ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(2)


「ステラ…まさかこんな所で再会できるなんて…思わなかった」

「たらいま(ただいま)ー」


こんな物騒で危険な場所なのに、ジョナサンは目元から涙が溢れてくる。

七年ぶりに親友に、家族と再会できて…喜びと幸せで胸がいっぱいになりそうだ。



「じょーちゃん」

「…ん、なんだい?」

「おっきーね(大きくなったね)」


涙を掌で拭うジョナサンに対し、抱っこされているソラは彼の顔を見ながら素直にそう言った。

その言葉に、ジョナサンはソラの姿を改めて確認する。

七年前と同じく白い猫の衣装で、全く変わっていない。


(…やっぱり、人より成長が遅いんだ)


改めて自分との違いを実感した。

けれども、元気で無邪気に笑うソラの姿を見て、そんな違いなんてどうでもよくなってきた。


「ね、ねこ…いや、子どもだとぉおおお!…」

「見ろよ…天使の羽が生えてるぜ…!」

「ゆ、夢でも見てんのか、俺達…」


ハッと我に返るジョナサン。

しまった、此処は幼い子供が出歩くなんて程遠い治安の悪い町中だった事を思い出した。

ジョナサンはコートを脱いで、地面に敷くとそこにソラを座らせた。


「ステラ…此処でジッとしてるんだ」


ソラの出現で、混乱状態の住民達に向かって、ジョナサンは真っ直ぐに目を見据える。


「僕は…戦わなくてはいけない」


ジョナサンの闘志を感じ取ったのか、住民達は武器を持ち直し、一触即発の雰囲気になる。


「待ちな!」


そんな剣呑とした空気に終止符を打ったのは、先程ジョナサンが蹴り飛ばした男性だった。


「その紳士と天使に手を出す事は…このスピードワゴンが許さねぇ!」


男性…スピードワゴンの大喝で、ガラの悪い住民達は大人しくなる。



「一つ聞きてえ! 何故思いっきり蹴りを入れなかった?

アンタのその脚ならよォ…俺の顔をメチャメチャにできたはずなのによぉ…」



彼は歩み寄ると、ジョナサンに対して疑問を投げかけた。

何故、不条理に襲い掛かったゴロツキ相手に手加減したのか?

助かったとはいえ、釈然としない気持ちが湧き、スピードワゴンは本人に直接訳を聞きたかったのだ。

すると…ジョナサンは当然と言わんばかりにこう答えた。



「僕は…父の為に此処に来た。だから、蹴る瞬間!

君にも父や母や兄弟がいるはずだと思った…君の父親が悲しむ事はしたくないッ!」



彼の答えを聞いた瞬間、スピードワゴンは思った。

こいつはなんて甘ちゃんだ…だが、仲間は誰一人大した怪我はしていない。

こいつ…いやこの人は正真正銘、精神的にも紳士だ!


「気に入ったぜ…」


スピードワゴンは雪を払いのけながら立ち上がる。


「あんたと…そこの天使のお嬢ちゃんの名前を聞かせてくれ!」

「ジョナサン・ジョースター。そしてこの子は…ステラ」

「あい!」


帽子を被りなおしたジョナサンは、ソラを抱えて代わりに名前を紹介した。

名前を呼ばれて、ソラは元気よく返事する。



「よし、ジョナサン・ジョースター、ステラ。

東洋の毒薬を売る奴を探していると言ったな…ついてきな!」


「…! ああ、よろしく頼む!」



スピードワゴンは、『毒薬を売る人物を探す手伝いをする』と言ってくれた。

この人は信頼できる…ジョナサンは直感でそう感じ、彼の誘いを二つ返事で受け入れた。



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