ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


「なら…こい」


リゾットは耳元でそう囁いた。

フィンは一瞬、言われた事に理解が追いつかなかったが、身体が浮遊したと同時に視界が変わった事で何が起きてるのか分かった。


「ちょっ…フィンをどうする気だ!」

「理由か? なら貴様らと同じだ。この娘には、俺達も用事がある。プロシュート!」

「ハッ、上等だ!」


リーダーからのアイコンタクトに、ソラを抱えていたプロシュートは瞬時に意味を察して鼻で笑い、了承した。

それを合図に、リゾットはフィンを抱きかかえたまま駆け出した。


「なっ…!」

「ギャー! 人攫いだぁあああ!」


デミックスの悲鳴が木霊する。

その通りだ…まずい。

あの二人の身元は割れていた。

先日、身辺を調べていた、イタリアのギャングの暗殺チームの一員だ。


(あいつらにソラとフィンが渡っちまったら…やべぇ!)


しかも、熟練の暗殺者である事から俊敏な動きで移動している。


「させるかっ!」


アクセルはパチッと指を鳴らした。

すると逃げ出す暗殺者達の前に、空間から歪が生まれ、そこから白いウネウネした生物―――ダスクが10体出現して道を塞いだ。


「この生物…スタンドか?」


警戒するプロシュートとは裏腹に抱きかかえられているソラは、「しろちゃんだぁ」とよく機関の城で見かけるダスクにのほほんと手を振る。

ダスクはぐぐっと身体を力ませると、弾かれた輪ゴムの如く、素早い動きで突進してきた。

しかし―――


  パシュッ、バシュッ!



「なっ…」「ええっ!」


背後から走ってきたアクセルとデミックスが目を疑った。

二桁単位でいたダスクが、突如宙から現れたナイフで貫かれ、泡となって消えてしまう場面を視界に入れたからだ。


「先に行け」

「カッコつけてヘマすんなよ」


茶化しつつも、リゾットの命令通りにソラを連れて駆けていくプロシュート。

リゾットは、追いつきつつあるアクセル達と視線を合う。


「あの…リゾットさん」


一度、地面へ降ろされたフィンは不安そうに彼に視線を送る。

彼女の視線を受け、リゾットはある提案を口にした。


「逃げたいのだろう? もし、あいつらから逃げ切る事ができたら話してくれ。俺は、フィン…‟お前の事が知りたい”」


フッ…と口元に弧を描いて告げた言葉。

フィンの心臓が微かに震えた。

自ずと首を小さく縦に振り、同意を得られたと認識したリゾットは、近づきつつある追手二人に目を向ける。


「1メートル弱…射程距離内だ」


そう呟いて、手をかざすや、走ってきた二人が動きが止まった。

すると、デミックスはバタッと卒倒し、アクセルは片膝をついてハァハァと息切れしている。

フィンは目を見開いて、傍らに立つ彼を見上げる。


「安心しろ。死にはしない」


その答えに、ホッと胸をなでおろすフィン。


「場所を移すぞ。此処だと邪魔する輩が増えそうだ」


リゾットは、再度彼女を横抱きするとそのまま出口へ歩いていく。




【勝利の女神は暗殺者へ微笑んだ】




「くっそ…デミックス、起きろ!」

「……うぅ、身体が怠い」


目眩でよろけつつもアクセルは、倒れているデミックスを揺さぶる。

遠ざかっていく背中を見ながら、アクセルはギュッと拳を作る。

あの男…リゾットが手をかざした瞬間、二人は立ち眩みに襲われ、体の自由が利かなくなった。

おそらく…【スタンド】の能力。

まだ特定はできないが、遠距離型でしかも他者の身体に影響を与えるものだ。


「ハァハァ…ダスク!」


朦朧とする意識の中、アクセルはダスク一体呼び出した。


「……副官に伝えてくれ…援護要請、あと俺達を『彼女』のもとへ…」


そう言い切ると、アクセルの視界は暗転した。





【つづく】

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