【15】カジュアルギア 2
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「お待たせしましたクポ」
三週間後、モーグリが依頼したカジュアルギアを持ってきた。
大きな白い包装紙に、桜の花をリボンで止めたおしゃれなラッピングで包んでいる。
「まぁ、素敵!」
「僕の感謝の気持ちもいっぱい込めたクポv」
「なぁ…アクセル。今日って、リエさんの誕生日だった?」
リエとモーグリの和やかな光景に、ロビーにいたロクサスは親友に小声で確認の問いかけをした。
「いや、違うだろ。まだ三月だし…」
「なんでモーグリがプレゼントしてるんだ?」
「さあな…ちょっと訊いてみるか」
直接、本人に訊いた方が早い。
そう判断したアクセルは声をかけた。
「おーい、リエ」
「おはようございます。アクセルさん、ロクサス君」
「おはよう。リエさん」
「随分と大きいプレゼントだな。めでたい事でもあったのか?」
「はい。モーグリさんが私専用のカジュアルギアを作ってくださったんです」
リエが嬉しそうに告げると、アクセルは「はっ!?」と驚きを顔に露わにする。
「そういえば…リエさんは持ってなかったんだっけ」
久々に聞いた単語に、ロクサスはリエだけはカジュアルギアを買っていなかった事を思い出す。
「モーグリさんがわざわざデザインをいくつか考えてくれて、ようやく完成の品が届いたんです」
「デザインって…俺らの時はそんなのなかったし…つーか、こいつが勧めたギアは一種類しかなかったぞ」
回復セットのおまけ付きで通常の半額で買わされた品は、戦闘で使用したのは片手で数える位だ。
むしろ、小腹が空いた時の食事に使っている事が多い。
ロクサスは、雨が降った時に役に立つとは言っていたが、あの傘を戦いで使用している光景なんて見かけたのは二回しかない。
「どんなギアなんだろ…」
ロクサスは、リエ専用のカジュアルギアがどんなものなのか気になるようだ。
ワクワクしている相棒に、何とも言えない表情を浮かべるアクセル。
「さぁさぁ、お披露目してほしいクポ!」
「では、早速開封しますね」
モーグリに勧められて、リエはリボンをほどいてラッピングを取り払っていく。
「ん、それって…」
「どっかで見た事があるような…」
出てきたのは上から下まで、真白で統一されたフォルム。
先端が丸みを帯びており、見ているだけで耳に入れたくなる衝動に駆られてしまう。
「うわぁ…イメージ通り、いい杖ですね!」
「そう言ってもらえると、作り手として光栄クポ。本物と近づけるために細部までこだわったクポよーv」
「…てか、それ杖なのか! どうみたって【綿棒】だろ!?」
そう…【巨大綿棒】を模した杖である。
大満足の様子のリエと賛辞を言われて感激しているモーグリに、アクセルがすかさずツッコむ。
「綿棒って、耳を掃除する時のアレ?」
「あぁ、耳かきとは違うタイプのやつ、なんだがな…」
ロクサスの疑問に、アクセルは答えながらも視線は綿棒杖を持っているリエに向いている。
「いくつかのデザインの中で、この杖を見てみたい気持ちになりました。実際に手にしてみて…その思いに間違いはなかったと確信しました」
「いやいやいや…その中から、なんで綿棒を選んだんだよ?」
「耳かきタイプもあったんですが…どちらかというと、こちらのフォルムが気に入ってしまいまして」
「ちょっと待て! 別バージョンもあったのか!?」
リエの口から出た新たな情報に、アクセルがさらにツッコむ。
「改めて、モーグリさん。こちらは護身用の杖として使用させていただきます」
「使った際の感想も、また聞かせてほしいクポ~♪」
「それ護身用か!? 使う気満々なのかよ!!」
「綿棒杖、どんな効果あるんだろ…」
ツッコみに忙しいアクセル。
綿棒杖のリンクアビリティが密かに気になるロクサス。
そんな親友二人の反応をよそに、リエはほくほく顔でハミングしていた。
【カジュアルギア(2)】
「リエ、頼むわよ!」
「はい!」
数日後、リエはラクシーヌと二人でハートレス退治の任務の際に、新品のカジュアルギアの初使用となった。
「汝、美の祝福賜らば、我その至宝、紫苑の鎖に繋ぎ止めん―――【アビュソリュートゼロ】!」
シャドウの集合体…デビルズウェーブに向かって氷系の大魔法を発動させる。
大量に押し寄せきたデビルズウェーブがピキピキと氷の膜で覆われていき、動きを封じられていく。
だが、その内の何匹かは群れから零れ落ちていった。
魔法は通常時のキーロッドを使った場合と比較すると、効果はやや下がってしまうようだ。
迫りくるシャドウ単体に、ラクシーヌが持ち前の俊敏さで一匹ずつ確実に倒していく。
「―――【散沙雨】!」
飛びかかってきた複数のシャドウ達に、杖で連続突きの連打を浴びせていく。
―――ぽむぽむぽむ、ぷにゅ、ぽむっ…
その際に、なんとも柔らかくて可笑しな効果音が鳴り響いた。
「ちょっとぉー、その音どうにかなんないの?」
「あっ、すみません…」
ラクシーヌが眉を八の字にして、響いてくる音をどうにかしろとブーイングしてきた。
最後の一匹を突きながら、リエは謝罪をすると綿棒杖の威力を弱めてみた。
だが、シャドウの頬を綿棒杖で控えめに刺激しても…ぽむぽむと音は出てしまう。
「うーん…この音は止められないみたいですね」
「はぁ~…気が抜けちゃうじゃない」
余計なオプションをつけないでほしいわ…と文句を言いつつ、ラクシーヌは最後のシャドウをパシュッとナイフで消滅させた。
「でも、たくさんのシャドウを倒しても汚れひとつついていないのが凄いです」
「へぇー…クリーニング機能でもついてるのかしら?」
「これ、実際の耳掃除にも使えるんでしょうか?」
「…ていうか、こんなでかい綿棒で汚れとるなんて、かなり大きいヤツでなきゃ使い道ないわよ~」
利き手を左右に振って笑うラクシーヌに、リエはそうですね…と苦笑する。
だが、この時点で彼女達は予想もしていなかった。
後に、この綿棒杖が思わぬ形で活躍する事となる。
【おわり】
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