ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)


 “ どうして、こうなった? ”



リゾットは思わず額に手を押し当てたくなった。


「フィンは、その…うちのチームの家政婦みたいな…感じだ!」

「任務帰りの道で行き倒れになっていた所を、リーダーが拾ってきたんだ。なあ、ジェラード」

「そうそう、それで記憶がところどころ喪失していて、行く宛がないから…リーダーの判断で俺達の所で預かる事になったんだ。ね、ソルベ」


「放っておいても、飢え死にするか、男共に弄ばれてただろ。それを不憫に思ってリーダーが介抱したら…『運命』を感じたんだとよ。

イタリアーノだったら、そんなシニョリーナを黙って放置するか…いや、しねえだろ。俺だったら、逃げねえよう速攻関係を進展させるぜ」


「俺達の仕事知ってんだろ! 誰か一人が遠方に居りゃ、アジトの掃除なんぞできねえんだ。その上うちは料理ができる奴は限られてんだよ、くそっ! 

金のかからねえ都合のいい女を家事手伝いさせて何が悪いんだ! 別に問題ねえだろーが!」


「夜な夜な聞こえるんだ…リーダーの部屋から響く艶やかな声がさ。リーダーの技巧によって、奏でられる刺激的な音色…ああっ…! ディ・モールトベネ!

もっともっと激しいプレ…」


「ぶっちゃけ、俺達じゃどうにもならないんっすよ。こうなった以上、リーダーの判断に任せるしかねえって…しょーがねぇーな~って事さ」

「えっ…えと…要は、リーダーとフィンはいい関係って事ですぜ! た、多分…?」


リゾットを除いた暗殺チームの面々が、次々にソラとリゾットの関係性を偽り+やや誇張気味に語っていく。


「…リゾット、それは事実なのか?」


常日頃、感情を読みとらせない表情が装備のリゾット。

この時、微かにだが、眉を潜めずにはいられなかった。



リビングルームで、リゾットの真向かいのソファーに座るその人物は―――初老の男性。

名前は、ヌンツォオ・ペリーコロと言い、パッショーネの老幹部にあたる人物だ。

彼の訪問は三日前、鳴りだした一本の電話で急遽決まった。


『“あの一件”の近況を訊きに、各チームを廻っている。三日後、そちらへ伺うので報告書をまとめておくように』


あの一件…【眠り姫】の捜索の任務の事だと推測した。

その連絡を聞いたリゾットは腑に落ちなかった。

全構成員に任務が伝えられたのが、ほんの一週間前だ。

スタンドを使用する構成員や、情報網に卓越しているチームはあるが、そんな短期間で見つけ出すのはあまりにも難易度が高い。

けれども、リゾットの胸はざわついた。


“【眠り姫】―――フィンを匿っている事がバレた ”


フィンを買い物に連れていく時も、メンバーをつけていたし、彼女自身も目立たない様に特殊な術を使用して変装していた位だ。

その可能性は低いだろうが…決して安心できない。

どんなに低い確率だろうと、何かしらの形で組織にフィンの事がバレた危険性を拭えないのだから。


メンバーにもその件を伝え、作戦を練る。

当日、フィンをアジトから一時的に別の場所へ移すか…という案もでた。

しかし、プロシュートがそれに異議を唱える。


『フィンの存在は、近所の住民も気づいている。組織の奴らがそこを見逃すとは思えねえぞ…』


フィンは外出する際に、周辺に住む人達と数回だけすれ違った事がある。

それ以外の接触はなかったものの、組織が勘ぐって情報を探る可能性もある。


『いっその事、堂々とフィンを出してやったら?』


メローネの発言に、ハァ? 何言ってんだ、こいつ…と他の面々は難色を示した。

すると、メローネは妖しげに笑みを浮かべて、こう続けた。


『まあまあ、続きを聞いてくれよぉ…。今回の件、組織の抜き打ち捜査みたいなものだと思わないか? どこかのチームが有益な情報を隠して、

【眠り姫】との契約を独占しようと抜け駆けするのを防ぐ為の牽制みたいなもんさ。仮にフィンを隠せたとしても、いつボロがでる解らない』


確かに一理ある。

部下の先を見据えた発言に、リゾットは少し感心した。


「だからさー、いっその事、フィンをリーダーの女って設定にしない? そうすりゃ、いくらでも言い訳つくし、スリルたっぷりおいしい展開がウハウハ…」


…前言撤回

こいつの発言に感心した自分が馬鹿だった。


「メローネの妄想はともかくさ…その案はいいんじゃあないか? どう思う、ソルベ」

「…そうだな、いけそうだ」


「時間もねえし、これからの事も考えると…そういう設定にしておきゃ、後で応用利きそうだなぁー」

「俺もいいと思う。でも…面倒な役は許可しないぞ」


「おい、メローネ。てめえ、余計なホラふいて、事大きくすんじゃねえぞ!」

「やだなぁー、ギアッチョ。チームの命運がかかってるんだから、巧妙なドラマに仕立て上げるにきまってるじゃん!」


「あ、兄貴…俺、芝居とかあんまり得意じゃねえんだけど、どーすりゃいいんだろう…」

「ペッシ! そんな事でビクつくんじゃあねぇ! 演技のノウハウを二日で教えてやる。今日からみっちり叩き込んでやるから、しっかり覚えろ!」


だが、意外にも他のメンバーはメローネのアイディアに乗り気になった。

そうこうしている間に、メローネとジェラードが設定作りをしていった。

プロシュートは、ぼろを出しそうなペッシに演技を叩き込み、ホルマジオはフィンに詳細を話して協力するように頼む。

ソルベは、ギアッチョとイルーゾォに指示をして、アジト周辺の見張りや盗聴されていないかチェックしていった。

なんだかんだで、日付は進んでいき、本番当日となって、回想から冒頭へ戻る。



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