嚴白虎
◇ ◇ 江岸 ◇ ◇
波光がきらめく江のほとり、夕焼けが空を覆い、鳥たちは見渡す限り金色の光の中を驚いて飛び立っていった。
嚴白虎:あの時の祝宴はここで開かれ、孫策はバカみたいに泣いてたな……
広陵王:あなたも大して変わらないよ。周瑜を追いかけ仙女と呼び、川に押し込まれて魚の餌にされそうになったじゃない。
昔のことを話題にすると、思わず大笑いしてしまう。その笑い声は広い川面に漂い次第に消えていった。
嚴白虎:俺はここに一席だけの宴を用意した。招待したのはお前だけだ。どうだ、すごいだろ?
広陵王:私たち、もう二度と会うことはないと思ってた。
嚴白虎:あの時俺を生かしたのは、少しの余地を残してくれたってことだな。そうそう、俺のために孫策に頼んでくれたか?
広陵王:頼む?あなたは私を仲介者にして投降する気がある?
嚴白虎:ただ答えてくれればいい。俺の代わりに、情けを乞うたか?
私は首を横に振った。江都に到着してからは退避に関わる処理をしていて、まだ孫策に会っていなかった。
嚴白虎:そうか、それならいい!俺のことを兄弟だと思うなら、俺のために情けを乞うようなことはしないでくれ。
― ― ― ― ― ― ― ―
【なぜ?】
広陵王:なぜ?私が間に入ってあなたたちの仲を取り持てば、古い友人同士が殺し合うのを避けることができる……
嚴白虎:「古い友人同士で殺し合う?」
奴は気にしないし、俺も気にしない。お前は何を気にしている?
― ― ― ― ― ― ― ―
【わかった】
広陵王:わかったよ。でも……
嚴白虎:「でも」なんてことはない。わかってくれたらそれでいい。
― ― ― ― ― ― ― ―
嚴白虎:この先もし誰かが俺の物語を書くとして、ひざまずいて命乞いをする臆病者として書かれたくはない。
広陵王:だから、あなたは死ぬ覚悟で戦うことを選ぶの?
嚴白虎:そこまではしないさ。自分の実力は分かってるつもりだ。仲間を無駄死にさせるつもりもない。
部曲は解散させ、孫氏の包囲を避けるために丹陽山を越えて逃すつもりだ。
広陵王:それはよかった。あなたが一時の感情で死に物狂いになるのを心配してたけど、今のところ頭も働いてるようだね。
彼はにやりと笑い、神妙な顔で一つの巻物を取り出して私の手へと渡してきた。
嚴白虎:ここには俺が予測した結末が記してある。見るかどうかはお前に任せる。
広陵王:部曲は解散するのに結末を予測する必要がある?何を予測するの?
嚴白虎:孫策の包囲は厳重だ!仲間たちが無事に逃げられるかどうかもわからない。
巻物はまるで青銅でできているかのように重く、しっかりと持っていられないほどだった。
広陵王:……あなた達が撤退をするなら、こちらにも別の道がある。
江東の繍衣楼の拠点は、孫策の黙認のもとに退避している。だから途中で検問を受けることがない。
嚴白虎:お前が俺たちが撤退するのを手伝ってくれるのか?
広陵王:あなたとその兄弟たちは、繍衣楼の人間を装い、私と一緒に広陵に帰ればいい。
嚴白虎は一瞬驚いた後、突然笑い出した。
嚴白虎:山越軍を取り込もうってのか?お前はなかなか貪欲だな!
広陵王:どうせ解散させるなら、私にくれたってどうということはないでしょう?
私は指を酒に浸し、机の上に地図を描き、彼に撤退の道筋を教えた。
広陵王:五日以内にこの場所に到達し、阿蝉という人を探して。彼女があなたたちの離脱を手配してくれる。
◇ ◇ 江都 ◇ ◇
こうすれば彼らも無事に撤退できるはず……
そうなると、この巻物に書かれた“戦局の予測”も、もうどうでもいいのだろう。
私はその青銅のように重い巻物を取り出した。嚴白虎は、これは彼が描いた戦局の予測であり、見るかどうかは私が決めていいと言った。
広陵王:………
……………
こともあろうに、それは私と孫策の描かれた春画だった……