【4】温泉騒動記
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一足先に浴場へ向かった一番組は、緑豊かな風景をバックに温泉につかっていた。
「はぁー、極楽、極楽…ロクサス、どうだ? 初の温泉の感想は?」
「うん、いいと思う」
親友からの問いかけに、ロクサスは瞼を閉じてまったりとした雰囲気で返事をする。
移動で疲れた体を、湯が隅々まで染み渡る様に癒してくれる…。
アクセルが言っていた醍醐味の一部を、ロクサスは分かった気がした。
「あっ、あそこに子猿がいる」
「うぉ、マジで! どこだ、どこ!?」
「…お前らは静かに風呂にも入れないのか」
近くの森に住んでいる動物が、温泉に入っているのをみて、はしゃぐお子様といい大人の幼馴染に、サイクスはハァとため息を漏らす。
「フム、こうして温泉につかるのも悪くはないな…」
「…ああ、そうだな」
当初は、旅行に反対だったザルディンも温泉につかる事で日頃の疲れが解消される実感を得たらしく、ゆったりと寛ぐ。レクセウスは、その意見に首を縦に振り、揺れたタオルで顔を拭く。
一方、ヴィクセンは湯につからずに、所持してきた実験器具を用いて湯の成分を調べている。
「ふむ、この湯の成分は pH8.5以上のアルカリ性か…。
無色透明で無味無臭のようだから、単純温泉の部類だな。いやもう少し測定を…」
「おーい、ヴィクセン。なーに旅行に来てまで研究に没頭してんだよ。早く入らねーと風邪ひくぜ」
「うるさい! 私のライフワークにケチをつけるつもりか!」
「ヴィクセン…アクセルの言う通りだ。研究は時間があればできる」
ヒステリックに言うヴィクセンを、レクセウスは窘める。
ヴィクセンはうっ…と口ごもりながら「…分かった」と渋々了承した。
お湯につかる子猿に目を輝かせ、ロクサスは触ろうと少しずつ移動していく。
すると…敷居の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
『あったかいね』
『うん。景色もいいし、後で絵を描きたいな』
「あれっ? 今、シオンとナミネの声が聞こえたような…」
ロクサスはキョロキョロと辺りを見渡す。
どうやら、それは幻聴ではなさそうだ。
『あ、ロクサスの声が聞こえたよ』
『えっ…まさか…』
敷居を越したあちら側も、同じ反応が返ってきた。
ロクサスは、思わず声をあげていた。
「シオン、ナミネ――! いるのか!」
「こっこら、ロクサス! 大声を出すんじゃない! 他の客人に迷惑がかかるだろう!」
「あっ…ごめんなさい」
湯につかろうとしたヴィクセンが、マナー違反だと叱責した。
ロクサスが、それに対しすまなさそうに謝罪を呟いた…その時だった。
「「うん、いるよ―――!」」
「ブフぅううう!」
少女達もまた、大声で返事をしてきた。
ヴィクセンは、それで足を滑らせ、温泉に倒れ込み、見事なスライディングをしてしまった。
ロクサスはプルプルと吹き出すのをこらえる。
アクセルは、彼の滑り込みをみて遠慮なく大爆笑する。
「こらぁ、お前達も大声出すんじゃない! 他の人に迷惑するだろう!」
「あっ、すみません…」
「ごめんなさい、でも…私達以外にお客様はいないよ?」
「それでも、公共施設内ではだすなぁああ!」
『大声出すな』と注意するお前が一番、大音量を放っているだろう…。
付き合いの深いレクセウスは、声に出さずに胸中で突っ込んでいる。
「ええい、騒いでいるのは貴様だろうが! 黙らんか!!」
寡黙なレクセウスの言葉を代弁するように、同じ古参メンバーのザルディンが堪忍袋の緒が切れて怒鳴りつける。バシャッと立ち上がるや、六槍を取り出す。
「なっ…ちょちょちょっと待て! ザルディン、ぐぁあああ!」
同僚の怒り様を目にして、ヴィクセンは両手を振り慌てて、彼を宥めようとしたが…
ザルディンは容赦なく攻撃を仕掛けた。
ゆとりの場から一変、戦場と化しつつある湯船から、ロクサスとアクセル達は素早く逃げ出した。
数十分後…
「まったく…柄にもなく風呂場ではしゃぐからのぼせるんだ」
「…しっかりしろ」
すっかり身体が火照ってしまい、湯船で浮かんでいた二人を、サイクスとレクセウスが担いでいく羽目になった。
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