第22話【長期戦の構え】
眠りから覚めても、気分は下降気味だ。
「くっそ~…○ル○ンもダメだった」
ゴミ山で物資を拾いながら、ブツブツと作戦を練る日々が続いていた。
エスタロッサの強さとしぶとさに苦戦している。
そういや、あの男の出現頻度が増えているような…。
(…私と姉さんの体力をけずってる?)
考えれば考える程、頭に思い浮かぶ推測。
こちらの作戦は悉く失敗している。
逆に、奴の掌で踊らされている気がしてきた。
「…うーん」
私の頭のキャパシティは、『あの魔神族をいかにして夢の領域から撤退させるのか…』という事が現在進行形で増加中だ。眉を顰めながらも、仕事の手は抜かない。
使えそうな物資をひょいひょいと拾っていると…
「おーい!」
瓦礫の下から呼ばれた。
見下ろすと、そこにはウボォーギン…うぼさんがいた。
「あ、うぼさん」
「どーした、リーシェ? なんつーか不機嫌まっしぐらだなぁ」
勉強しすぎて寝不足なんじゃねーの?
うぼさんはケラケラ笑ってからかう。
私の顔は、他人にもみて分かり易いほど、酷くなっているのか…。
「………うん、つかれてる」
私はハァと重たいため息を漏らして座り込んだ。
あの野郎が夢路で現れる様になってから、全然寝た気がしない。
このままでは、ストレスがたまる一方だ。
「…相当参ってるな、悩みでもあんのか?」
そんな深刻な状況を察したのか、うぼさんは眉根を寄せて尋ねてきた。
「……ある」
「話なら聞くぜ」
「……食糧にされるかもしれない」
「ハァッ? なんじゃそりゃ!?」
直面している問題を素直に語った。
普通だったら、夢に出てくるモノを恐れるなんて…と鼻で笑われるのがオチだろう。
しかし、タカさんやうぼさん、フラさん…私のごく身近にいる一部の人間は、私の事情を知っている。
「…で、その魔神はリーシェがでかくなって力を蓄えたら食っちまうぞって宣戦布告したのか」
「…うん、しかも手強い」
うぼさんは、地べたに座り込んで親身になって私の話を聞いてくれた。
なんとか追い出す方法を模索しているが、似たり寄ったりで手詰まり状態だ。
「うぅ~」
「おぉー…お前の悩む姿なんて初めてみるな」
頭を両手で抱える私を、うぼさんは腕を組んで物珍しげに見つめる。
その言い方だと普段の私が悩み事とは程遠い子どもだと思っているのか…失礼な言い方だな。
「…ていうか、さっきから聞いてて思ったんだけどよ」
「?」
「お前、焦りすぎじゃねえか」
「…??」
「俺も強いヤツがいると血の気が騒ぐ性質(タチ)だが、敵のタイプ次第で戦略は立ててるぞ」
ウボォーギンは頭を人差し指でトントンと叩きながらさらに続ける。
「俺が言いてえのはな…リーシェは目的を達成する事を優先しすぎてるんだ。
作戦が失敗してんのは、相手の明確な情報抜きで闇雲に事を進めてるからだろ」
「……!?」
指摘された事に、私は眼を極限まで見開いた。
(うぼさんの言う通り……なんでそんな初歩的なこと気付かなかったんだろう)
その答えは、食物連鎖に巻き込まれる恐怖と、エスタロッサへの対抗心が原因だとすぐに分かった。
一刻も早く標的を駆逐しなくては…そんな思いに駆られて、基礎的な事を疎かにしてしまったのだ。
(……バカだな。ほんと…)
ひとつの事に集中しすぎて周りが見えていなかった。
自分自身の浅はかさを痛感した。
(でも…)
私の口元は綺麗な弧を描く。
これは、いい教訓となった。
バラバラになったジグソーパズルのピースが埋まっていくように、靄がかかっていた思考の窓が一気に鮮明になっていく。
迷い込んだ迷路の解決ルートを導き出せたのだから。
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