ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
「「ホーリー・トーカー!」」
「……!?」「えっ、だれ…?」
SPW財団が贔屓にしているホテルの一室で、承太郎と花京院の声がはもった。
時間は午後四時を数分すぎていた。
二人はソラ奪還の作戦の計画を打合せしており、ロクサスとシオンが丁度やってきて、少し休憩をとろうか…という空気になっていた。
突然、目の前に出現した目元を隠した謎の女性に、ロクサスは咄嗟に自らの武器キーブレードを出現させて、シオンは目をぱちくりさせて動揺する。
「ロクサス君、シオン君…大丈夫だ。彼女は…フィンの【スタンド】なんだ」
「ええ~?」
「へぇ…この人が【スタンド】なんだ」
花京院の言葉に、ロクサスは俄かに信じがたいのか目を細める。
対して、シオンははぁ~と興味深そうに、彼女に視線を集中させる…すると、ホーリー・トーカーが一歩ずつ後ろへ後退していく。
「あんまりジロジロ見ない方がいい。こいつは、人見知りするタイプだからな」
「あっ…そうなんだ。ごめんなさい」
承太郎が小声で助言すると、シオンは素直に謝った。
花京院が、一歩だけ前に出て笑いかける。
「久しぶりだね…ホーリー・トーカー」
そっと手を差し出して握手を求めるが、ホーリー・トーカーは己の手をあげるそぶりも見せず、じっとしている。
少し離れた距離を維持しつつ、向かい側にいる四人をちらちらとフード越しに隠している目を動かし、見定めしているようだ。
『……クウジョーさん。カキョウインさん。ゴブサタしております』
「なっ…!?」「喋った…!」
「えっ…そんなに驚く事なのか?」
驚愕する承太郎と花京院の様子に、ロクサスはきょとんと小首を傾げる。
「ホーリー・トーカーさんはいつも喋らないの?」
「うん…まさか喋れるとは思いもしなかったんだ」
シオンがこそっと尋ねると、花京院は口元をひくつかせる。
スタンドの中には、自我があるモノもいるのは、親友のアクセルから聞いていたが…
二人のリアクションから、そんなに多くないのだと実感した。
『マスターからのデンゴンをツタエにマイリマシタ』
「…フィンが…! フィンは無事なのかい!?」
「落ち着け、花京院。……それで、あいつは何と言っていた?」
すると、ホーリー・トーカーは右足を軸に目にもとまらぬ速さで自らの身を回転させる。
回転が終わった瞬間、ホーリー・トーカーの姿は別人物へ変化していた。
「「フィン!」」
『的確なメッセージを伝えるためには、ご本人の立場にたつ必要があります。ゆえに、僭越ながら、マスターの真似事をさせて頂きます』
髪形を除き、姿、服装、口調…すべてがフィンに瓜二つだ。
「あの人が…フィンさん」
初めて目にする謎のエクレシア(もどき)に、ロクサスはじっ…と凝視する。
彼は、ソラを含めた9人のエクレシア全員とも面識がある。
何故だろう…眼前にいるスタンドが真似している、フィンは【ある人物】に印象が似ていた。
そんな中、フィン(に成りきっているスタンド)は「それでは、始めたいと思います」と会話を始めた。
『まずは、承太郎君、典明君…一ヵ月前は忙しい時にきてくれてありがとう。封印が解けたら、御礼を言いに行こうと思ってたけど…ごめんなさい。
やらなければならない事ができたので、二人に会いに行けなくなりました』
申し訳なさそうに謝罪するフィン。
花京院が何か言いかけるが、承太郎が「落ち着け」と宥めて、伝言を継続させるように促した。
『私の封印を解いてくれた人がいるの。その人は…封印を解いた見返りに、形式契約を求めてきました』
「それって…」
「形式契約しちゃったの…? フィンさんは…」
ロクサスとシオンが顔を見合わせて、話があらぬ方向に向かっている事に戸惑う。
『今、その人は試練を受けている最中。私は…彼の覚悟を見届ける義務があります。だから二人に会いに行くの遅くなっちゃいます…あはは』
苦笑しながら、頬を掻くフィン。
スタンドが演技しているとはいえ、送られたメッセージと表情ひとつひとつから、彼女が敵地にいるとはいえ、健在である事を証明していた。
その点が幸いか…と承太郎は少し安堵するものの、相方の花京院は気が気でないみたいだ。
『それから…もしも、13機関の人達と定期的に接触しているなら、彼等にもメッセージを伝えてもらえるかな?』
その言葉に、ロクサスとシオンは思わず息をのむ。
フィンが顔を引き締めて語る様子から、自分達の事をあまり快く思っていないのだろうか…。
『“今は私に関わらないでください。いつか事情を話せる時期がくるまでは…”』
メッセージを伝え終えた瞬間、フィンの姿は細かな粒子となって消え、ホーリー・トーカーは元の姿へ戻っていた。
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