嚴白虎

◇ ◇ 効野 ◇ ◇

彼が立ち去った方向を、私は馬でしばらく追った。
一時ほど走ると、辺りの空気に明らかに濃い血の匂いが混ざってきた。

私は孫策がどれだけの人を彼の追撃に向かわせたのかを知らない。
森の中には多くの人が倒れていて、折れた刀や剣が冷たい光を放っている。

……嚴白虎は見つからなかった……彼はまた戦うことができるのか?

さらに先へ進むと、血生臭さはいっそう強くなる。
血塗れで赤い人影が地面に跪き、折れた刀を支えにしていた。


嚴白虎:こんなに情けない思いをしたのは初めてだ……ハハッ……本当に情けない……

彼が奪った馬は疲れ果てていて、包囲網を破ることはできなかった。
彼は全身傷だらけで、閉じ込められた獣となった。

私が近づくのを、彼はじっと見つめていた。その目は野性的な強情さをたたえていた。


嚴白虎:あぁ、お前は清廉だな。まさに広陵王だ……

広陵王:あなたを通して玉璽の価値を証明しようという計画だった。世の中の至宝は総じて争われるもの。
あなたとの争奪があったからこそ、袁術は孫策が送ったものが本物の玉璽であると信じることができた。

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【彼を始末する】

私は剣を抜き、彼の前に歩み寄り、ゆっくりと剣を持ち上げた。
彼の手にある刃こぼれした刀もまた私に向けられる。その目は千年の霜雪のように冷たかった。


嚴白虎:はからずも、最後はお前とか……まぁいい、一撃で勝負を決めるぞ!

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【彼を放してやる】

広陵王:嚴白虎、もう行きなさい……。山へ帰り、世俗には戻ってくるな。
あなたが隠れているなら、私は孫策にあなたを見逃すよう説得しよう。

嚴白虎:我、嚴白虎は堂々たる男だ。天と地の間に生まれたこの命、どこへ行くのかは自分で決める!

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彼は叫びながら私に飛びかかろうとしたが、傷があまりにも深く、一歩踏み出したところで膝をつき、咳き込みながら血を吐いた。
力を振り絞って、彼は懐から血に染まった何かを取り出し、私に向かって力強く投げつけた。


嚴白虎:……返してやる……

それは一巻の書物だった。私たちが初めて出会ったとき、この書物を通じて縁が結ばれた。今やその墨跡は血で滲み、荒唐無稽な話が広がっていた。

嚴白虎:世間の人々は、この本が戯言で、汚らわしく、下品だと言う…
でも俺に言わせれば、どんなものでも、この世の道理に落ちてしまえば、みな同じように吐き気がするものだ。

広陵王:人の心とはそういうものだ、決して変わらない。

嚴白虎:お前と孫策は同類だ。お前たちの心は、俺には決してわからない。
お前たちに利用されるのは、当然のことだったんだ……!

嚴白虎は惨めに笑い声を上げ、突然、断刀を持ち上げて最後の力を振り絞り、私に向かって刀を投げつけてきた。
その後、彼はよろめきながら深い森の中へと逃げて行き、その姿は夜の闇に消えていった。

私は追いかけず、彼の去るがままに任せた。
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