ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


眠り姫の噂は、一国のみならず他の国々でも伝わっていた。

理由は、目撃証言をする人達がゾクゾクと現れた事による。


ある女性は、恋人に振られてショックのあまり自殺しようとしていたが、眠り姫に出逢った事で踏みとどまった。

ある街に住む幼い兄弟は、不甲斐ない父親に耐えかねて家出してきた。

しかし、眠り姫に諭されたらしく、時々彼女の元へ行くようになった。

さらに、有名な漫画家の一人は噂を聞きつけ、彼女のいる場所――《のちに【異空の園】と名付けられた》――を自力で見つけ出した。

創作意欲が湧いていき、漫画執筆の傍ら、時間が空けば彼女の住処へ通っているらしい。


また、その眠り姫が眠る結晶石が貴重な鉱石であるという情報が流れ出し、トレジャーハンターや裏組織の者達がここぞとばかりに狙っている。

中には、眠り姫をコレクションに収めたいという資産家まで出てきている。

人から人へ、その話は語り継がれていく。

好奇、畏怖、称賛、貪欲…さまざまな視線を向けられても、眠り姫は目覚めない。

心地よさそうに…穏やかな寝顔で、今も眠りについている。

そんな彼女に、人々は惹きつけられ、そして心を癒されるのだ。




【語られる《眠り姫》の物語】




濃霧が広がる《異空の園》

そこに足を踏み入れる二人の男性。


「此処はどういう構造になってんだ? あいつの能力の一種か…」

「そうかもしれないね。彼女が【眠りの時期】につく際に、自己防衛のために作り上げた…彼女の【領域(テリトリー)】だと、僕は推測している」


白い帽子とコートを身に纏う長身の男性、空条承太郎は、親友の花京院の言葉に「あり得るな…」と頷く。

二人は急ぐ様子もなく、徒歩で目的地を目指している。

道中、どこかの国の子ども達とすれ違った。

彼らは嬉しそうに、桃によく似た果実を手にして走り去っていく。

一般人でも入り込める事から、眠り姫は開放的な思考の持ち主のようだ。


「…十中八九、あいつだな」

「うん。僕もそう思う」


承太郎の確信に、花京院は頷く。

親友が顔に嬉しさを滲ませている。

それだけ、彼は長年行方不明だった戦友に会いたがっていたのだろう。

彼が、『彼女』に対してどんな思いを抱いているのか…薄々、感付いているものの、承太郎はそれを口に出す野暮な真似はしない。


そして…二人は目的地まで辿りついた。

眠り姫が封印されている《結晶石》がある大樹の元へ。


「変わっていない…か?」

「いいや、髪が随分長くなってる。それに…綺麗になったんじゃないかな」


二人は各々意見を口にすると、眠っている《彼女》に向かって口を開いた。



「ようやく見つけたぞ/会いたかったよ

―――《フィン》」






【つづく】

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