ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


『承太郎君、典明君…すっかり大人になったね~』

「お前は…年寄りくさい事言うな」

「そういうフィンも綺麗になったよ」


フィンのしみじみと呟いた言葉。

あたかも、親戚の叔母さんが「あら~。○○ちゃん大きくなっちゃって!」というノリだ。

承太郎は呆れたように目を細め、片や花京院は外見が少し変化したフィンに対する感想を言う。


『うーん…髪の毛かなり長くなってる…よね? 頭が重たいな、って感じる事があるかな』

「ああ、お前の身長を軽々超えてるぞ。まるで、平安時代の女みてーな長さだ」


承太郎が詳しく説明してくれた事に、フィンは「うあ~」と軽く悲鳴をあげる。

封印が解けたら、真っ先に髪を切らなければならない。

長髪が嫌いと言う訳ではないが、髪はショートの方が慣れている。

洗髪する時や、日常でもなにかとショートの方が動きやすい。


「フィン…君の封印はいつ解けそう?」


花京院が憂いのある表情で尋ねてきた。


『……多分、そろそろだと思う』

「はっきりしないな」

『こればかりは、私でも予測できないものだから。何かきっかけでも…』


フィンが言葉を紡いでいる途中、ドガッ、ドガドガドガドガッ! と大きな衝撃がした。


「承太郎!」


花京院が慌てたように声を上げた。

承太郎の背後から、屈強な体つきの魔人…スタンド『スター・プラチナ』が出現していた。

あの衝撃は、『スター・プラチナ』がフィンを封じ込めている結晶石へ拳を連打したのだ。


「…こりゃ、骨が折れる硬度だ。スター・プラチナのラッシュでも欠片ひとつ砕けねぇとは…」


結晶石のあまりの硬さに、承太郎は眉を潜めて腕を組む。


「承太郎…僕も早く、フィンを解放したい…けれど、スタンドは危ないだろ!」

「安心しろ。調整している」

「そういう問題じゃないだろ!」


いつもは冷静な花京院が、珍しく真剣に怒っている。

その理由は察しているものの、あからさまに解り易い態度に、承太郎は「やれやれだぜ…」と肩を竦める。


『あはは…スター・プラチナでもダメみたいだね』


スタンドの突如の攻撃に関わらず、フィンは苦笑している。

彼女の発言のある部分に、承太郎はピクッと反応した。


「“でも”…だと? 前にも同じ事をしでかした野郎がいたのか?」

『うん。何人かいましたよ』

「フィン…言いたくなかったら、無理はしなくていい。でもその人達の事、覚えているなら話してもらえるかい?」


花京院が慎重に言葉を選んで問いかけた。

フィンはその人物の事は、詳細に覚えていた。

トレジャーハンター、誰かに雇われた用心棒らしき人…その中に、あのギャングのドンもいた。

名前は不明だが、あの邪悪なオーラと風貌は未だに目に(瞼は閉じているけれど)焼き付いている。


ギャングのドンも、スタンド使いだった。

能力はまだ正確につかめていないが、結晶石の周りを防御していた蔓や攻撃性のある植物が瞬時に細切れになった。

危うく、結晶石まで壊されるか…と思いきや、予想以上の強度に彼もまた苦戦した。


『この結晶石のおかげで、難を逃れたけど…あの人、また来そうな気がする』

「お前にしては珍しく、嫌な態度を露骨に表わしてるじゃねえか…」


承太郎は意外そうな顔で言葉を返す。

DIOとのあの戦いで、彼の陣営には吐き気がする悪党はちらほらいた。

そういった敵に対しても、表面上は嫌な表情一つなかったのに…。


『理由は簡単。あの人のオーラは好きになれません』

「ほぅ…お前が嫌いになるオーラ、っていうなら相当な外道とみた」

「承太郎…やっぱり、彼女を此処に置いたままだと危険だ。なんとか、この結晶石ごと移動できないかな」


『二人とも、心配してくれてありがとう。でも大丈夫。なんとか自力で結晶石が割れないか挑戦してみるから…それまで待ってて』


戦友二人が、自分のために色々としてくれるのは嬉しい。

けれども、未だ解けない封印のために時間を費やしてしまうのは申し訳ない。


「でも…!」

「分かった。俺も花京院も他の仕事で多忙の身だ。一ヵ月待ってやるから、それまでにさっさと目を覚ましてくれよ…フィン」


承太郎は、フィンの意思を察したのか…渋る花京院を連れて一旦、異空の園から出て行く事にした。

フィンは手の代わりに蔓を左右に振って、二人を見送る。


(そういえば…ふーちゃんは今、どこにいるんだろう? 早く会いたいな…)


同じ種族の小さな友達の姿を脳裏に浮かべながら、フィンの意識は夢路へ向かっていった。



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