【3】ふーちゃんといっしょ
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そんな周囲の状況を知らないゼクシオン達。
指示通りに調理した結果、ようやくミルクが出来た。
「ソラちゃん、お待たせしました。ほら…ミルクですよ」
「ふぇぇ、うぅ…」
哺乳瓶をソラの口許に持っていくと、ソラはその乳頭部分を口に含み、むぐむぐと呑み始める。
大人しくなったのを見て、ゼクシオンとレクセウスはホッ、と胸を撫で下ろす。
よほど、空腹だったのか、ソラは美味しそうにミルクを堪能している。
『あの…つかぬ事をお伺いしますが、そちらにいらっしゃる知り合いの赤ちゃんって…ソラちゃんですか?』
青猫の鋭い質問に、ゼクシオンはすぐに回答した。
「回答しかねます。
個人情報保護の観点から、個人名を言う事はできません。
知り合いの赤ちゃん…という事だけお伝えいたします」
冷静に答えているように見えて、彼の胸の内は非常に動揺している。
青猫にソラがこの場に居る事を云えない理由…それはほさ部と天上界が密接に繋がっているから。
―――下手に居場所を漏らせば、誤解を招くかもしれない。
だが実際、青猫は例の天界の事件の全貌に関して、リエからの説明を受けていた。
彼女からの説明で、機関員たちが昔の様な凶行を犯す危険性はないと知っている。
もし、電話越しの赤ん坊の声がソラだとしても、彼らが誘拐したという可能性は低いと考えている。
彼らの場合、そんなまどろっこしい真似はせずに、直接リエと対峙するはず…。
仮に、誘拐が事実であるならば、彼女の仲間であるソラに対して、好からぬ真似はしないだろう。
『…分かりました。それでは質問を変えますが、赤ちゃんの年齢は分かりますか?』
「えっと…1歳半ぐらいです」
『そうですか…赤ちゃんは年齢ごとに食事を選ばなくてはならないんです。
1歳半は、一般的に食物を舌で呑みこめる時期ですから
離乳食、そうですね…つぶし粥やすりおろした食品などがいいでしょう』
「なるほど…他に注意点はございますか?」
電話を片手に、ゼクシオンは次々と質問を繰り返し、その回答をメモに記入していく。
その時、レクセウスが話しかけてきた。
「様子がおかしい…」
「どうしましたか?」
「ミルクを飲み終えたのだが・・・顔を赤くして苦痛の表情に…」
彼らの会話が携帯越しに伝わり、青猫は慌てて声を張り上げて言う。
『レクセウスさん! その子の頭を肩の上に来るように抱いてください』
レクセウスは言う通りに、ソラの顔を自分の肩に乗せるように縦抱きにする。
『首に注意しながら、背中を軽く叩いたり、下から上にさすってください』
「レクセウス、僕がやりますので、そのままその子を抱いていてください」
「…すまん、頼む」
力加減を考慮した上で、相方の代わりにゼクシオンはソラの背中をトントンと軽く叩く。
すると、ソラは「けぷっ」とゲップを吐き、喉につっかえていた物が取れたおかげで楽な面持ちになる。
「ふぅ~」
まるで、入浴後のようにソラは気持ち良さそうにまったりとした表情を浮かべる。
元通りに戻った赤ちゃんを見ながら、ゼクシオン達は再び安堵の息を漏らす。
『赤ちゃんは、ミルクを飲む際に空気も一緒に飲んでしまい、ゲップがよく出るんです』
携帯からの青猫の知識を耳にして、再度メモ用紙にその事を記していく。
「だから、食後はそれを出すために、先ほどの様に処置をする必要があるのですね」
『個人差もありますが、その方法が一般的に浸透しています』
「ありがとうございました。
あなたが教えてくれた知識のおかげで、迎えの方が来るまで、どうにか対応できそうです」
『また分からなくなったら、いつでも電話してきて下さい。
それでは失礼します』
ピッと携帯を切ると、ゼクシオンは相方が購入した荷物を確認しようと、紙袋から一品ずつ取り出していく。
粉ミルク以外に、紙おむつ、予備の着替え、おもちゃ…赤ちゃんの必需品が次々に出てくる。
中でも印象的なのが……
「なんですか? このぬいぐるみは…」
まったりとした雰囲気を醸し出すクマと白コグマの小さなぬいぐるみに、ゼクシオンは目を細める。
レクセウスは、その内のクマのぬいぐるみを手に取りながら言った。
「こいつは、子どもに人気のあるキャラクターらしい…」
「これ…以前、リエさんの部屋で見かけた事があります」
「…女性にも人気があると店員が言っていた」
律儀にも、店の店員に子どもの好きなおもちゃを訊いて回ったのだろうか。
相方のそういう勤勉な所は長所である、と何気に感じずにいられない。
クマのぬいぐるみを、早速、そっ…とソラの足元に置く。
ソラは「きゅま~(くま~)」と嬉しそうにぬいぐるみを両手で掴む。
…次の瞬間、ソラは大きく口を開けてそのぬいぐるみをはむ、とかじりついた。
(ええっ~!)(……かじった…)
…目を凝らしてよく見ると、はむはむとぬいぐるみにしゃぶりついている。
ぬいぐるみは、ソラの口内のアミラーゼにより、顔がベトベトの状態…
微かにその瞳にほろりと涙を流す幻覚が見えた。
そんな事を露知らず、ソラはまったりグマをギュッと握りしめて離さない。
よほど…そのぬいぐるみが気に入ったのだろう。
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