ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


「帰って来たか」

「おー、ご苦労さん」


労いの言葉をいうプロシュートとホルマジオ。

彼らが、小さいこねこにんの足を擽っている光景を見て「ああ”!?」とギアッチョは苛立った声をあげる。


「てめーら、何暇そうにミーチョと遊んでんだよ!」

「遊んでねえよ。尋問中だ」

「へっ…兄貴、尋問って…?」


真面目に言い返すプロシュート。

ペッシは、パイナップルのような髪型の上に疑問符をたくさん浮かべている。


「リーダーが連れてきた女の事、調べようって、ミーチョに聞き出してる最中って訳だ。ま、あんま効果ねぇけどなぁー」


対照的に、ホルマジオはケラケラ笑って追加説明する。

その尋問中のソラもくすぐったいのでつられて笑う。

あまりにもシュールな光景に、メローネもぷふーと吹き出す。


「ってアホかぁあああ! 1歳児のガキンチョがそんなん分かるわけねぇだろうがぁああ!!」

「さ、さすが兄貴! 幼い子ども相手にも容赦ねえなんて…」


ギアッチョはキレて、買ってきた子ども用のクッションを床へ叩き付けた。

ペッシは、どんな相手だろうと全力で挑もうとするプロシュートの姿勢に感銘を受けたようだ。


「お前ら…少しは静かにしろ」


その声が聞こえるや、全員の視線は2階へ通じる階段へ向けられる。

何やってるんだ…と呆れたように目を細めて、段を降りてくるリゾットがいた。


「りぞしゃーん!」


ソラはパッと水色の光翼を出して、リゾットのもとへ飛んでいく。

リゾットは、飛んできたソラを優しくキャッチすると片手で抱いた。


「リーダー、リクエストのやつ買っといたよー」

「ああ、感謝する」


メローネから頼んだ物を受け取ると、リゾットはソラと一緒にそのまま浴室へ足を進めようとする。


「なぁ、リゾット」


彼の移動を止めたのはプロシュートだった。

リゾットは「なんだ?」と肩越しに視線だけをよこす。


「あのシニョリーナ…フィンをどうする気なんだ?」


単刀直入な質問に、リゾットは少し沈黙するとこう口を紡いだ。


「…彼女を保護する事にした」




【掴んだものは離さない】




遡る事一時間前、13機関の本拠地である城に、アクセルとデミックスは搬送された。


「アクセルさん、デミックスさん、お加減はいかがですか?」

「おー…なんとか…な」

「みず…水ほしー…」


リエの問いかけに、彼らは瞼を開閉して掠れた声で答えた。

意識も大分、安定してきたので、傍らにいたアクセルの年下の親友であるロクサスとシオンもホッとしている。


「…くっそー、あの黒目の野郎…」


アクセルは上半身を起こして、苦虫を噛み潰したような顔で拳をつくり、ダンッと机を叩く。

任務の邪魔をされた事もあるが、彼自身のプライドが許さないのだろう。

リゾット達に、ソラとフィンが捕らわれてしまった事も気がかりだ。


「後の事は、こちらに任せてください。アクセルさんとデミックスさんは身体を安静にしないといけません」

「…すまねえ」


申し訳なさげに一言謝罪するアクセル。

リエが「いいんですよ」と微笑んで答えた直後、医務室の扉がガラッと開いた。


「あら、サイクスさん」

「リエ……ゼムナス様がお呼びだ。至急会議室まできてくれ」


青い長い髪に、顔にバツ印の傷がついた男性…機関の副官である、サイクスが招集をかける。

リエは「分かりました」と頷いて出て行く。

サイクスはチラッとベッドで寝ている二人に視線を注ぐ。

すぐに背中を向けると…


「焦るな……無念は必ず晴らしてやる」


そう言葉を残して、扉を閉めた。

普段の副官から想像できない言葉に、デミックスは…そして見舞いに来ていた少年少女さえも意外そうに驚いている。


「…あ~、借り作っちまいそうだ」


幼い頃から、不器用な副官の性格をよく知るアクセルは軽く溜息を漏らして、頭を枕を預ける。

俄かにその声音には嬉しさが混ざっていた。




【つづく】

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