ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(2)
「ごめん、待たせたね」
苦笑して謝る恋人に、エリナも微笑みを浮かべる。
「いいえ、大丈夫ですよ」
エリナはそう返すや、離れた場所でこちらを眺めている例のイタリア人に目が留まった。
「あの御方は、どういったご用件で貴方に…?」
つい気になってしまい、その事を尋ねてしまった。
「あの人…ツェペリさんは、父の知り合いだったみたいでね。
昔の父との思い出話につい花を咲かせてしまったんだ」
ジョナサン曰く、ツェペリ氏はジョースター卿と仕事上で親しい仲だったとの事。
旅行中に、ジョースター卿の訃報を聞いて息子であるジョナサンのもとを訪れた。
話をしていく内に、お互いに意気投合して…そのおかげか、ツェペリ氏は英国に滞在する日程を長くしてくれた。
「ツェペリさんは考古学にも造詣が深くて、僕が書いた論文にも興味を持ってくれて…
これからの事も含めて、相談に乗ってくれる事になったんだ」
「そう…よかったわね、ジョジョ」
ジョナサンは大学を卒業後に家を継ぐと同時に、考古学の仕事にも本格的に携わると決めた。
ツェペリ氏も、亡き知人の息子の夢に協力したいと乗り気のようだ。
「ごめん、エリナ。暫くの間は…忙しくて会えなくなってしまう」
「気にしないでいいわ。それよりも…今、ジョジョがやるべき事を優先してください」
申し訳なさそうに理由を語るジョナサンに、エリナは首を緩慢に振って「心配しないでいい」と伝える。
あの事件で大切なものを一気に失くしてしまった恋人は立ち止まる暇もなく、前に進まなければならない。
今までとは異なり、長い時を経てようやく心を通わせる事ができたのだ。
ここで我儘を言って、彼を困らせる事はしたくない。
どんな形でもいいから、彼の事を見守り、応援していこう…とエリナは密かに決意した。
そんな二人の様子を間近で眺めていたソラは思った。
(じょーちゃん…へん)
ジョナサンとエリナは二人とも仲良く話をしている。
けれども…ソラは、ジョナサンが纏う空気がいつもと違って穏やかではないと感じ取った。
(ぽんぽん、いたいん…(お腹痛いのかな…)?)
幼子故に漠然とだが、ソラは契約者である青年に自分達には何かを隠している、そんな気がした。
…体調でも悪いのだろうか?
…嫌な事でもあったのだろうか?
ソラの心に、モヤモヤしたものがちょっとずつ広がっていく。
「ぴぃ、ぴぴぴぴ?」
すると、ランが小首を傾げるようにソラに話しかけてきた。
「うん、じょーちゃん…どしたん(どうしたんだろう)?」
ソラは、ランに自分の今の気持ちを素直に教えた。
ジョナサンの事が凄く心配である事を…。
「ぴ、ぴぴぷ…ぴぴぴっ」
ソラの不安を和らげるように、ランは彼女の手に寄り添った。
【生存していた悪意と、ジョナサンの決心】
「はい、お待たせ。当店自慢のミルクシチューだよ」
夕方を過ぎて、夜の中盤に差し掛かった頃…アクセルとロクサスは町にある宿屋の食堂にいた。
予め、ダスクに値段が手頃で安全な宿屋を探すように命じていた。
ソラ達と合流して話が一段落した頃には見つけ出していたので、すぐに二人は此処へ直行する事ができた。
さらに、宿屋の女将が良心的なタイプの人物であった事が幸いだ。
アクセルとロクサスを普通の客として迎えてくれて、夕食の特製シチューを大盛りにするサービスをしてくれるなど気前もいい。
「うん、うまい!」
「そう言ってくれると嬉しいねぇ~。よかったら、おかわりしていいよ」
ロクサスは、具がたっぷり入ったシチューを堪能している。当初はカレーライスが食べたかったが、此処では取り扱っていなかったため、やむなく女将のおすすめ料理に決めた。
…その選択をしてよかった、と本人は実感している。
「はぁ…」
「アクセル、食べないのか?」
宿屋に到着する前から眉を寄せている親友に対し、ロクサスは心配そうに声をかける。
「ああ…食ってるよ」
そう言いつつも、アクセルは匙を持ったままシチューに手を付けていない。
…ロクサスは分かっていた。
親友がいつになく悩んでいるその原因が、『ハーパル』という導き神からの依頼である事を。
「アクセルはどうしたいんだ?」
ロクサスはシチューを味わいつつ、率直に尋ねた。
簡単に解決しない問題だが、一人で悶々と思考にはいるより、二人で話し合った方がいいと思ったからだ。
「本音を言えば…ふーを厄介事に巻き込みたくない」
「うん、俺も同じだ」
「だが、ジョジョが絡んでくるとなると、ふーは絶対にあいつから離れねえだろうし…」
あー、どうすりゃいいんだ…とアクセルは後頭部を掻く。
そんな親友の様子を見ながら、ロクサスは五時間前の出来事を振り返った。
【To Be Continued… ⇒】
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