【1】遠い日の記憶


「ヴァンス! 朝だよ。起きて!」


煩い声が耳に嫌と言うほど聴こえてくる。

重たい瞼を薄らと開けると、視界に映し出されたのは妻ではなく…黄緑色の髪の子ども。

一度上半身を起こして、その子ども…イオンをぼぉーと見つめるヴァンス。


「…うるさい…ねる」


ヴァンスは、再び瞼を固く閉じてゴロンと敷布団に寝転がる。


「起きてよ! もう朝食の時間だよ」

「……先に食べてろ」


「そんな事したらイタチが怒るだろ!」

「……俺が許す。飯食え」


ゼェゼェと息を切らしながら、イオンは自分の主人を叩き起そうとするが、全く歯が立たない。

その主人であるヴァンスは、心地よく寝息を立てて2度目の夢路へと向かいつつある。


その時…部屋の襖を素早く開ける音が響く。

ヴァンスのもう一人の部下である、うちはイタチが姿を現した。

イタチは、眠りにつく主人の布団の上で跨りながら、懸命に起こそうとしているイオンを見て溜息を洩らす。


「イオン…お前は先に行っていろ。俺が起こす」

「……はーい」


イタチに言われた通りに、イオンはその寝室から出ていく。

遠ざかっていくその部屋を振り向きながら、イオンは呟く。


「今日も響きそうだな…あの音」


彼の呟きが現となったのは、それから数分後の話。

カンカンと耳障りな金属音が、その部屋から聴こえてくる。


「ヴァンス様、お目覚めになりまし…」

「……煩い、ド阿呆!」



それを追うように、部屋から一瞬、ピカッ、と一筋の光が見えた瞬間、灰色の煙と物凄い爆発音が鳴り響く。

それを離れた処で、イオンは傍観しながら呆れていた。



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