ふたつのステラ 第1部 【ファントムブラッド】(1)


ジョナサンとエリナ、ソラは三人一緒に川で遊んだ。

濡れていいように服を着替えたエリナは、ジョナサンは水浴びしてきゃっきゃっ…と楽しそうだ。

ソラも、ジョナサンが用意してくれた簡易の服(水着のようなもの)に着替えさせられて、ジョナサンに支えてもらい、ちゃぽちゃぽと身体を動かす。

程よく冷たい水が心地よくて、思わず目を細めるソラ。


「ふぅ~」

「ステラ、気持ちいいわね」

「うん!」


「それっ!」

「きゃっ! もう、ジョナサンったら!」


ジョナサンに水をかけられ、エリナは頬を膨らませて抗議する。

御返しよ、とエリナも彼に水をバシャバシャッと浴びせると、やったな…とジョナサンも水をかける。

水浴びしているダニーの上にソラは乗っかり、降り注ぐ太陽の光に向かって、手を上げる。


「きりゃきりゃ(きらきら)~」

「ワン!」


そうだね、とダニーも同意する。

それから、一時間程水浴びをすると服に着替えて、エリナが用意してきたお菓子を食べた。


「このクッキー、美味しいよ!」

「うまみ~」

「そう? そう言ってもらえると嬉しいわ」


サクサクの手作りクッキーを一口食べて、ジョナサンは絶賛する。

同じく、ソラもクッキーをもぐもぐ口に入れて満足そうな顔。

二人の感想を聞いて、エリナは満足そうに笑う。


ジョナサンは、幸せな心地よさに浸っていた。

家や学校が辛くても、エリナとソラ、ダニーがいるから全然怖くなかった。

それで気付いたのだ。

例え、周りが敵だらけであっても、誰か一人でも自分を理解してくれる人がいるだけ世界は変わる事を。

苦しい事があっても哀しい事があっても、味方がいるだけで心が強くなれる事を…。


(……そう、僕はもう独りじゃないんだ)


ソラの髪の毛をタオルで拭いているエリナ。

ジョナサンは、傍からその様子を見ながら別の思いがよぎる。



「…エリナとステラは、僕に希望を与えてくれた。

だから…今度は、僕が二人を守らないといけない」



そうだよね、ダニー…と愛犬の背をなでて語り掛けるジョナサン。

ワン、とダニーは小さく吠える。

「その通りだよ」と、ジョナサンの決意に共感するかのように…。

そんな主の瞳が、今までとは異なる強い意志を宿している事に、この時点で彼は気付いていた。



「ねぇ、ステラ…貴女はどこからきたの?」


ソラの髪を櫛で梳いている途中、エリナが何気なく質問した。


「おうち?」

「そう、貴女はどこに住んでいるのか…教えてもらえる?」

「くーちゃんのままのとこ」


「くーちゃん…って誰?」

「ともらち」


“お友達”の家に住んでいる…という事なのか。

一瞬、目を見張ったジョナサンがこう話しかけてみた。


「お父さんとお母さんは…?」

「まま、しぇんしぇーとこ。ぱぱ…おほししゃん。にーたん、どっかいった」


ジョナサンとエリナはまさか…と顔を見合わせる。

「お星さまになった」…これは、この子の父親は亡くなっているという意味だ。

母親も…先生のところにいるという言葉から、身体が弱くて、病院にいるのでは…と推測した。

さらに、お兄さんはそんな悲しい現実を受け入れられなくて家を飛び出してしまったのでは…!



「……大丈夫さ、ステラ! 君には僕とエリナがいる!

ダニーもいる! だから、君は独りぼっちじゃあないんだ!」


「そうよ、寂しい時は私達に甘えていいのよ」



急に励ましたり、親身になって頭を撫でられたりして…ソラは「ありぇ~?」とコテンと小首を傾げた。





【解説者がいたら、よかったかもしれない】





※補足説明


ソラは「ママは先生の所でリハビリ中で、パパはお星さまに住んでいるんだよ。お兄ちゃんは旅に出てどこかにいるんだ」と言いたかったのです。

母親のアンナさんに関しては、ジョナサンとエリナの推測は当たっていますが、父親と兄の事は完全に誤解してしまったようです。

といっても…事情を説明して、うまく理解してもらえるかは別問題ですけどね。





【To Be Continued… ⇒】

9/31ページ
スキ