ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


「フィン」


リゾットに呼び止められ、フィンは肩越しに振り返る。


「感謝する」

「はい?」


「お前のおかげで、時期は早まったが…胸の内を語る事が出来る」

「……えっ…?」


リゾットは、フィンに近づくと彼女の右手を握る。

宵闇に似た漆黒の瞳が、フィンの空色の瞳と交じり合う。


「俺は誓う。我ら…暗殺チームの誇りと命を賭けて、パッショーネを潰してみせる」

「…はい」


「さらに宣言する。お前との契約を必ず、成立させてやる」

「…しかと、見届けます」


「そして…フィン、お前を頂く」

「はい……っって、あれっ?」


一瞬、何を言われたのか解らず、フィンは返事した後に疑問の声をあげる。

すると、リゾットは彼女の手の甲にキスをして、再びこう言った。


「フィン・スィエル・クレシミエント―――これは演技でも、気紛れでもない。俺の本心からの告白だ。

全てを成し遂げたら、お前の身も心も…俺にゆだねてほしい」


彼の言葉が聴こえるも、頭にうまく浸透しない…フィンは混乱している。

リゾットは冗談を言っていない。

言葉通り、彼の本心を伝えている。

今、自分はどういう顔をしているのだろう。

少なくとも、頬の周りが熱くなっているのは感じている。


「俺は、お前を一生の相棒(パートナー)に…伴侶にしたい」


リゾットは静かにそう言うと、フィンの額に優しく口付けをした。




【リアルな演技…? 偽りなき告白】




そんな親密なやり取りを、遠い民家の屋根から傍観する二つの影があった。


「ふぅー」

「こーら、ふーちゃん。飛んでっちゃダメだよ~」


空色の光翼を広げて、二人のもとへ行こうとするソラをしっかりとホールドしている。

夜風が吹き付け、白衣が翻る。

ウサギの仮面をつけ、素顔を隠す女性…リーシェの視線は、フィンに向けられていた。


「あの子が“ フィンちゃん ”か…」


初めて見るエクレシアに、興味はある。

彼女だけではない、他の仲間達も、他世界の同種族に関心がある。

その注目されている当人は、こちらを避けているみたいだが…。


「うしゃぎしゃん、うしゃぎしゃん」


ふと、屋根にちょこんと座るソラに呼びかけられ、彼女に視線を変えると…


「ふぃんちゃん、おいた…らめ(だめ)」


不安そうにリーシェを見つめ、訴えるソラ。

リーシェが、フィンと喧嘩するのではないか…と心配しているのだ。


「だいじょーぶ! フィンちゃんと喧嘩する気はないよ~」


笑って、ソラの頬をプニプニとつつくリーシェ。

ソラはぶぅーと目を細めつつも、安心したらしく、目をフィン達の方向へ戻す。


「…あちらが攻撃してきたら話は別だけどね」


仮面の下は、真剣味を帯びた表情となっている。

仲間が呟いたその言葉に、ソラは気付かなかった。

仮に、気付いたとしても…幼い彼女にその意味が理解できたかも分からない。

そして…それぞれの長い夜の時間が終わり、地平線から陽が昇り始めた。





【つづく】

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