りで顔を真っ赤にしながらも、どこか悲しげな表情を浮かべた。
彼は馬に飛び乗り、そのまま去っていった。

私は孫策の方を見た。彼は軽く首を横に振った。


孫策:問題ない。玉璽はすでに送った。奴には止められない。

広陵王:彼は自分が止められないと気づけば、また戻ってくるだろう。

嚴白虎が去ると、彼の部下たちもそれに従った。嚴輿は冷たい目つきで私たちを一瞥し、馬にまたがった。

林の中はたちまち静まり返り、不気味なほどの静寂が漂っていた。


孫策:……(ため息)あいつはもう戻ってこない。

私は目を閉じてため息をつき、彼の意図を理解した。
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