ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(1)


「…じゃあ、ステラはいずれ神様になる子なんだね」

「…そーいう事になるな」


聞かれてしまったものは仕方ない。

アクセルは後頭部を掻きながら、全ての事情を打ち明けた。

隣で、腕を組んで不機嫌そうにこちらを睨みつけているサイクス。



  “ バラしてどうする ”



声なき鋭いツッコミを暗にくらいつつも、アクセルは《仕方ねえだろ…》と心の中で言い返す。

どっちみち、聞かれてしまった以上、選択肢は二つ。

記憶を消すか、逆に詳細を公にするか。

前者は、手っ取り早い方法にみえるが…ジョナサンを自分達のアジトへ連れていく必要がある。

記憶の一部をなくす事は、かなり難しい上に繊細な作業が必要となる。

下手をすれば、脳に障害をもたらす危険もあるため、あまり有効ではない。


そうなれば、後者を選ぶしかない。

…と言っても、既に粗方の事情を説明していた事もあって、ジョナサンは驚くよりも逆に納得した、という感じだ。



「…ステラはどこにいったんですか?」


「俺にも解らねえ…ただ、フーはまだ力を制御できねえ事もあってな…

此処とは違うどこかにいるのかもしれない」



そうですか…とジョナサンは寂しそうに顔を俯ける。



「ジョナサンと言ったな。念のために伝えておくが…この一件は他言無用だ。

親しい友達や家族にも教えない様に…」


「(父親はもう知ってるけどな…)まあ、そういう事だ。頼むぜ…ジョジョ」



サイクスとアクセルからの頼みに、ジョナサンはこくりと頷いて了承する。

だが、彼の心の内側は小さな友達が今どこにいるのか…という心配で一杯だった。


(ステラ…どこにいるんだい?)



◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇



「おや、此処にいたのか」


ソラは、ハーパルのいる果樹園…天界にいた。

彼に正式な【客人】としてこの世界に招かれ、環境に慣れるために此処で過ごしていた。


「ぱるしゃん、ぱるしゃん」


ハーパルは、ソラに名前を呼ばれて、果物がなっている一本の樹へやってきた。

ソラは、小さな子犬のような子猫のような丸い生物と戯れていた。

額に星の印がついており、その姿は夢の世界で生息する夢魔の一種に瓜二つだ。

その生物は、ぱたぱたと尻尾を振って「にゃふっ」とソラにスリスリとすり寄っている。

よほど、ソラの事が好きなのか離れる気配を見せない。



「…ほぉー、もう【幽波紋(スタンド)】を開花させたのか」

「しゅたんど?」

「解り易く言えば、生命エネルギーが形を作った像…君の分身体のようなものだ」


ハーパルの説明に、ソラは「ふぅ…?」と首を傾げる。


「さらに、解り易く言えば君の【友達】だと思えばいい」

「ともらち!」

「にゃふ~」


ソラが「わーい」と嬉しそうに笑うと、スタンドもまたつられて喜ぶ。


「…このタイプは近距離型か。さて、どんな能力か…」


興味深そうに、ソラのスタンドの額に掌を乗せてみた。


『にゃふっ…なにするにゃか?』

「ちょっと君について知りたいだけだ」


『にゃふ…ぼくの名前はなんていうにゃか?』

「大まかなカテゴリーで言えば『スタンド』と呼ばれているモノだが…君個人の名前はまだない」


『にゃーん…ふーちゃん~! ぼくに名前をつけてほしいにゃ~』


スタンドは、ソラの頬をぺろぺろ舐めて名前をつけて、と懇願する。


「ふぅ…にゃーちゃん?」

『にゃふ…安易すぎるにゃ~』


「ふむ~、にゃふにゃー」

『にゃぁ…ちょびっと変化しただけにゃ~』


「スタンド、この子に命名してもらうのは、ちと難しいぞ。何分年齢が1歳児だからな」

『にゃふ…じゃあ、おじさんつけてくれにゃ~』


スタンドがウルウルとお願いの眼差しを向ける。

ふむ…とハーパルは顎髭を擦りながら思案する。

その間、スタンドのお腹をソラがゴロゴロと撫でて、スタンドは気持ちよさそうに転がる。

BGMがあるなら、ラン、ラン、ランラララン~♪ と和む音楽がぴったりだ。



「りゃん、りゃん、りゃーりゃりゃりゃ~♪」



タイミングよく、ソラが気の抜ける即興の唄を口ずさんでいる。

彼女の唄に、スタンドも釣られるように『にゃ、にゃ、にゃーにゃにゃにゃー♪』と歌いだした。


(ステラとスタンドの共鳴率…かなり高いとみた)


もし、彼等が現世で内に秘めた未知なる力を発揮したなら…どんな化学反応を起こすのだろうか?

ハーパルは知的好奇心を湧きたてられ、微弱ながら恐怖も感じた。


「……よし、スタンド。名前を決めた」

「にゃまえなーに?」

『にゃふっ! どんなのか早く教えてにゃ~!』


ワクワクと期待に満ちた表情で見つめてくる彼らに、ハーパルはその名を口にした。



『ドリーム・シンフォニア(夢想の交響曲)』

―――君によく似ているドリームイーター(夢喰い)の名称から一部とった。

本体であるステラと、君は…世界を変革する『鍵』となれる。

君達の奏でる曲が、多くの人々の運命さえも変えられる、そういう意味を込めてつけてみた」


『にゃふー! カッコいいにゃーん! とってもイカすネーミングだにゃ~vv』



どうやら、気に入ってくれたようだ。

すると、ソラがスタンド…ドリーム・シンフォニアに向かってこう言った。


「おめれとー、わんだにゃーん」

『にゃふっ!?』

「……そちらの方が言い易かったか?」


本体は、カッコいいネーミングよりも呼びやすい『ワンダニャン』の方がお気に入りらしい。

ガビーン! とショックを受けるドリーム・シンフォニア…もといワンダニャン。

命名して早々、やっぱりシンプルな名前の方がいいのか…とハーパルは名前変更しようか少し悩んだ。



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