ふたつのステラ 第3.5部 目覚める星と反旗の暗殺者(アサッシーノ)
“ お前は覚えているか?
血まみれで今にも地獄の門へ片足を突っ込んでいた、憐れな男の事を。”
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14の頃、仲が良かったいとこが轢き逃げされて、亡くなったあの日…少年の人生は変わった。
ひき逃げをした犯人は、身内が社会的地位の高く、裏社会ともある程度のコネがきく奴だった。
下された判決は、数年程度の実刑。
その無情な現実を直面して以降、少年の中の何かが弾けた。
裁判を間近でみてきた。
犯人はしおらしく反省している様に、一般市民にはみえただろう。
いや…実際は違う。
少年は目撃したのだ…あの男の本性を。
あいつが、隠れた所で「なんでガキ一人の所為で、こんな窮屈な思いをしなきゃならねーんだ」と自らが被害者のように、弁護士に訴えていた。
隠れてその話を聞いていた少年は、爪が食い込んで血が出るほど、拳を強く握りしめた。
血液が逆流して、沸々とマグマのように煮えたぎる感覚だった。
今にも、あの犯人に殴りかかろうとするのを必死で抑えた。
実の兄弟のように育ち、可愛がっていたいとこを…人ひとりの命を軽んじるこんな下衆な輩に殺された。
その事実が、少年の中の理性を鋭い刃で切り裂いていった。
裁判の結果が、さらにそれを助長させていき…彼にある『決心』をさせたのだ。
世間があの男が引き起こした事件を忘却の彼方へ置きつつある中、少年は身体を鍛えていった。
元々、身体を動かすスポーツは好きだったため、周囲にはあまり不審がられなかった。
心にじんわりと潜む『黒い炎』を…誰にも悟らせてはならない。
肉体改造をする傍ら、あの犯人の事を徹底的に調べ上げた。
趣味や好物、好きな女のタイプや犯罪歴まで…。
調べれば調べる程、溜まっていた埃が次から次へとでてきた。
犯人が救いようのない腐った奴だという事も…。
世の中は矛盾で満ちている。
酒やタバコを一切やらないまっとうな人間が損をして、金やコネのある悪党が甘い汁を啜る。
社会は、幼くして命を奪われたいとこよりも、性根の腐った犯人を選んだ。
こんな理不尽な事…許されていいわけがない。
“ 社会的に制裁を加えられないなら、俺が手を下してやる。”
少年は、養ってくれた家族を、友達を、帰るべき居場所を…全てを手放して悪魔にその魂を渡す覚悟をしていたのだ。
やがて、少年は18歳の青年となった。
4年後、いとこが殺されたその日に、轢き逃げ犯はシチリア島の東側にある海で水死体となって発見された。
発見時、その犯人は警官さえ吐瀉物を催してしまう程に、凄惨な遺体と化していた。
青年は、その日を境に故郷であるシチリアを出た。
人を殺した彼は、二度と表社会には戻れない。
裏社会の門をくぐるしかなかった。
青年の名前は―――リゾット・ネエロ。
後に、イタリアの最大ギャング『パッショーネ』の暗殺チームのリーダーとなる男だ。
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