嚴白虎

◇ ◇ 江都 ◇ ◇

夏の日は雨が多く、一度降り出すと何日も続く。空はどんよりと暗く、風雨がもの寂しい。

孫策は山越や会稽一帯の反乱軍に対して総攻撃を仕掛けようとしている。彼は事前に繍衣楼に知らせをくれたので、私は退避の手筈を整えた。


鳶使:この戦いの後、揚州は孫氏の天下となります……嚴白虎がどう出るかがわかりません。

広陵王:人それぞれに決断がある。孫策は言っていた、もし彼が降伏すれば、命だけは助けてやると。

しかし、嚴白虎は降伏するような人物ではありません。武力衝突は避けられないだろう。

鳶使:私はアイツのこと結構好きなんです!もし彼が降伏して従えば、これから毎日、賑やかで楽しくなるのに。

広陵王:そうね……そうだといいけど。

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【取り返しのつかないことを知っている】

広陵王:孫策が江東を併合するのは誰にも止められない、大勢はすでに決まってる。でも嚴白虎は孫氏の家臣に甘んじるつもりはないでしょう。このことについて、私たちが取りなす余地はとっくになくなっている。

鳶使:あぁ、仕方ないか……それなら、これから毎年彼の墓前に行って、彼の好きだった本を焼いて供えてやろう……

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【嚴白虎に投降を勧めたい】

広陵王:退避が完了したら、私は嚴白虎に会いに行って投降するよう説得したいと思う。
孫策のやり方は強硬で威圧的だけど、相手を徹底的に追い詰めるような冷酷さは持ってない。まだ転機があると思う……

鳶使:いいね、いいね!もし彼が生き延びたら、これからは私に本を買ってくれる人ができる!

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馬車の外ではザーザーと雨音が響き、馬車の中では文官や従者たちの絶え間ない議論の声が続いている。
気が落ち着かず、簾を上げて風に当たりたいと思った。しかし……


鳶使:主、気をつけて!!!敵襲です!!!!

——一本の矢が私の馬車のくびきに突き刺さり、金属音を響かせた。遠くから、『徳』の字が描かれた旗が空を覆うようにして押し寄せてくる。

あまりにも見覚えのある光景が、再び私の目の前に広がった。
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