ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(1)


ソラは、川辺でちょこんと座っていた。

サラサラと流れる水の流れに沿って時折、泳いでくる魚をジッと見つめている。


「おしゃかな~」


陽できらっと水面が光る、そこに映し出されるのはソラの姿。

その後ろに、見覚えのある人物も映っていて、ソラはくるりと振り向く。


「あ、あくたんだぁ」

「よっ、迎えに来たぜ」


赤髪の青年、アクセルが笑って手をあげるソラにならい、右手をあげた。

ソラは立ち上がると、とことこと彼のもとに近づき、足元にしがみつく。


「フー…こーら、また勝手にでていっちゃダメだろうが…」


アクセルは彼女を抱き上げて、メッ…と軽く叱った。


「ふぅ~…ごめんね」


ソラは眉を下げて謝ると、アクセルはぽふっと頭に手を置いて「よし、良い子だ」と口元を緩める。


「コゼットとくー坊が心配してたぞ。さぁ戻るか」

「あんね、まって」


アクセルが帰ろうと言うと、意外な事にソラはそれを止めた。

今まで、迎えが来た時は素直に頷いていたのに、ソラは初めて拒否したのだ。


「どうした?」

「にーたん、ばいばいしゅる」


その言葉に、アクセルの脳裏にある少年が思い浮かぶ。

ああ、あの貴族の御坊っちゃんか…と。


「あの坊っちゃんとバイバイしたら、帰るんだな」

「うん。またあしょぼー、いう」


どうやら、ソラはまたこの世界に来る気満々の様だ。

あのジョナサンという少年と親しくなった、という証拠だろう。


「分かったよ。けど、一つだけ忠告しておくことがあるぜ」

「なーに?」


「フー…いや、ソラ。ジョナサンの前で羽を出しちゃダメだぞ」

「これぇ?」


アクセルがそう指摘するや、ソラは背中からぽんっと薄い水色に輝く光翼をだした。

そのまま、アクセルと目が合う高さまで宙に浮くと、不思議そうに「なんで?」と尋ねる。



「あ~…だから出すなっていうのに。いいか、ソラ。

羽を出すって事は、お前がエクレシアだって事がばれちまうんだ。そうなると大変な事になる」


「たいへん?」


「ジョナサンのようないい奴ならまだいい…

けどな、中には悪い奴もいて、お前をとっ捕まえて傷つけようとする奴らもいるんだ」


「ふぅ…こあい(こわい)」


「そうだ。コゼットやくー坊、リエやお前のおふくろさんにも会えなくなっちまうんだぞ」



アクセルが真面目な表情で、そう言い聞かせるとソラはやだぁーと目をうるうるとさせて涙ぐむ。

ゆっくりと地面に降りて、アクセルの足に再びしがみついた。

アクセルは両手で、ソラを抱き上げるとよしよしと頭を撫でる。



「羽は、怖い奴らが襲いかかってきた時に逃げるのには使っていい。

それ以外は気をつけるんだぞ、記憶したか?」


「うん!」





【『踊る火の風』との約束】





すると、タイミングよくジョナサンが愛犬を連れて歩いてきた。


「ステラ、此処にいたんだね…えっと…お兄さんは誰ですか?」


黒装束を纏う見かけない青年に、ジョナサンは戸惑う。

傍にいるステラ(ソラ)が怯えずに抱っこされているので、危ない人ではなさそうだ。


「ああ、俺はこの子の保護者代理みてぇなもんだ。ほら、兄ちゃんにあいさつしな」

「にーたん…ばいばい。またあしょぼ」


ソラは小さい手を左右に振ると、待っているアクセルの後を追ってとことこと歩いていく。

ジョナサンはつられる形で手を振りながら、思った。


(あの人が…ステラの家族なのかな)


ソラ同様に、あの青年もまた不思議な雰囲気を漂わせていた。

アクセルはこの時点で気付いていなかった。

ソラと同じく、彼もまた奇妙な縁が結ばれた事に…。





【To Be Continued… ⇒】

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