ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


目を覚ました眠り姫は、自らを【フィン】と名乗った。

青を含んだ黒の長い髪に、透き通った空色の瞳、幼さを残した10代後半の女性。

リゾットとプロシュートに見えた第一印象はそれだった。


「ふぃんちゃーん♪」


すると、水色の光翼を広げたソラが、ぽふっと彼女に抱き付いてきた。


「ふーちゃん! うわぁ…久しぶりだね」


頬をスリスリ寄せるソラに、フィンは擽ったそうに笑う。

こねこにんが、彼女と知り合いである事に驚いたが、おいおい、あいつら顔見知りだったのかよ…と呆気にとられるプロシュートとは異なり、

リゾットの視線は、フィンに釘付けになっていた。

ずっと動かない彼女をみてきたために、自分と…人間と同じように喋り、笑い、驚く姿を見惚れている。


「…ん? ああ、すみません。お話の途中でしたね」


フィンは、花畑に地べたに座ったままお辞儀した。


「ありがとうございました」

「……え?」

「あっ、ほら…落ちそうになって受け止めてくれたじゃないですか。おかげで怪我せずに済みました」


アレは条件反射だった。

結晶石とともに崩れ落ちる彼女が下敷きになるシーンが頭をよぎった。

…絶対に嫌だった。

己が巻き込まれるのも厭わず、リゾットは跳躍して彼女を抱きかかえると、スライディングするように仲間の元へ着地した。

フィンが無傷であった事に安堵した。

そんな彼女から律儀に御礼を言われ、リゾットは高揚感に包まれる。


「シニョリーナ…フィンって言うのか?」

「はい。すみません…貴方は?」

「俺はプロシュート。こいつの仲間さ」


親指でクイッとリゾットをさして自己紹介するプロシュート。

フィンは「はじめまして」と彼にも会釈して挨拶する…すると、プロシュートは見計らったようにある質問をした。


「ところで、ミーチョとやけに親しいようだが…?」

「ミーチョ…あっ、ふーちゃんの事ですか」


フィンは、自分に抱きかかえられて、上機嫌なソラに視線を向ける。


「ふーちゃんは、私の大事な友達です」

「ともらちぃー」


フィンの言葉に、ソラも小さな手をあげて同調する。

傍から見れば仲睦まじい姉妹にもみえなくない。


「なら…」

「聞きたい事がある」


プロシュートが再び問いかけようとしたら、黙っていたリゾットが台詞を被せる形で言葉を投げかけた。


「フィン、何故あの結晶石の中にいた? 誰かに閉じ込められていたのか?」


いきなり、本題を切り出してきた。

その話題に触れると、フィンは少し困った顔で腕を組む。


「うーん…説明すると長くなるんですけど…」

《よーやく、見つけ出したぜ》


彼女の説明を遮るように、何者かの声が辺りに響いた。

聞こえてきた誰かの声に、フィンは「あっ」と声を漏らし、リゾットとプロシュートは後ろを振り返る。


「フー、迎えに来たぜ。それからフィン…久々だな」


一本の通り道からやってきたのは黒いコートを着た燃える炎を連想させる赤髪の男性。

ソラとフィンは、その男性に見覚えがあった。

―――13機関のアクセルだった。


「あくたん!」

「…えっと…お久しぶりです」


ソラは知人の青年にニパッと笑うが、フィンは口元は笑みを浮かべているものの、冷や汗を流して視線を別方向へそらしてしまう。

うわ…どうしようと困っているのが、他人からみても明白だ。


「ふーちゃーん! おいでおいでぇ~」

「でみたん!」


アクセルの背後からひょこっと顔を出すもう一人の青年…デミックス。

どうやら、彼もまたアクセルについてきたらしい。


「フー…そろそろ帰る時間だ。コゼットが心配してたぞ」

「あい!」


ソラは素直に頷くと、フィンの腕から離れてとことことアクセル達のもとへ行こうとする。


「フィン…長い間、探したぜ。お前もいっしょに来いよ」

「…行かないとダメですか?」


行きたくないのか、フィンは切実な眼差しで訴える。


「俺達だけじゃない。他のエクレシアも、お前にあって話を聞きたいんだ」

「そうそう! 美味しいお菓子もついてくるし、変な事しないから安心しなよ! 話し終わったらすぐに帰れるからだいじょーぶ!」


「はぁ…」


フィンはあまり乗り気ではないが、此処で事を荒立てると後々厄介になりそうだ。

仕方ない…と割り切って、彼らの提案を承諾しようとした。



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