【18】昼時の思い出話
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「嬢ちゃんは、親父さんに似たんだな…」
他の写真も見て分かった事は…マリエと兄の容姿は父親に似ており、姉は母親の遺伝子を受け継いだようだ。
逆に髪の色に関しては、マリエは母親の要素が色濃く出たらしい。
「…にしても、嬢ちゃんは小さい頃から食べる事が好きだったんだな」
写真の一枚一枚に映っている子ども時代のマリエは、何かを食べている場面が多い。
彼女の食欲旺盛ぶりは、この頃から健在だったようだ。
「あー、これはオムライスを三度目に作った時の写真で、そっちは姉が作ったエッグタルトを試食した時のですよー」
「しかも、詳しく覚えてるし…」
「こうみえて、記憶力はいい方なんですよー。特に料理の事はきっちり鮮明に覚えられます」
んふふ~と朗らかに笑いながら言うマリエに、ルシュは苦笑する。
同時に、そういうところが彼女らしい…と納得してしまう。
「ふーん…じゃあ、苦手な事とかは?」
得意な事が分かると、逆も気になってくる。
さりげなく質問してみると、マリエはうーん…と腕を組んで考える。
「そうですねー…水泳かな」
マリエが眉を顰めてそう答えた。
「カナヅチなのか」
「苦手と言うよりも、好きじゃないんですよ。口に海水が入るのが…」
思い出したように、マリエは苦い顔をする。
その口調から、彼女は海にいい思い出がなさそうに思えた。
「あっ、海で思い出した! 実は今日の午前中に宅配便がきまして…兄から鰻を届いたんですよ」
「ウナギって…」
ルシュの頭に疑問符が浮かび上がる。
聞いた事のない名称だった。
聞く限りでは、海産物であるのは間違いないが…どんなものだろうか?
「どんな魚なんだ?」
「そうですねー。実際、見てもらった方が早いかな…」
マリエに誘われて、【鰻】を見に行ったルシュが驚愕するのは数分後の事。
さらに、その海産物を使った【鰻丼】を生まれて初めて食して絶賛するのは…六時間後の事である。
【昼時の思い出話】
「うなぎって、おいしいの?」
テレビのニュースで鰻に関する特集が映し出され、シオンが首を傾げる。
【鰻】という海産物の事は、本で知識として見た事はある。
食べた事がないため、【鰻】はどんな味がするだろう…という純粋な好奇心から出た疑問だった。
「調理するのは難しいが、一度食べたらやみつきになるな。丼物は絶品ってハナシだ」
すると、向かい側のソファーに腰を下ろしていたシグバールが美味だと断言した。
彼は、鰻を食べた事があるらしい。
「へぇー…食べてみたいなぁ」
「だが、鰻丼は値段が高いのが難点だな。専門店だとマニーが五桁になるところもある」
「えっ! すごい高級食材なんだね…」
「庶民に手が届く値段のタイプもあるが、簡単に買える物じゃねえからな」
そんな彼等のやり取りを遠目から、ゼクシオンが眺めていた。
「どうした? ゼクシオン」
「いえ、気になる事がありまして…」
「シオンの事か、それとも…シグバールか?」
―――ゼクシオンの気になる事。
それは彼の視線の先にいる二人…どちらかの事でだろう、と察したレクセウスは自ずと聞き返す。
「シグバールです」
「見る限りでは、いつもと変わらんと思うが…」
「僕が気になっているのは、話のネタになっている料理の事です」
「鰻か…」
「そもそも、シグバールが人間だった頃…ブライグは、いつ鰻料理を食べる機会があったのでしょうか?」
ゼクシオンの指摘に、レクセウスは目を微かに見開く。
「レイディアントガーデンでは、鰻を取り扱った料理法は普及していませんでした。
僕も、生物関連の書物の数頁で見た事がある程度です」
「そうなると…ノーバディになってから食した事になるのではないか」
ノーバディになって、世界を行き来する手段を得たのだ。
シグバールの性格上、ちゃっかり稼いだマニーで美味いモノを食べ歩いている可能性がある。
「…確かに、今の段階ではそう考えるのが妥当ですね」
「腑に落ちていないようだな」
長年の付き合いから、ゼクシオンが納得していない事をレクセウスは感じ取った。
「まだ情報が足りていないんです。もう少し…様子を見る事にします」
小声でそう告げると、ゼクシオンはロビーから立ち去った。
仲間が残した意味深な発言により、レクセウスは名状しがたい不安が心に宿る。
(何も起こらなければいいのだが…)
思わず、溜息をついてしまう。
その不安要素とされるもう一人の仲間はというと…こちらの視線に気付く様子もなく、機嫌よさげに少女と話に盛り上がっていた。
【おわり】
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