【3】ふーちゃんといっしょ
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《前回までのあらすじ》
元機関員であり、エクレシアのリエの仲間である、ソラ・アウリオンは瞬間移動(テレポート)能力で、機関の城へ来てしまった。以前、起こした事件の一件があり、天上界との間で険悪ムードが漂っている13機関は、彼女を帰す事が出来ずに途方に暮れていた。
そんな時、久しぶりにリエからの電話があり、どうにかソラを帰す目途はついた。
こうして…リエが迎えに来るまで、機関員は小さい天使の世話をする事となったのだ。
◇◆◇ ◆◇◆◇◆ ◆◇◆
「と言う訳で…まず、この子の世話役を決めたいと思う」
ゼムナスは、ロビーにメンバー全員を集めて、ソラの世話役について話す。
当のご本人は、ロビーに設置されているソファーの上でマッタリと垂れるように寛いでいる。
「ソラか…あいつと同じ名前なんだな」
ロクサスは、興味深そうにソファーに寝転がるソラを見つめる。
その視線に気がついたのか、ソラはゴロンと仰向けになり、ロクサスを見つめる。
目の前にいる、見ず知らずの人物に対しても怯えたり泣き声を出したりしなかった。
意外と順応力があるようだ。
髪の毛と同じ大きな鳶色の瞳で、ロクサスに対してにこ~と笑った。
「俺はロクサス、よろしく…」
「ふーちゃん~」
ロクサスが差し出した手の指先を、ガシリと小さな手で掴んだ。
まだ小さいのに、凄く握力がある事にロクサスは驚いた。
「ロクサス、ちょっとすまない」
間から割り込むように、ルクソードが声をかけた。
「この子の世話役をジャンケンで決める事になった」
「分かった。でも…」
未だにソラが、自分の指を握っているために身動きが取れないようだ。
その様子を見て、ルクソードはソラの小さな手を指でくすぐる。
「失礼、リトル・レディ…」
「ふぅ~」
「あっ…取れた」
「赤ちゃんは意外と握力が強い。
先ほどのように掴まれたなら、軽く指でくすぐれば、離してもらえるぞ」
ルクソードからのアドバイスに、ロクサスはへぇ…と頷く。
ロビーの所々で、既にメンバー達が二人組を形成してジャンケンを行っていた。
ジャンケンをしていないのは、ロクサスとルクソードだけだ。
「さて…もう他の者たちは進めているようだ。俺達も済ませなければならない」
「分かった」
そして、二人はジャンケンをした。
こうして事は進んでいき、最後まで勝ち残った三名がソラの世話役に決定した。
晴れてベビーシッターに任命された三人とは……
「――という訳だ。ゼクシオン、レクセウス、ヴィクセン…頼むぞ」
偶然なのか、必然なのか忘却の城の地下組がソラの世話役となった。
その顔ぶれに、周囲の者達は顔を引き攣らせる。
ジャンケンで決まったとはいえ…この三人でいいのだろうか。
それは当の本人達も同意見のようだ。
その証拠に…彼らの表情がそれを物語っている。
ヴィクセンは非常に愕然としている。
おそらく、今日にでも研究論文を早期に片付ける予定だったのだろう。
まさか、ジャンケンで勝ち続けるとは思いもよらず、予定外の結果によもや顔面蒼白となっている。
ゼクシオンは、溜息を洩らしている。
ある程度の年齢のお子様(デミックス、ロクサスなど)の世話には慣れている。
しかし、幼児の世話を任されるとは夢にも思わなかった。彼の表情から、複雑なその心境が隠す事無く表れている。
レクセウスは…その顔に普段と比べて変化は見受けられない。
だが、どこかそわそわと落ち着かない素振りを見せている。
「ゼムナス~、こいつらで本当に大丈夫か?」
シグバールが、ニヤニヤと笑いながら指導者に尋ねる。
「三人は如何にも、めんどくせーっていう顔つきだしよ…。
他の奴に回した方がいいんじゃねーか」
「なっ、なんだと、シグバール! 私はそんな事は…」
「そもそも…こう赤子は女児だろう。同性に任せるべきではないのか」
眉根を寄せて頭を掻きながら、ザルディンが言う。
彼の言う事は一理ある。
しかし……
「はぁ? 私はやらないわよ。そもそも赤ん坊の世話が女性の義務、だなんて誰が決めたのよ。
やりたい奴にやらせりゃいいじゃない!」
女性メンバーのラクシーヌは、周囲の意見を聞く前に一刀両断した。
彼女は、元々子どもはあまり好きではない。
それを覚えていた一部の者は、「やっぱり…」と諦めた目つきを浮かべる。
ゼムナスは、フーと息を漏らして仕方なさそうに言った。
「もし、手が空いている者が居るならば…三人の手伝いをしてくれ」
こうして、機関メンバー達の長い一日が始まった。
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