【18】昼時の思い出話
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※【ルシュの思い出メニュー】シリーズの番外編。
※オリキャラさん(マリエ)に関わる話。
*** ***** ***
これは父から聞いた話なのだが…
私が生まれる数時間前、母は温かいスープが食べたくなったらしい。
兄の時はさっぱりした麺類が欲しくなり、姉の時は無性に甘い物が食べたくなったようだ。
母のリクエスト通り、父はコーンポタージュスープを作ってあげた。
食べ終えた直後に陣痛がきて、急いで知り合いの医師のもとへ行ったようだ。
兄曰く…半日かけて生まれた私は『大きめな子ザル』だったらしい。
平均体重を上回っていて、自然分娩から帝王切開に切り替えての出産だった。
私は物心つく前から、食べる事が大好きだった。
もしゃもしゃと食べるその姿が『木の実をほうばる栗鼠』みたいで可愛いと姉が言っていた。
ちなみに、兄は『ギザールの野菜をもりもりと食べ進めるでぶチョコボ』のようだと言っていた。
あまりにも食べる量が多くて、時々両親から「お腹は大丈夫?」「痛くない?」と心配されるくらいだった。
苦手な物をこっそり私の皿に置いて、私が食べてくれるので助かると兄は感謝していた(毎回、母に怒られていたけれど)。
家族仲は、離れ離れに暮らしている現在に至っても良好だ。
マイペースだけど、前向きで博学な父。
綺麗で優しくて、しっかりしている母。
二人はお互いに信頼しあっていて、愛しあっていた。
幼かった私の目から見ても、すごく仲の良い夫婦だった。
そんな二人はとても料理が上手だった。
「おいしー」
「ふふふ、ありがとう」
「おかわり、いるかい?」
「うん!」
思えば、私が料理に興味を持ったのは両親のおかげである。
だから、私は二人から料理の事を学んだ。
初めて作った料理は【おにぎり】だ。
母が作ったものよりも、形は不格好なものになったけれど…味はそんなに悪くないと思った…
「しょっぱいね、これ」
渋い顔の兄から正直に感想を言われて、改めて自分が初心者なのだと認識した。
それから、私はおにぎりをはじめ、ちょっとずつ料理のレパートリー増やしながら作り続けた。
味も美味しくなったし、両親と姉は勿論、味にうるさい兄からもお墨付きをもらえた。
―――【将来は料理人になりたい】
そう思うようになるのに…時間はかからなかった。
*** ***** ***
「親御さんとは連絡とってるんだよな?」
ルシュは緑茶を啜ると、その質問を投げかけた。
マリエの昔話を聞きながら、ふと彼女の両親が娘宛に定期的に荷物を送っている事を思い出したからだ。
「とってますよー。数ヶ月に一回は手紙がきますね」
マリエはそう答えると、用意した本日の昼食であるおにぎりの盛り合わせを美味しそうに咀嚼する。
「今日のお昼の味はいかがですか?」
「うん、美味い」
おにぎりの具は三種類で…胡麻鮭、梅昆布、焼き醤油。
ルシュ個人は胡麻鮭が好みであり、その味のおにぎりの消費率が高くなっているのは必然である。
「ルシュさんはご家族は?」
「実の家族の事は覚えてないな…昔、師の元で仲間といっしょに暮らしていたが、訳あって今は独り身だ」
「…そうだったんですね」
神妙な面持ちで相槌を打つマリエ。
(この『器』の記憶も一応知ってるが…話すのはやめておこう)
ルシュの現在の器となった青年は、天涯孤独の身だった。
家族もおらず、育った小さな村を出て冒険者として生計を立てていた。
そんな彼は魔物討伐の大きな依頼が原因で、心身に大きなダメージを食らってしまう。
肉体の傷は癒えても、精神的な傷は回復せず…その青年と対峙した時、彼はルシュにこう願ったのだ。
『この身体をやるから…楽になりたい』
抵抗される事なく、青年は望んで器となってくれた。
ルシュにとって好都合な展開だったが…同時に、なんとも形容しがたいスッキリしない気持ちにさせた。
「…ま、俺の事はいいからさ。嬢ちゃんの家族の話を続けてくれ」
「うーん…写真は一応ありますけれど、みます?」
「おっ、みたい」
待っててくださいねーと、マリエは立ち上がると隣の部屋へ向かう。
五分ぐらいして、茶色のカバーのアルバムを片手に戻ってきた。
「ひらきまーす」
アルバムを開くと、最初の頁に家族写真が掲載されていた。
「これが大きめの子ザルちゃん…もとい赤ちゃんの私ですよー」
椅子に座った女性が抱きかかえている赤ん坊…明るい茶色の髪色と特徴的な糸目(写真は寝ている顔のようだ)は間違いなくマリエである。
左右に立っている十歳程の少年と六歳位の少女は、マリエの兄と姉だろう。
そして…マリエを含める三人の子の父親と母親。
母親は長い髪を緩く後ろでまとめており、道端で会ったら思わず見惚れてしまうような美しい女性である。
父親の方も整った顔立ちで…温厚で誠実な感じの男性だ。
(ん? この人…どっかで見た事あるような…)
ふと、マリエの父親の顔に既視感を覚える。
遠い昔にどこかで会った事があるような…他人の空似だろうか。
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