ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
“ これはとある天使と一人の王様の物語 ”
眠り姫が語ってくれるお伽噺。
それは、多くの少年や少女の心を躍らせるものだった。
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結晶石に閉じ込められている眠り姫は、多くの国々で風の如く噂が拡散していった。
人の反応とは、非現実的な、摩訶不思議な現象に対して、大まかに二つの傾向に分かれる。
一つは、異なるものに対して拒絶反応を示して、中身を知ろうともせず忘却する…または排除しようとするタイプ。
もう一つはそれらを深く追及し、本物か偽物か否かを確かめようとするタイプがある。
個人差はあるが、未知なるモノへ興味と探求心…すなわち後者の部類に入る人は少なくない。
眠り姫の存在は、日常に退屈していたり、そういった不可思議な現象を追い求める人々の心を刺激した。
真偽を確かめようと、多くの挑戦者が異界の園へ足を踏み入れた。
そして…噂が真実であると解明されるのに時間はかからなかった。
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幼い頃から、僕は親から『愛情』をほとんどもらえなかった。
父親は写真でしか顔を見た事がないし、母親は子どもを産んでも母性本能が芽生える事なく、自分の時間を優先するタイプだった。
自分が厄介者扱いされているのに気付いたのは…多分1歳頃だ。
夜遊びが日常茶飯事だった母が、家に帰るのは日が変わる頃。
暗闇が支配する部屋で、幼児だった僕は初めの内は子どもの防衛本能が働き泣いていた。
けれども、誰も助けてくれない状況を否応にも察してしまい、泣かずに堪えるという行為を身につけたのだ。
成長しても、母の自由奔放ぶりは改善される事無く、僕は“この人に愛情を求めるのはムリだ”と半ば諦める選択をするしかなかった。
6歳の時、母がイタリア人男性と再婚した。
義理父もまた、連れ子の僕の事を邪険に扱った。
事あるごとに暴力を振るう彼の顔色を覗い、常に気を張る生活を強いられた。
思えば、昔の僕は檻の片隅でぶるぶる怯える孤独なウサギみたいだった。
そんな貧弱な子どもは、力でものを言わせる悪童達の格好のターゲットになる。
家にも学校にも居場所なんてない。
見て見ぬフリをする母も、虐待する義理父も、弱者苛めする屑なクラスメートも…嫌で、憎くてたまらなかった。
けれども、それ以上に彼等に抗う事無く、小動物であり続ける非力な自分が大嫌いだった。
生きていても何の希望も見出せない…空虚で無気力な末路しかない。
心が荒み、卑屈になりかかっていた、そんな僕を変貌させる出来事がやってきた。
そのきっかけをつくった一人は、名前が解らない男の人。
下校中に、怪我を負って倒れていた彼を偶然発見した。
彼を狙う刺客らしき男達が数名ほど、近くを探しまわっていて、僕に「こいつを知らないか」と一枚の写真を見せてきた。
僕は「あっちにいったよ」と嘘をつき、倒れている男を庇った。
恐怖は不思議となかった。
この人は独りぼっちで寂しくて…自分と似ていると思ったから助けたのだ。
それから暫くして、僕の周りの人間たちの態度が変わっていった。
義理父は暴力を振るわなくなった。
鬱陶しいと言う心情はあるものの、腫れものを触るように、慎重な感じになった。
クラスメートからの苛めもぱったりなくなった…何故か低姿勢な態度になり、満員の映画館では席を譲ってくれるまでになった。
あまりにも劇的な変化に、僕は戸惑いを隠せなかった。
後日、帰り道で例の庇った男と遭遇した。
傷もすっかり癒えた男は、視線を合わせて僕にこう言った。
『君がしてくれた事は忘れない』
その言葉が、今までの謎を解き明かしてくれた。
この人が、僕を救ってくれたんだと…。
それから、男は直接的に関わらずに、遠くから、僕を見守ってくれた。
あとから、その人がマフィアの幹部である事が判明して、それ以来、彼は僕の憧れのヒーローとなったのだ。
それからもう一人…僕に大きな影響を与えた女性がいる。
あの噂の『眠り姫』―――フィンだ。
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