ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
「すみません。お取込み中でしたか?」
「いいや、単にダベッてただけさ」
「それで、用件はなんだ?」
この部屋に来たのは、何か急を要する件が発生したのだろう。
リゾットはすぐに察して、どんな用事なんだと訊くと、フィンは「じゃあ、お言葉に甘えて」と理由を語りだした。
「…で、その親友二人にメッセージを伝えたいのか」
「はい」
「おいおい…んな事できるわけねーだろ」
プロシュートが眉を潜めて難を示す。
そもそも、フィンは名目上『客人』という扱いだが、実際は半ば誘拐されてきたのだ。
しかも【眠り姫】という呼び名である意味有名人。
そのため、頻繁に外出させる訳にはいかず、彼女が買い物に行く時は、メンバーの誰かを同行させていた。
いや、そもそもフィンからその点に関する不平不満が出てこなかった事自体、疑問にすべきだった。
本来なら、隙をみて逃走してもおかしくないし、恨み言をぶちまけてもいいレベルなのだから。
「プロシュートさんの言いたい事は解っています。でも…これだけは譲れません」
この三週間弱、フィンの人となりを見てきたために、温和な人となりがすっかり定着した。
しかし、今日の彼女はいつものイメージと異なり、芯の強い毅然とした態度で、マフィア二人と向き合っているのだ。
「安心してください。親友二人に無事を伝えるだけです。逆に彼らにメッセージを伝えないと、暗殺チームに迷惑がかかっちゃいますから…」
「「はぁ?」」
「私の親友…ううん、戦友を舐めたらいけません。あの二人は、かつて100年生きるうりさん…吸血鬼を倒した猛者です。
私の知る限り、“最強のスタンド使い”だと言っても過言ではありません」
その言葉に、リゾットとプロシュートはピクッと反応する。
「ほぅ…」
「そりゃ、是非ともお目にかかりたいもんだ」
「会うのはいいけど…今は控えてください。組織にバレてしまったら元も子もないでしょう?」
フィンの苦言に、リゾットは「失礼」と黒い瞳を閉じて軽く謝罪し、プロシュートは「確かに…」と少し残念そうに肩を竦める。
「それで…フィン。俺達の身元をバラさずに伝言を送る手段はあるのか?」
「はい!」
「どうやるんだ? まさか、公衆電話を使うなんてベタなやり方じゃねえだろうな…」
「それよりも確実に、安全に伝えられる方法ですよ」
フィンは笑ってそう言うと、身体が薄らと光を帯びる…背後から彼女とは異なる【ヒト】が出現した。
「それは…!」
「ほぉ…お前もスタンド使いだったのか」
「この人は【ホーリー・トーカー】。私は『“とうか”さん』と呼んでます」
外見は、顔を隠した紫色の隠者の服装をした女性のようだ。
ホーリー・トーカーは、目元を隠したまま、リゾットとプロシュートを交互に見つめると、フィンの耳元に口を寄せて何かを囁きだした。
『……、……、……』
「うんうん」
『………! ……? ……』
「とうかさん、○○○、○○○○、○○○」
「……何語喋ってんだ。あいつら…」
「さあな」
スタンドとフィン、二人が話している内容は気になる。
しかし…彼女(?)らが口にする言語が聴いたことのないもので、意味不明だ。
会話の際の些細なジェスチャーや行動で、なんとなく解るが…。
「じゃあ、お願いします! とうかさん」
「………!」
フィンが小さく敬礼した。
スタンド…ホーリー・トーカーはコクリと頷くと、全身が空気と同化するよう、透明になっていき、姿を消した。
「お前のスタンドは…例の親友の元に行ったのか?」
リゾットがそう尋ねると、「ご名答」とフィンはほんのり微笑む。
「順調にいけば、数時間で戻ってきますよ」
「…じゃあ、戻らねえ場合は?」
これは推測だが、フィンの親友二人も彼女の行方を捜索しているはずだ。
フィンのスタンドが眼前に現れたなら、本体の行方を探ろうと、スタンドを捕獲する可能性だってある。
でも、フィンはかぶりを振ってそれを否定した。
「とうかさんは、警戒心の強いスタンド。逃げ足も速いんでその点は問題ないですよ」
「…その口調だと、自我があるスタンドなのか」
「うん。ちょっとおかしくなっちゃう時はあるけど…基本はいい人かな?」
「疑問形かよ…」
フィンが頬を掻きながら説明した。
そんな彼女の解説に対し、リゾットはなんとなく想像するしかないと踏んだのか、「そうか…」と頷く。
プロシュートは眉を潜めて、もうちょいはっきりしろや…と訳わからんという表情で、補足を求めた。
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