ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
あれから、一年…ソラは変わらず暗殺チームのアジトに遊びに来ている。
最初は、子どもがうろつきまわる事に難色を示していたイルーゾォや、苛立っていたギアッチョも会う回数を重ねる毎に、距離を縮めていった。
ソラが来てから、アジトの雰囲気が柔らかくなった。
殺伐とした空気も一瞬に吹き飛んでしまうように、心に綺麗な水がしみわたり、潤いを与えていった。
その分、ちょっとした騒動も起きたりした。
一番驚いたのは、ソラが羽を出して飛ぶ姿を間近で目撃した時だ。
あの時は、ギアッチョは口に含んだエスプレッソを盛大に吹き出し、ホルマジオは目を極限に見開いて「マジかよ~!」と大声で叫んでいた。
メローネは、うほぉ~と目をキラキラと輝かせて観察していた…何を考えていたのかは敢えて詮索しない。
気を抜いて落っこちてしまわないかと、ペッシがアタフタとバケツや容器をかき集めて、ソルベとジェラードが彼のそんな滑稽な行動を笑っていた。
結局、リゾットの一声でこのちょっとした騒動は幕を下ろしたのだが…。
スタンドの一種か…とリゾット自身は推察しているが、定かではない。
でも仮に、ソラが人間でなくても、彼は…いや彼らはそんな事気にする男達ではない。
ソラは不思議な子どもだ。
スタンドのあるなしに関わらず、この子は周囲にいる人の心を癒す力があるのではないか…と常々感じている。
「ミーチョ、あと少しでうまいドルチェがやってくるぞ」
「どるちぇー♪」
「お~、そうだ。いい発音だぁ」
プロシュートが指先で顎をこそばすと、本物の猫のように、ソラは目を細めて気持ちよさそうにされるがままだ。
「今日のドルチェは?」
「ジェラードだ。ミーチョの大好きなバニラ味がたっぷりな」
「バニラだけか?」
リゾットがデスクに頬杖をついて問う。
「リーダー好みのティラミス味もメモに書いといたぞ」
膝にソラを乗せて、ぽんぽんと撫でているプロシュートがハッ…と得意げに笑う。
部下の粋な計らいに、「さすがだな」とリゾットは満足げに一笑した。
ふぁーと欠伸を漏らすソラ。
リゾットは長い指で彼女の頬にさりげなく触れるとこう呟いた。
「眠たいなら寝るんだ…ドルチェがきたら教えてやる」
「…あんがとー…」
御礼を言うと、ソラはスヤスヤと夢路へ旅立つ。
寝息を立てるこねこにんの姿に、二人は表情を穏やかにこう囁いた。
「「Buona notte il Buon sogno(おやすみ、いい夢を)」」
頬にチュッとキスをもらったのを、夢路にいる彼女は知らない。
【暗殺チームとこねこにん】
この時…狭間の闇の中で、ソラを探し当てた、音楽大好き青年は二重の意味で硬直していた。
ようやく見つけ出したかと思えば、ソラがとんでもない連中の所に行き来しているという信じられない事実に…。
そして、彼女を連れ帰るためには、青年があの連中の根城に特攻しなければ不可能だという、絶叫な現実に…。
青年…デミックスの行動は早かった。
携帯電話を取り出すや、速攻仲間へ連絡を取る。
「アクセル、ごめん…無理、ムリむりムリむりムリ、無理ぃいいいい! 俺だけじゃ、ふーちゃん迎えに行けない! ヘルプミー、プリーズゥウウウ!!!」
号泣する仲間のもとに、赤毛青年が駆けつけるのは数十分後の事。
【つづく】
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