ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(2)
ジョナサンは、書庫室で調べ物をしていた。
現在、論文を書くための文献を探している最中だ。
彼が、論文を書いている題材は「石仮面」について。
この仮面は、まだ母が生きていた頃にロンドンの美術商から買いとったものだ。
一見、薄気味悪く近寄りがたい雰囲気を放つ仮面だが、ジョナサンにとっては歴史が詰まったある種の宝のように思える代物だ。
持っていたナイフを使って、指先に傷を作ると、そこから一滴の血が流れ、仮面へ落ちる。
すると、仮面がカタカタッと動き出し、後ろから何本もの骨針が伸びる精巧な仕組みになっている。
この秘密を知っているのは、ジョナサンのみ。
「この仮面を作った者は、いったい何を目的として制作したんだろう…?」
何かの儀式を行う際に使用したのか?
謎を秘めたその仮面に、ジョナサンは探求心がくすぐられる。
「いつか、この仮面の秘密を解いて発表して…センセーションを巻き起こせればいいな」
そんな淡い期待を持ちながら、本棚の上にある書物をとろうとした時…そこに置いてあった箱を落としてしまった。しまった、と急いで降りてみると…その箱から手紙が飛び出していた。
その中に、《ダリオ・ブランドー》という名前が書かれた…ディオの父親が、自分の父にあてた手紙が見えた。
(ディオのお父さんの手紙か…)
ジョナサンは、どんな内容が書かれているのか、気になった。
7年前の手紙であり、ディオを今後を懸念した内容なのかも…と思い、興味が駆られて目を通してしまった。
彼のこの行動は、運命の分岐点であった。
その手紙の内容には、とんでもない真実が記されていた。
それは、ジョナサンにとって築き上げてきた平穏な日常が覆され、ディオとの争いの因縁が生まれ、自らの子孫までをも巻き込んでしまう…火種となった。
手紙を手にして部屋を出ると、ジョナサンの視界にディオの姿が映る。
執事から水とオブラートに包まれた薬を置いたトレイを受け取り、階段を上っていくディオ。
その刹那、懐から別のオブラートに包まれているものとすり替えたのだ。
「ディオ。今、その薬…どうした?」
「どうした…とは?」
「いつも、君が父さんの薬を運んでいたのか」
「ああ、そうだが?」
ジョナサンの問いかけに、ディオはしらばくれるが…
「七年前、君のお父さんが出した手紙、偶然見つけたよ…」
ジョジョは、その手紙の内容を読みだす。
“ 私は今…病にあります。多分死ぬでしょう。わかるのです。
病名は分かりませんが、『心臓が痛み』、『指が腫れ』、『咳が』止まりません。
…私が死んだらどうか息子のディオを…”
内容を読み上げていく内に、ディオの目は冷たく鋭くなっていく。
ジョナサンの脳裏にたてられた、彼への疑惑が現実味を帯びていく。
…ディオは、7年前に実父を毒殺した。
そして…今度は父の財産を狙い、同様に殺害しようとしている!
「この症状…僕の父さんと同じ症状だーッ! 一体これはどういう事だ ディオーッ!!」
「君は一体、何が言いたい?」
ジョナサンは厳しく問いただすが、ディオは冷静な態度で言葉を返した。
「その薬、調べさせてもらう!」
ジョナサンは、机に置かれていた薬を手で伸ばして掴み取るが、ディオに腕を強く掴まれる。
「ジョジョ…その薬を調べるということは、我々の友情を疑う事! 友情を失うぞ!」
いつになく、ディオは感情を荒げてジョナサンの行動を制限しようとする。
目の威圧に負けそうになるものの、ジョナサンは機転を利かせて、ディオにこう言った。
「なら…ディオ! 紳士として君の実の父ブランドー氏の名誉にかけて誓ってくれッ! 自分の潔白をッ!
自分の父親に誓えるなら、僕はこの薬を盆の上に戻し、二度とこの話はしない!」
その言葉に、ディオは言葉を詰まらせる。
(僕の推理通りなら、彼の誇りに対する性格から『誓い』はできないはずだ…)
7年間生活を共にしているジョナサンは、ディオの性格を理解している。
彼が本当に、父親を毒殺しているなら、そんな親のために、誓いを立てる事なんてしないはずだ。
「ち、誓いか…ぐっ、い…いや、俺の前であいつの話をするな!
あいつの名誉に誓うだと? 勘違いするなッ!
あんなクズに名誉などあるものかァ―――ッ!!」
ディオは激怒して、ジョナサンの頬を拳で殴った。
疑いが確信となった。
ディオの父親に対する憎悪は普通じゃない。
二人の間に何があったのかは分からないが…このまま、彼を野放しにしておいたら危ない!
目の中に親指を入れられそうになるが、咄嗟にジョナサンはディオの腕を掴みあげる。
「僕は父を守るッ! ジョースター家を守るッ!」
そう宣言すると、ディオの胸倉を掴んで二階からロビーの大広間へ背負い投げした。
柵が壊れ、一階へ落ちたディオに向かって、ジョナサンは指を指してさらに続ける。
「君のこの7年間の考えが分かった!
僕等には最初から友情などなかった! そして父にはもう近づけんッ!
この薬を分析して必ず刑務所に送り込んでやるぞッ!」
ディオの本性が明らかとなり、ジョナサンは決意した。
父親を、家を守るために…自分は戦い抜くと。
この時…ジョナサンの決意に反応するように、右手の甲の文様が光を強めていた。
しかし、彼は気付いていなかった。
信頼している思い人と親友が傍へ近づいている事にも…。
【運命は動き出す】
同時刻、ソラはある人物と再会をしていた。
「あくたん!」
エリナと一緒に病院を出て街を歩いていると、燃えるような赤毛の青年、アクセルと遭遇したのだ。
ソラは、トコトコと彼の足元に抱き付く。
「ふー! こんなところに…今まで一体どこ行ってたんだよぉー!」
安堵が混じった顔で、アクセルはソラを抱き抱える。
「コゼットが心配してたぞ。時間がありゃ、くー坊連れて探しに回ってたんだぞ!
帰ったらメッされるぜ…覚悟しとけよ~、記憶したか?」
「ふぅ…ごめん」
頭をガシガシッと撫でられて、軽く説教された。
ソラは眉を八の字にして素直に謝る。
…コゼットに怒られるのは嫌だが、ずっと自分を探してくれていたのだと知り、ちょっと嬉しくなった。
「あの…アクセルさんですよね」
二人が再会を喜んでいると、エリナが恐る恐る会話に入ってきた。
話しかけられ、アクセルは誰だ…と目を細めるが…
「エリナです。覚えていますか? あのジョジョと一緒にいた、エリナ・ペンドルトンです!」
「…えっ、まさか…あのエリナ?…ええっ!?」
目を瞬きした後、アクセルは大きく開眼させて、驚愕の声を上げた。
【To Be Continued… ⇒】
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