蜜月
幼いころからずっと一緒にいた。
所謂、幼馴染といってもいいだろう。
幼いころから、というより、私が生まれた時から一緒なので、
兄妹、双子、といってもいいのかもしれない。
自分が小さい頃は特に、1日中べったりだったそうだ。
寝る時もお風呂すら、一緒でないと嫌だと泣くほどだったそうだ。
そんな私に対して、父も母も笑っていた。
やがて制服を身にまとう年齢になっても、私は彼と共に在った。
もちろん学校まで一緒というわけにはいかなかったので、
一緒にいられる時間は減ってしまったが、それでもそれ以外の時間はなるべく、私は彼と共にいることを選んだ。
彼の胸に顔をうずめると、どこか懐かしく安心する香りがして
やわらかな頬に口づけをすると、ほんのりと胸が暖かくあまずっぱい気持ちでいっぱいになったものだ。
私の初めては、すべて彼のものだった。
”そういうこと”に彼が興味を抱いてくれたかは、わからなかったけど。
彼は私の欲求を、望みを受け入れてくれた。
『あ 。』
はじめては、いつもとても緊張したけれど
彼となら怖くはなかった。
夜のような黒い瞳で見つめられると、心まで全部さらけ出せる。
幼いころから一緒なんだもの、全部全部知っていてくれる。
一緒に布団にもぐるとあたたかくて、夏は少し暑いけれどそれでも一緒だった。
「忘れ物はない?」
母の声がする。
「あなたはちょっと抜けてるところがあるから」
『大丈夫だよ、一人じゃないもん』
「ははは、そうだな、昔からずっとあの子と一緒だもんな。」
「もうパパ、真剣に心配してるのよ」
こんな家族の会話も、もうしばらくは出来ないのだろう。
明日、私は大学進学のためにこの街から出ていく。
もちろん寂しくもあるけれど、でもそれ以上に楽しみでもあるのだ。
だって、明日からは彼と二人きりの生活が始まるんだから。
『ママ心配しないで、だって彼と一緒なんだもの、怖いことなんてないわ』
二人に笑いかけて、私はリビングを後にした。
そう、何も怖いことなんてないの。
こぼれる笑みは恍惚の笑み。幸せなの。
自室で待ってくれていた彼をそっと抱きしめる。
『ねえ、ついに明日よ』
『二人きりの生活だなんて、夫婦みたいじゃない?』
『そう、ねえ、せっかくなら旅行もしちゃおうか』
『ふふっ、そうそう、ハネムーンよ』
幼馴染としての一線を越えた私たちは、もうとっくの昔からこの日を待っていた。
私は彼を抱き上げ、月の光の差し込む青い部屋の中で、
くるりと踊った。
「ねえあなた、本当に大丈夫かしら」
「一人暮らしのことか?そんなに心配しなくても大丈夫だろう」
「違うのよ、いえ、それもそうなんだけど…あれのこと」
「ああ…うん」
「あの子、ぬいぐるみを本当の人間のように…」
「だが、それが生活に影響まではしてないだろう、なに、精神安定剤のようなものさ」
「そう、そうね…ならいいのだけど」
貴方と二人、ダンスホールで蜜月を
所謂、幼馴染といってもいいだろう。
幼いころから、というより、私が生まれた時から一緒なので、
兄妹、双子、といってもいいのかもしれない。
自分が小さい頃は特に、1日中べったりだったそうだ。
寝る時もお風呂すら、一緒でないと嫌だと泣くほどだったそうだ。
そんな私に対して、父も母も笑っていた。
やがて制服を身にまとう年齢になっても、私は彼と共に在った。
もちろん学校まで一緒というわけにはいかなかったので、
一緒にいられる時間は減ってしまったが、それでもそれ以外の時間はなるべく、私は彼と共にいることを選んだ。
彼の胸に顔をうずめると、どこか懐かしく安心する香りがして
やわらかな頬に口づけをすると、ほんのりと胸が暖かくあまずっぱい気持ちでいっぱいになったものだ。
私の初めては、すべて彼のものだった。
”そういうこと”に彼が興味を抱いてくれたかは、わからなかったけど。
彼は私の欲求を、望みを受け入れてくれた。
『あ 。』
はじめては、いつもとても緊張したけれど
彼となら怖くはなかった。
夜のような黒い瞳で見つめられると、心まで全部さらけ出せる。
幼いころから一緒なんだもの、全部全部知っていてくれる。
一緒に布団にもぐるとあたたかくて、夏は少し暑いけれどそれでも一緒だった。
「忘れ物はない?」
母の声がする。
「あなたはちょっと抜けてるところがあるから」
『大丈夫だよ、一人じゃないもん』
「ははは、そうだな、昔からずっとあの子と一緒だもんな。」
「もうパパ、真剣に心配してるのよ」
こんな家族の会話も、もうしばらくは出来ないのだろう。
明日、私は大学進学のためにこの街から出ていく。
もちろん寂しくもあるけれど、でもそれ以上に楽しみでもあるのだ。
だって、明日からは彼と二人きりの生活が始まるんだから。
『ママ心配しないで、だって彼と一緒なんだもの、怖いことなんてないわ』
二人に笑いかけて、私はリビングを後にした。
そう、何も怖いことなんてないの。
こぼれる笑みは恍惚の笑み。幸せなの。
自室で待ってくれていた彼をそっと抱きしめる。
『ねえ、ついに明日よ』
『二人きりの生活だなんて、夫婦みたいじゃない?』
『そう、ねえ、せっかくなら旅行もしちゃおうか』
『ふふっ、そうそう、ハネムーンよ』
幼馴染としての一線を越えた私たちは、もうとっくの昔からこの日を待っていた。
私は彼を抱き上げ、月の光の差し込む青い部屋の中で、
くるりと踊った。
「ねえあなた、本当に大丈夫かしら」
「一人暮らしのことか?そんなに心配しなくても大丈夫だろう」
「違うのよ、いえ、それもそうなんだけど…あれのこと」
「ああ…うん」
「あの子、ぬいぐるみを本当の人間のように…」
「だが、それが生活に影響まではしてないだろう、なに、精神安定剤のようなものさ」
「そう、そうね…ならいいのだけど」
貴方と二人、ダンスホールで蜜月を
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