ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
リゾット達がアジトへ帰還したのは、空が黄昏色に染まる夕刻だった。
「お疲れさん…やけに遅かった…な!?」
ソファーに背中を預けて、酒とつまみを口にしていたホルマジオはぎょっとした。
帰って来たのは、リーダーであるリゾット、プロシュート、いつも遊びに来ているソラ。
そして、行く時にはいなかった女性が一人。
幼さを残している10代後半のシニョリーナにも見えた。
彼女は、リゾットに横抱きされて、担ぎ込まれてきた。瞼を閉じてすぅーと心地よさそうに眠っている。
「誰だぁ? その嬢ちゃんは…」
「説明は後だ」
ホルマジオの疑問をスルーすると、リゾットは女性を抱きかかえたまま2階にある自室へ早足で急ぐ。
はぁ? と訳わからないという顔で、肩にソラを乗っけているプロシュートに「教えろよ」と視線を向ける。
すると、プロシュートはフッと口角をあげると、小指を立てる。
「あのシニョリーナ…リゾットのこれだよ」
「ふぃんちゃーん♪」
「ぶっ…マジかよぉおお!? あのリーダーがかぁ!」
ホルマジオは面食らう。
彼のよく知るリゾットは、夜の嗜みは熟知しているが、特定の女は作らずに束の間の関係を楽しみ程度。
どちらかと言えば仕事を重視するタイプの彼に、女ができたと!
こりゃ只事ではない、と感じたホルマジオはさらにプロシュートへ問う。
「なぁ、あの女いったいどこ出身だ? 見た感じ此処らにいる奴じゃなさそうだな」
「さあな…少なくとも、イタリア出身じゃねえって事は確かだ。俺達の知らねぇどこかの国だろう」
「ほぉ~、じゃ…ミーチョと同じか~」
そう言うと、ホルマジオは、プロシュートの肩に乗っかっているソラを両手で抱き上げてクシャクシャと頭を撫でる。
ぶぅーと目を細めているソラ。
ホルマジオは猫好きだが、意外と子ども好きでもある。
昔、たくさんの年下の子ども達と共同生活していた時期があったためか、ソラを妹のように可愛がっている。
プロシュートは、彼の気持ちが分かる。
かくいう自分も、年下で、少しドジだが頑張り屋で菓子が大好物の舎弟に世話を焼きたがる性分だ。
騒がしい奴には容赦なく鉄槌をくらわすが、仕事以外で夜の楽しみを共にする女と、懐くこねこにんは例外だ。
ホルマジオにたかいたかいされている最中のソラを傍から見ていて、プロシュートはある「推測」が頭をよぎる。
「(まさか…)おい、ホルマジオ」
「なんだぁ?」
「ちょっとミーチョに訊きてえ事がある」
プロシュートはそう言うと「ほれ、貸せ」と指先を動かす。
しょーがねぇなー、とホルマジオは笑って、ソラを再び彼に渡した。
プロシュートは、そのままソラをソファーの上にぽふっと乗せると、真面目な顔になってこう訊いた。
「ミーチョ、あのシニョリーナはお前と“同じ”なのか?」
「ふぅ?」
コテンと首を傾げるこねこにんに、プロシュートは(暗殺者にしてはかなーり優しい)尋問をしていくのだった。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
「う…ん…」
「起きたか?」
パッと目を開けると、そこに映るのは漆黒の瞳の銀髪の男性。
ゆっくり上半身を起こそうとするが、ふらついてしまう。
「あまり無理はするな。長い間、眠りについていて本調子ではないのだろう」
アジトへ帰還する間に、フィンはとある事情から異空の園で眠っていた事を話した。
詳しい事を語る前に眠気がきてしまい、リゾットに担がれたまま部屋に連れてこられたようだ。
「此処は…?」
「俺の所属するチームのアジト。それからここは俺の自室だ」
リゾットは、ベッドの近くにある簡易椅子から腰を上げると、フィンの額に…頬に手をあてる。
「……? リゾットさん…あの…」
「大分体温はあがっているな。最初、触れた時は皮膚がとても冷たかった」
そんなに冷えていたのか…。
結晶石の中にいた時はあまり温度を感じなかったが、彼の発言でかなり冷えた環境だった事に気付かされた。
触れてくる大きな手の体温が温かくて…心地よくて思わず目を閉じてしまう。
「目を開けてくれ」
言われるがまま、恐る恐る開眼していくと、リゾットの顔が間近にあった。
さっきよりも接近している事にドキッとした。
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