ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(1)
アクセルは、待ち合わせ場所へ着くと足を止めた。
周りは鬱蒼と茂る木々に囲まれ、その間からカアッ、カァッ! と悲鳴に近い声をあげ、カラスが空へ飛んでいく。この場所に慣れている人はさほど気にしないだろうが、旅行者や住み始めた人等はこの静かで薄気味悪い雰囲気をあまり好まない。
エメラルドの色の目を細め、注意深く辺りに気配があるか否か神経を研ぎ澄ます。
『時間通りにきたな』
人気のない森に突如、響き渡る声。
アクセルの前方…空間から闇の回廊が出現して、そこから深くフードを被った黒いコートの人物が姿を見せた。
「よぉ、サイクス。久しぶり」
同じ服装のその人物に、軽く手をヒラヒラ振るアクセル。
その人物…サイクスは被っていたフードを外す。
青い長髪に、こめかみにクロス型の傷がある男性だ。
「単刀直入にきく。“アリエス”は見つかったか?」
「いや、この世界を隅から隅まであたってみたが…」
アクセルは首を左右に振って、肩を竦める。
「…そうなると、他の世界へ移動してしまったか?」
「その可能性もあるけどよ…俺は、まだこの世界にいるような気がしてならねーんだ」
「その根拠は?」
「直感みたいなもん。ふーはこの世界の事を気に入ってるしよ…
そう簡単に別の世界へ心移りするとは思えないんだ」
アクセルの言い分に、サイクスはハァ、と溜息を漏らす。
「非論理的だな…お前の“直感”とやらは、どれほどアテになる?」
「少なくとも、デミックスの勘よりかは当たってるぞ」
少し得意げに語るアクセルに、サイクスは呆れた顔になる。
「まあいい。一刻も早くアリエス…フーの所在を見つめるぞ。
如何に幼児と言えどもエクレシア…『神の卵』なんだ。
良からぬ勢力に攫われては大問題に発展する」
「そうだな。じゃあ、もうちょいこの世界を探したら、闇の回廊で…」
二人が会話をしているその最中、パキッと小枝が折れる音が耳元に聞こえた。
「そこにいるのは誰だ…姿を見せろ!」
些細な気配さえも逃す事無く、サイクスは後方の茂みに鋭い視線を向け、怒鳴る。
アクセルも肩越しに後ろを見て、手元から愛用の武器、チャクラムを出現させる。
相手が少しでも変な事をすれば、攻撃できるよう態勢を整える。
ガサッ…
だが、茂みからでてきた人物を目にして、アクセルは驚いた。
何故なら……
「す、すみません…話を聞くつもりじゃあなくて…その…」
「ジョジョ…!」
なんてこった、と額を手で抑えてしまう。
隠れて立ち聞きしていた人物が、よりにもよってソラの親友だとは…。
【未知なる領域】
「ふぅ…ぐりゃぐりゃ~」
ソラは目をまわして、ぽふっと寝転がってしまう。
脳内に流れてきた情報は、幼いこねこにんにとって驚愕な事、嬉しい事、悲しい事、怖い事…たくさんの人達の出来事が集約されていた。
解り易く例えるなら、たくさんのアニメ映画を一気にみたような感じだ。
少し、加減すべきだったな…と男性は軽く謝罪してソラの頭を擦る。
すると、酔いが覚めたようにソラは起き上がった。
「どうだった? あの映像の中に出てきた人々の出来事は?」
「…しゅごい(すごい)」
「全ての情報は…覚えてないか。例え、覚えてても、君の記憶の許容量がオーバーしてしまう」
「ねぇ、おじたん。おじたん、だれなん?」
ソラは不思議そうに、男性に問いかけた。
一体何者…という幼い子にしては鋭敏な質問に、男性はフッと口元に弧を描く。
「俺は、この世界の【導き神】
―――あらゆる神々を束ねる統率者(リーダー)だ」
【To Be Continued… ⇒】
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