第19話【喜べない再会】


5年前のあの日―――私は死んだ。

大きな手術を終えて、次の仕事まで時間があったから、休息しようとしていた。

ホテルの一室でテレビを見ながら寛いでいる時に、電話がかかってきた。

電話をかけてきた相手は―――クロロだった。


なんで、私の携帯番号知ってるんだ? こいつ。

そもそも、流星街を離れてから、連絡どころか一度たりとも接触していないはず…。

幻影旅団の事は、ハンターサイトでちょくちょく目にしていたから、あっ、有名になったのか程度には感じていた。

…というか、電話がかかってくるまで思い出せなかったよ、ごめん。


電話越しに、クロロは「何年振りだろうな…」と感慨にふけるような発言をしていたのは覚えている。


『つまらない用事ならきるぞ』


半ば通話を遮断しようとした私に、あいつは「おいおい、そう急かすなよ」と、続けてこう言い放った。


『なぁ、リーシェ…蜘蛛に入らないか?』


これが最初の勧誘だった。

冗談でしょ、と軽く受け流そうとしたその瞬間に、背中に激痛が走った。

脳裏に、姉が黒ずくめの…おそらく王族だろう…男に斬られる光景が映し出される。


ノーバディと本体の因果関係はまだ解明されていない。

これは推測になるが、本体が何かの形で死んでしまった場合、ノーバディも同様に消滅してしまうのかもしれない。

既に虫の息状態で、よくそんな仮説を思い立ったな…と、自分を褒めたい。

でも、そう結論に至った私の心境は絶望ではなく、むしろやすらぎに満ちていた。


(やっと…姉さんと会える。私は…元に戻るんだ)



“リーシェ”“コゼット”


一つであった存在が二つに分けられてしまった。

全く異なる世界、違う環境で…違う職種について、それぞれの人生を歩んでいた。

いつか、タカさんと同じように、世界の扉を超える手段を得たら、真っ先に姉さんに逢いに行きたかった。

夢でなくて、直に逢いたかった。


父さんと母さんが亡くなった後、姉さんは母方の叔母の元で育てられた。

その義理母ももうおらず、身内は誰もいない。


夢見を通して、姉さんが私の拠り所になってくれたように…

だから、今度は私が、姉さんの心の支えになれたらいい、そう思っていた。

当初、思い描いていたものとは違うけれど、このまま姉と融合して、一つの存在に戻れるなら…もう離れ離れなんかじゃない。

本望だと感じた。



薄れゆく意識の中で、誰かが私に声をかけていた気がした。

従業員だろうか…?

その真相を確かめる事無く、私は消滅した。



1/3ページ
スキ