ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
「貴様ら、何者だ?」
しかし、そのやり取りに待ったをかける人物がいた…リゾットだった。
リゾットは、フィンを守るように前に出て、アクセル達に鋭い視線と、殺気を出して威嚇してきた。
「ミーチョ、こっちだ」
「ふぅ~?」
さらに、彼らの元へ近づいていたソラをプロシュートが抱きかかえて阻止する。
あー、ふーちゃんがぁ~! と、デミックスは慌てた様に声を漏らす。
そんな彼の声が癇に障ったのか、「ああっ?」と気圧を込めた顔で睨み付けるプロシュート。
現役バリバリの暗殺部隊のエースの眼光に、デミックスはズズズッ! と後ずさりした。
その時間は3秒もかからなかった。
これも、日夜任務で(逃げ足を)鍛えているためか…。
かなり後方まで後ずさりした彼を、任務の相棒が「おい!」と眉を潜める。
「何ビビってんだよ…」
「ビビらない方がおかしいよ!」
「しゃきっとしろ! ……おい、黒目のあんた、俺達はフィンに用事がある。俺達の問題に首突っ込まないでくれ」
下がってな…と言い、フィンに「ほら、行くぞ」と目線で促す。
フィンは少し逡巡して、立ち上がろうとするが…くらっと足がふらつく。
「あっ…!」
危うく、花が咲く地面へ接触しそうになるフィン。
アクセルとデミックスは転びそうになるフィンのもとへ駆け寄ろうとしたが、彼らよりも早く、リゾットが身体を支えたおかげで彼女は転倒せずに済んだ。
「…えっと…すみません。また…」
また助けてもらった。
両肩を手で支えられ、フィンはそろ~とリゾットを見上げた。
リゾットは無言で一瞥すると、フィンの背中に腕を回して抱きしめる態勢をとる。
「えっ…えっ、えっ?」
彼のこの行為に、あれ、何かおかしいぞ…と、フィンは思った。
よく周りを見渡せば、リゾットとプロシュート…アクセルとデミックスの両サイドに緊張感が漂っている。
(……うわぁ、もしかして…)
一触即発…修羅場だ。
非常にまずい状況になっている。
此処で争いが起きたら、両者のどちらかが倒れるまで狩る勢いだ…それこそ命をかけて。
「すみません…リゾットさん」
自分が原因で、血が流れる事態は避けなければならない。
フィンは小さな声で、リゾットに話しかけた。
「あの…あちらの二人は悪い方々ではないんですよ」
「…その割に嫌がっているようだが?」
「ちょっと訳ありなんです。あの人達に説明するのはまだ時期尚早なので…。でも、私個人の問題に、あなた方を巻き込む訳にはいきません」
だから、言う通りについていく振りをして途中で逃走しようという算段だ。
アクセルとデミックス…彼らが所属する組織を嫌悪している訳じゃない。
ただ、彼らと面識を持つ事は、ソラと同じ神界に所属するエクレシアとも会う確率が高くなる。
ソラ以外のエクレシアとの接触は回避したいのだ。
八人の内の誰かと会ってしまえば…フィンは、自分の抱えている秘密がバレてしまう、そう確信している。
他のエクレシアに素性をバレてしまう事=『失格になる』というペナルティが課せられている訳ではない。
けれども、後々自分の行動が、彼らによって何かしらの制約がされるのは推測できてしまう。
それゆえに、フィンは逃げる事にした。
おそらく、彼らからの追跡は拭えないが、血が流れるのを避けられるなら何の問題もない。
だから、リゾットにその旨を伝えた。
これが…フィンにとって、人生の大きな選択肢であったとは、彼女は思いもしなかった。
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