【10】「俺」と「彼女」と「少女」のすごす一時
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毎日、個性的なメンバーに任務の指示を出し、上司の指示した業務をこなす。
デスクワークで溜まっていた書類を打ち出しながら、目を瞬きさせる。
「少し休むか…」
肩を手で揉みながら、サイクスは少し上等そうなベッドへ身体を横たわらせた。
瞼を開けると、いつものあの湖畔に辿り着いていた。
リエの半身である―――【フィリア】の住む世界へ。
「いらっしゃいませ」
フィリアはいつも通り微笑みながら、サイクスを迎え入れた。
しかし、いつもと違う所が一つあった。
それは…サイクス以外に来客がいた事だった。
(誰だ…? あの少女は)
サイクスは眉間に皺を寄せて、訝しげにその客人を見つめる。
大きな白い帽子に、首にはオレンジ色のおしゃぶりを身につけている。
左目の下に五弁花のマークの特徴的なほくろがある。
少女は、フィリアがいれたダージリンを上品に飲んでいる。
「さあさあ、こちらへお座りください」
フィリアに促され、サイクスは少女とは向かい合う形で地へ座る。
「紅茶を淹れてまいりますので、暫くお待ちください」
クスリと笑いながら、フィリアは湖畔から自分の住む小屋へ行った。
フィリアがいなくなり、湖畔にはサイクスとその少女の二人だけとなった。
シーンとその場には沈黙が漂う。
サイクスは、初対面の人物に積極的に話しかける程、社交的ではない。
ましてや、子どもと接するのは得意ではない。
機関に居る少年少女とも、友好とは程遠い関係だった故に、何を話しかけたらいいのやら見当がつかないのだ。
(フィリア…早く帰ってきてくれ)
腕を組んで、この夢空間の主が早く戻ってくる事を内心望んでいた。
「そんなに緊張しなくていいですよ」
ハッと聞こえてきた声に我に返ると、あの少女が話しかけてきた。
少女はニコリと和やかに笑う。
「挨拶が遅くなりましたが…はじめまして」
「ああ…はじめまして」
サイクスは少し戸惑いつつも口を開く。
「私はユニと申します。サイクスさん」
「俺の名前を知っているのか…?」
「はい。時折、こちらの【夢路の湖畔】に訪れるたびに、貴方の話題を伺っています」
フィリアは、この少女…ユニとどんな話題を交わしているのだろうか。
サイクスは、「自分」の事を話している事実を知り、気難しげに眉を顰める。
「サイクスさんは『気難しいけれど優しい方』だと仰っていました」
サイクスの表情の変化に気付き、ユニは柔らかい笑みでそう説明した。
気遣っているのか…自分で言うのもなんだが、サイクスの今の顔をみたら、大半の子どもは泣くか、もしくは逃げ出すかのどちらかだ。
幼馴染の赤毛青年からは「もうちょい、愛想良くしろよ」と言われる。
だが、この少女…ユニは怖がるどころか笑いながら普通に接している。
どうも、この少女がよく知るあの女性と重なって見えてしまう。
「お話しませんか?」
「…ああ」
この湖畔の主が席を外している間、サイクスとユニは世間話に花を咲かせた。
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