ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
戦いを終える少し前、私の身体に異変が生じた。
急激な眠気に襲われて、ふらりと足元がよろけて倒れてしまいそうになる。
私は、この症状に身に覚えがあった。
―――《眠りの時期》
エクレシアの誰にも必ず訪れる、不定期な休眠期間だ。
通常、数年単位で…長くて20年以上の眠りについてしまう。
幸いだったのが、この症状が進行してきたのが、うりさんを倒した後だった事。
その前であれば、承太郎君達に迷惑をかけていただろう。
彼らと分かれた後、私は眠りに入る準備をした。
通常は、自然界の力が集まる場所にいって結界を張って寝場所を確保するのだけれど、この世界はあまりにも人間の手が及んでいるためか、
なかなか良い場所が見つからなかった。
そのため、私は外界とは《別の空間》を作り上げてそこで一時の休息を取る事にした。
己の思い描くイメージを《異空間》として作り出す能力―――《エンジェル・スチーマー》
これは、エクレシアが急な眠りの期間がきても大丈夫なように、彼の有名なエクレシア・ドクター…リーシェ・シフォン・クローチェ博士が開発した術だ。
この術により、今まで眠りの時期への対応に苦難していたエクレシア達も、どんな世界にいても安心して眠れるようになった。
私は、自然に囲まれた場所で過ごしたいと思っていた。
だから、イメージは森の中。
巨大な樹木の中央に密かに封印されている《眠り姫》のように…。
眠りの時期に入って、私は色んな夢を見た。
…異世界にいる同胞の視点で映し出される様々な世界。
…懐かしい天界の風景。
…遠い故郷にいる家族の姿。
ああ、皆元気に過ごしているんだ。
よかったな…と思う一方で、一人でこの異空間に閉じ込められている事に孤独を感じる事もあった。
随分と長い時間が過ぎた頃…眠ったままの状態でこの世界の様子が、私の頭に鮮明な映画のスクリーンのように映し出されるようになった。
丁度、身動きが取れなくて暇を持て余していたので、私はその映像を見るのが楽しみになった。
ある時、一人の女性が決死の表情で駆けていく光景が見えた。
何やら下品な笑みを浮かべた男性に追いかけられている。
ああ…これは所謂ストーカーの被害者と加害者の構図だ。
人を好きになるのは素敵な事。
でも、相手の意思や思いを無視して自分の感情や思い込みを押しつけようとしたり、拒まれたら逆上して暴力で蹂躙するやり方は最低な事。
確か、うりさんの所にもそんなタイプの部下がいた。
口には出さなかったけど、私はああいう人達は痛い目に合わないといけないと思う。
そうしないと更生しなさそうだったし、何より男性の人達の品位を下げている。
多分、あちらの世界で厳しい罪に問われているはずだ…そういう《手続き》をしていたから。
話を戻すと、その女性がピンチになったので、私は何とかできないかと念じたら…女性をこの空間に連れてくる事が出来た。
でも、ストーカーの人も来てしまった。
こうなれば…と思いきって「この人をお灸ずくしにしてやる!」と強く願ったら、結晶石の周りに生えていた蔓が彼を攻撃した。
気付けば、そのストーカーさんはぴくぴくっと殺虫剤をまいて瀕死状態の虫のようになっていた。
やりすぎたかな?
…と思ったけど、一番恐ろしい目にあっているこの女性の事を考えると、この位可愛いものかもしれない。
だから、この男性に対して私はこうメッセージを伝えた。
《この女の人にこれ以上危害を加えてみなさい。今度は冥府に連れていって、恐ろしい目にあわせますよ》
何度も何度もリピートしたら、その男性の顔が蒼白に染まったのを確認…よし、効果てきめんだ!
そして、思いっきり空に飛ばして警察署へ直行させました。
女性の人も…安心してもらうために木に生えている果実をあげた。
あの後、ストーカーも無事逮捕されたようだ…あの女性、あれからどうなったのだろう?
少しでも、安息の時間を過ごしててもらえた嬉しい。
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