【1】こねこ命名
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リエは、いつものように清掃活動をしている途中でラクシーヌに呼び止められた。
「仕事終わらせたら、部屋まで来てちょうだい」
スタスタと足早に去っていくラクシーヌの背中を眺めながら、リエは掃除の速度をあげた。
いつもよりも一時間早く、仕事を終わらせるとすぐにラクシーヌの部屋を訪れた。
「お待たせしました」
「待っていたわ…」
椅子に座っていたラクシーヌは、目を通していた雑誌を机に置くと腕を組んでリエに視線を向ける。
その椅子の下から、ちりーんと心地よい鈴の音が響く。
ラクシーヌが、こっそり城に招き入れた黒い子猫だ。
この子猫を見つけたあの出来事以来、ラクシーヌと普通に話せるようになった。
いわば、二人の仲を取り持った恩人ならぬ【恩猫】である。
ラクシーヌは、その子猫をそっと抱きかかると「好きなとこに座っていいわよ」と言った。
お言葉に甘えて、リエは床に正座した。
「あんたに言いたい事があるの」
「どういったご用件でしょうか?」
「ゼムナスに…この子の事を交渉したそうね」
原則、機関では動物を飼う事は禁止されている。
リエは、ラクシーヌの名前を伏せて自分で世話をする事を条件に、子猫を飼う許可を指導者に懇願したのだ。
ゼムナスは「通常勤務を怠らない」事を条件に、城で買う事を許してくれた。
ラクシーヌは、その事をルクソードを通じて知った。
眉を顰めながらも、少し頬を赤らめていった。
「ありがとう…あんたのおかげで、この子を手放さずにすんだから」
「ラクシーヌさん…」
普段は、冷笑が印象的な彼女の意外な表情に、リエはフフッと柔らかい笑みを零してしまう。
「ちょっと…何笑ってんのよ」
「すみません…なんだか嬉しくて」
「何がよ…」
「ラクシーヌさんの意外な一面をみれて」
リエは微笑みながらそう言うと、ペシッと頭を軽くはたかれる。
「…ったく、あんたって本当に変わり者ね」
「よく言われます」
「まあいいわ…。あんたにはもう一つ頼みがあるのよ」
その言葉にリエは首を傾げる。
ラクシーヌは、こねこを両手で抱き上げるとリエに預ける。
「その子の名前を考えてほしいの」
「この子の名前を…ですか?」
「いつまでも名前がないと不便でしょ…。
だから、私が名前を一通り考えたんだけど、全然気にいってもらえないのよ」
子猫は、にゃーと泣き声をあげながらリエの膝元で蹲る。
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