ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(2)


数時間後、スピードワゴン達の尽力でディオに毒を売ったという東洋人と面会した。当初は、白を切っていたが、スピードワゴンの迫力のある説得(というより、ほぼ恐喝に近い)により、白状した。

ジョナサンとスピードワゴンは、解毒剤を持って帰るために、その商人の店を訪れていた。


「おい、早くしやがれ!」

「そんなに急かされても困るあるね。解毒剤をしまってるのは…ここだったような」


スピードワゴンに急かされ、東洋人…名前は、ワンチェンという小柄な中年の男性だ…はがさごそと戸棚を調べる。


店は古びた外見だったが、内装は東洋の独特な雰囲気を醸し出している。

薬草や怪しげな色の薬品、中には占い関係の道具や爬虫類っぽい干物なんかもおかれている。

ワンチェンが探している間、ジョナサンは店の商品一つ一つを観察する。


「東洋には、変わった物があるんだな…」


大学では、別のジャンルを主体にしているが、東洋の歴史も興味深い。

今は、非常事態ゆえにゆっくりしている暇はないが、この一件が一段落したら調べてみようか。

ジョナサンが今後の予定を考えていると、ソラが何かで遊んでいる事に気づいた。


「ステラ、何をしてるんだい?」

「ごりょごりょ~」


ソラは丸いもの…無色の水晶玉を面白そうに掌で地面にコロコロと転がしている。

それを目にしたワンチェンが「あっ、こら!」と目の色を変えて怒る。



「困るあるよ! それうちの大事な商品ね。

こりゃ、小娘。遊び道具じゃないから返すあるね!」


「ぶぅー!」



水晶玉を返せと言われ、ソラは不服そうにぷぅと頬を膨らませる。


「ステラ、さすがにお店の品物で遊んじゃあだめだ」


しかし、ジョナサンから優しく諭されると、ソラはむぅーと納得いかない感じだが、「あい」とそれを差し出した。


「まったく…これだから子どもはひやひやするある」

「そんなガラス玉が価値あるのかぁ?」


ブツブツと文句を零すワンチェンに対し、スピードワゴンは眉唾物じゃねえのか、と邪推する。


「失礼な、これジパングで取れた良質の水晶あるよ! この鑑定書が証拠ある!」

「うそくせーな…ってそれよりも、さっさと解毒剤探しやがれ!」


別事に気を取られて、危うく本来の目的を忘れてしまう所だった。

スピードワゴンが、はよしろはよしろと言い出し、ワンチェンも渋々解毒剤探しを再開する。

元の定位置に戻された水晶石を、ソラは相変わらずじぃーとみている。


「ステラ、その水晶気になるのかい?」

「うん」


何故、と問いかけると…ソラはこう言った。


「ふーたん、いっしょ」

「いっしょ…?」

「うん、いっしょ」


店内には、その水晶玉以外に瑪瑙や真珠のようなものを複数使って円形に仕上げた手飾り、数はあまりないが綺麗な装飾品はある。その中で、ソラは何の変哲もない水晶玉が気に入り、触りたくてうずうずしている。


(これがほしいのかな…?)


ジョナサンはそう解釈すると、ワンチェンに声をかけた。


「この水晶玉、いくらだ?」

「ぇえええ! ジョースターさん!?」

「おやおや、旦那…目の付け所が違うねぇ」


水晶玉を購入すると言うや、スピードワゴンは驚愕し、ワンチェンは目をキラリと光らせ怪しく笑う。


「値段はこのくらいで…」

「……てめぇ! ぼったくりじゃあねえか!」


ワンチェンが提示した金額は、かなりの額だった。

スピードワゴンは胸倉を掴んで「ふざけんな」と抗議するが、「こっちも商売ある!」とこの件に関しては、ワンチェンも引く気はない様子。

互いに睨みあう二人に、ジョナサンはまぁまぁと仲裁に入る。



「分かった。じゃあこれで…」


ジョナサンは、手持ちのお金…金貨三枚を支払う。


「…ってジョースターさん! 提示した金額の三倍って!」

「お客様、素晴らしいある! 今ならこの古臭い書物をおまけしてあげるよ!」


商売魂に火が付いたのか、ワンチェンはここぞとばかりに色々とおまけまでつけてくる。



「気持ちはありがたいけど、早く解毒剤を探してほしい。それから、おまけにするなら、その書物じゃあなくて、そっちのシリーズになっている歴史書にしてもらえるかな?

こっちの『YUKATA』っていうジパングの衣装も頼む。それから、金貨三枚分は払っているんだからきっちりと証言してほしい」


「あんた、意外と買い物上手あるな…」


「と、東洋人相手に買い物ついでに証人交渉するなんて…す、すげーぜ、ジョースターさん!」



ワンチェンに、ディオの犯行を正確に証言させるためにも、上客になる必要がある。

そのため、ジョナサンは水晶玉のみならず個人的に関心のあったものもいくつかピックアップしてまとめ買いした。


…証拠も証人もそろった。

あとは、屋敷に戻ってディオを待つのみだ。



「ステラ、はい」


ジョナサンは、買った水晶玉をちょほんと地べたに座っているソラへ渡した。

ソラはおおっ~…と目をキラキラさせて、両手を伸ばしてそれを受け取る。


「あんがとー(ありがとう)」


舌足らずな喋りでお礼を言うと、ソラは嬉しそうに水晶玉をギュッと抱きかかえる。

ジョナサンは「どういたしまして」と微笑み、満足そうに小さなこねこにんを見つめた。



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