【14】夏は事件がいっぱい!
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案内されたのは、町の一角にある…探偵事務所だった。
「お前…探偵してんのか?」
「まあな、でも俺だけじゃねえんだ」
仗助は入口の扉を開けて、二人を中へ入れる。
扉の音を聞きつけたのか、バタバタとすぐ近くの階段から誰かが降りてきた。
「おい、仗助! どこ行ってたんだよぉおお!? こっち忙しかったんだぞ………って、おおおおぉおお!?」
「あっ、億泰」
「やしゅしゃーん!」
「アクセルと、ステラじゃねぇかぁああ! ひっさびさだなぁ~!」
些か大袈裟そうにテンション高く、ソラとアクセルを出迎えたのは、虹村億泰。
仗助の親友であり、気の合う仲間でもある。
「お前ら…共同で探偵やってんのか」
「俺と仗助だけじゃねえよ。この探偵局の社長は兄貴なんだぜ!」
「ええっ…形兆がか!」
おーよちよち、とソラをあやしながら、億泰が言った事に、アクセルは驚いた。
解説すると…形兆とは、億泰の実兄であり、10年前にDIOの負の遺産である【弓と矢】を用いて、スタンド使いを生み出していた犯人だ。
仗助達の説得もあり、【弓と矢】で殺してしまった人達への償いも兼ねて、刑務所へ服役していたのだが…。
「兄貴は大分前に出所したんだ。……それから、この探偵事務所開いてよぉ」
「そりゃまたなんで…?」
「俺も最初はさ、『どーして探偵なんだ?』って訳分かんなくてよ、兄貴に直接聞いたんだ。そしたら…」
“俺は、お前の友達(ダチ)と『あの人』のおかげで救われたんだ。俺は…『あの人』が守ろうとしたこの世界を守る、なんて大層な事はできねえ。
でもよ…代わりに、『あの人』の意志を受け継ぐ事はできるんじゃねえかってな。
だから、俺は『あの人』が残してくれたこの事務所で、困っている奴らを助けようと思う”
「いつか…あの人が帰ってきても、胸張って『おかえり』って言えるように…グスッ…俺、兄貴の気持ちがいてぇくれー伝わってよぉ…」
説明している途中で、涙を流し出した億泰。
「ぐす、うぐっ…フィンさんは…やさしくっていい人だった…親父の治療もしてくれたしよぉ…。俺も…オレも、いつか、えぐっ…きちんと…礼を言いてぇんだ」
「泣くなよ…億泰。そんな鼻水も垂れたみっともねえ面だと、フィンさんに笑われちまうぞ」
ほれ、拭けよと仗助はハンカチを渡した。
億泰は、それを受け取るとズビッ―――――! と盛大に鼻をかむ。
「…そうだな。『あいつ』も喜ぶな、きっと…」
理由を聞いたアクセルは、彼らの気持ちが痛いほど理解できた。
本当だったら、ソラともう一人…ソラの相棒である『彼女』も此処にいるはずだった。
世界を揺るがしたあの“事件”がなければ…。
「つーわけで、俺も形兆と億泰に誘われて、此処で働く事にしたんだ。ちょうど安定した職探してたとこだったしよ」
「なるほど…ところで、億泰さっき慌ててたけど、何かあったのか?」
「へっ…? あぁあああ! 思い出した、仗助ぇええええ!」
アクセルの言葉で、つい先程の事を思い出し、億泰は改めて仗助と…アクセル、ソラに説明を始めた。
*** ****** ***
「なんていうかさ…アクセル。あんたって、個性が強すぎる連中に好かれる体質があるんじゃない?」
「そうか~? あいつらは確かに面白いけどよ…」
ラクシーヌが目を細めて言った事に、アクセルは今一つ実感がない。
「でも、アクセル…異世界に住む人達とも、割と仲良くなれるよな」
「うん。あたしもそう思う」
ロクサスとシオンがそう意見を言うと、アクセルは「え~」と俄かに信じがたい感じだ。
「確かに…アクセルの対人スキルは、情報収集では有利ですね。友好的に接するとしないとでは、住民から聞ける情報の差もありますから」
「それだったら、俺もいけるんじゃないかな?」
「貴様の場合は、任務よりも単に個人的時間に費やしている方が多いではないか。愚か者が…」
デミックスも、はいはいと挙手するが、ザルディンの鋭い苦言に、ガクッと項垂れる。
「…それで、その億泰という男が慌てていた理由は?」
ゼムナスが切り替えるように、その話の続きを尋ねてきた。
ああ、それはな…とアクセルは語りだす。
*** ****** ***
仗助がソラとアクセルを連れてやってくる10分前、事務所に設置されている電話が鳴った。
半分、うたた寝していた億泰はハッと覚醒して急いで受話器をとった。
単刀直入に言えば、仕事の依頼だった。
依頼主は……
「えええっ! 承太郎さんから直々に依頼がきたのか!」
「あいつが…?」
「たろしゃん、くりゅの~?」
「まあ、依頼主が承太郎さんってのも驚いたけどよぉー、内容もまたややこしくて…」
依頼内容は……承太郎の娘、徐倫に関わる事だった。
昨日から、彼女は杜王グランドホテルに滞在しており、今日誰かと会う約束をしているという。
「そんでよ、徐倫ちゃんと会う奴を調べてくれっていうのが、承太郎さんからの依頼なんだ」
「えっ? 徐倫の奴…この街にいるのかよ」
「まさか、徐倫ちゃんに…彼氏ができたのか!?」
「りんちゃん、おるん~?」
徐倫とは、あの世界規模の事件の後、連絡する事無くそのまま音沙汰がなかった。
あれから、どうしていたのか…。
アクセル個人も気になっていたが、まさか杜王町で彼女の名前を耳にする事になるとは予想してなかった。
「おいおいおいおいおい、徐倫ちゃん…まさかお忍びデートかもしれねぇぞ」
「…だな。なんつったって、父親があの承太郎さんだ。娘に彼氏ができたって知ったらそりゃ複雑な気分だろーな」
あー、それにしても徐倫ちゃんももうそんな年頃になっちまったのか。
あの子が惚れたのはどんな野郎だろうなぁ…いけすかねえ奴だったら、一発殴ってやろうぜぇー!
…と談話している仗助と億泰をよそに、アクセルの胸にある不安がよぎる。
(もしかして…アナスイか…?)
「あくたん、どしたん?」
ソラが小首を傾げて呼びかけると、アクセルは「ああ、なんでもねぇよ」と呟いて、頭を撫でた。
だが…めんどくせー事になるんじゃねえよな、と酸っぱい物を食べた直後のような顔になっていた。
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