ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


私が旅をしている理由…

何をしたいのか、どうしたいのかを見つける旅。

簡単に言えば「目的探しの旅」。


この世界とは異なる、天界で私はエクレシアとなった。

エクレシアは「神の卵」

いずれ、新しい神様になる神様の見習い。

私が育った天界では、10人以上のエクレシアがいる。

私が物心ついた頃には、お世話になっていた先輩方が5人も次世代の神様…セクエンティアとなっていた。


エクレシア―――その立場は、数多の魂(オーブ)の憧憬と羨望の的である。

現世と常世を繋ぐ交渉役でもあり、人と神々の間に立ち、双方の橋渡し役ともなれる高位の存在。

知人がセクエンティアになった事は、私自身も胸が高いし、誇りに思う。

でも…私はその地位にあまり興味がなかった。

私は《エクレシア》でありながらも、他のオーブ同様の普通の生活をしていた影響で、自分が高い地位にいる事がどうもアンバランスな気がした。

悩んでいる私を見兼ねたのか、お仕えしている女神様がある試練を与えた。


『―――、異世界観察にいきなさい。貴女はそこで己の目的を…為すべき事を見つけなさい』


その試練に合格するまで、天界へ帰還しないように…とその他にも厳しい条件付きで。

本格的な異世界観察は、今回が初めてだった。

まず、私はこの世界の事を知るために、情報収集をしながら回る事にした。


極力、光翼を使わないよう細心の注意を払いながらの旅。

日常で、そんなに光翼を使う頻度は高くないものの…空中散歩が密かな趣味である、私にとっては少し残念な事だったりする。


旅をしていると…いろんなタイプの人に出逢う。

他人に優しく、自分に厳しい人…自意識過剰な人…解り易い欲深い人。


その中で、印象的だったのがうりさんだ。

うりさん…というのは、私の小さな友達がつけたあだ名であり、本名はDIOさん。


彼は《悪のカリスマ》ともいえる人だった。

己の意にそぐわない人や反抗する人は平気で殺す、頭の回転の速い冷酷な吸血鬼。

けれども、向上心が強く、己の野望を叶えるために意思を曲げない点は、共感できる所があった。

普通の人から見れば、非常で残虐な恐ろしい存在なのかもしれないけれど、彼の思想に共感したり、居場所を与えられた人達もいる。

彼自身を《単純な悪人》とは思わなかったが…悪行を肯定はできなかった。


『ステラ! 私と契約をし、いずれ世を総べるこのDIOに尽くすエクレシアとなるのだ! そしてフィンよ…お前は夜の僕となり、私の血族を成してもらう!』


あの言葉は強烈だった。

異性の幼馴染や友達はいるけれど、異性から爆弾発言を言われたのは初めてだった。

普通の人だったら、かなり傷つく…うん、間違いなくトラウマになりそう。

その爆弾発言を聞いていた、承太郎君達も驚愕し、引いたり、不快感を示していた。

特に、典明君が「ふざけた事を言うな!」と激怒していた…あれは私も驚いてしまいました。


でも、当の本人である私は戦いに巻き込まれる前に彼と会っていた事もあって、別の考えが浮かんだ。

もしかして…うりさんは寂しいのかな、と。

《吸血鬼》という不老の種族になったけれども、陽の当たる所には出れず夜にしか生きられない。

種族は違えど、同じく長い時を歩む事が出来る友達が、理解者がほしかったんじゃないか…とも個人的に推測した。


個人的に、うりさんは嫌いではなかった。

でも、あくまで「友達」の領域は出ていなくて、「異性」として好きにはなれない。

今思うと、あの戦いの勝者が承太郎君でよかった。

仮に、負けていたら私の貞操は彼に捧げられていただろう。

そうなったとしても、うりさんが幸せになれるとは思えないし、私個人も喪失感に苛まれているはずだ。


もし、この身を抱かれるなら、心から好きになった人へ捧げたい。

これは全ての女性の万国共通の憧れであり、夢であり、願いでもある。

果たして、私の元にそんな人が現れるかは…不明だけど、夢を見るのは自由だ。



私が、承太郎君の陣営を応援したのは彼らの人となりに愛着がわいて、共感したのもある。

でも、一番の理由はふーちゃん。

私の小さな友達であり、同じエクレシアが彼らの味方をしていたから。


ふーちゃんはまだ小さいのに、自分が好きになった人を助けようと頑張っていた。

まだ無意識な所もたくさんあるけれど、ふーちゃんの「他者に幸福をもたらす」能力が、結果として承太郎君達を救った。

見ず知らずの人のために、何の見返りも考えずに手を差し伸べる事…。

これは、誰にでもできる事じゃない。


私はふーちゃんの純粋な思いに心を打たれて、同時にある決意をした。


“この子のために、私のできる限りのサポートをしてあげよう”


―――それが、私の最初の目的になった。



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