【5】色褪せない恋心
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ある時…とうとう意を決して自分の気持ちを素直に告白した。
…結果は見事に断られてしまったが。
『ありがとうございます…でも、私には大切な人がいます』
だが、私はその結果に満足していた。
今まで築いていた関係が壊れてしまうのではないかという懸念から、リエが断ってくれて寧ろ安堵したのだ。
それから、彼女とはいい親友関係を続ける事が出来た。
対照的に、ゼアノートは彼女が既婚者であると判明しても諦めなかった。
むしろ、闘争本能に目覚めたように、リエに対する執着心が強くなっていくのが傍から見てもバレバレだった。
先代マスターは『はっはっ、若いとはいいものだ…』と呑気な発言をしていた事に、深いため息を漏らしてしまう。徐々にリエの貞操が危ういのでは…という心配から、ゼアノートに注意するように言った。
すると…彼女は笑いながらこう言ってのけた。
『大丈夫ですよ、その時は他の世界に猛ダッシュで逃げますから。安心してください』
その言葉を聞いて、私も思わず吹き出しそうになった。
彼女らしいな…と、その前向きな考え方を微笑ましく感じた。
あれから数十年…。
リエは、我々の前から姿を消した。
元の世界に帰れたのだろうか…もしくは、また別の世界を旅しているのかもしれない。
「…まあ、昔話は以上だ」
エラクゥスは、当時の話を弟子二人に語っていた。
たまたま、押し入れを整理していた時に、弟子の一人の青年が、古ぼけたアルバムを見つけた事がきっかけだった。まるで昨日のように思えてしまう位、あの頃の出来事はエラクゥスの心に刻まれていた。
感慨深そうな師匠の表情に、アクアはある事を尋ねる。
「マスターは…今でもその人の事を慕っているのですか?」
「さあ…どうだろう」
曖昧な返事をすると、エラクゥスはそのアルバムを片手に片付け作業を再開した。
テラは…師匠の答えに意味が分からないと言いたそうに首を傾げる。
「結局、マスターはどう思っているんだ?」
「テラ…その答えは、あれを見ればわかるわ」
アクアが指さすその先には、アルバムの中から一枚の写真を取り出して穏やかな眼差しを注ぐエラクゥスの姿があった。
【色褪せない恋心】
時が過ぎても…この想いは色褪せる事はない。
ずっと…貴女の幸せを願っている。
【おわり】
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