第2話【昔馴染みとの邂逅】
~♪♪♪ ~♪♪♪
お気に入りの歌を口ずさみ、軽々と建物から建物へ跳躍していくリーシェ。
清潔感のある白い白衣が、ところどころ赤黒い色で染まっているが、そんな事はどこ吹く風。
「ふんふん~♪ 一仕事の後の“運動”はかーくべつー♪」
爽快感に包まれて、機嫌が頗る良いらしい。
「さーて、事務所に戻って一風呂浴びて麦茶でも飲みますか…て、ん?」
仮面を手で触れていると、ある違和感を感じたのかつけていた面を片手でとった。
「…ヒビ入ってるよ、あ~」
先程の悪魔との戦闘で割れてしまったようだ。
また、新しいの購入しないと…と些か面倒くさそうに眉を潜める。
ストッと地面に着地したのは、人気が少ないダウンタウンに近い場所。
そこに溶け込むように、レトロな雰囲気の木造の事務所がある。
―――《Devil May Cry》
扉をきぃと開けて、リーシェは入って行った。
「ただいまー…と、今日は久々の仕事が入ってたんだっけ、あいつ…」
あいつ…とは、この事務所を経営している便利屋で、本職は悪魔ハンターの『ダンテ』
リーシェを二階に住ませている大家的存在であり、時折仕事を手伝う仲間でもある。
あと…プライベートでは深い間柄だ。
「…またピザ三昧してたな」
机の上に、デリバリーで注文したLサイズのピザが入っていただろう箱とビールの缶が散乱していた。
ダンテの食事は偏っている。
リーシェがいない時は、ほぼピザとストロベリーサンデーばかりだ。
健康志向な人からみれば、目を覆いたくなる食生活だ。
念のために冷蔵庫を開けてみる…
今朝、つくっておいた麦茶の容器と購入していた肉と野菜はまんまある。
「あとで簡単なものつくるとして…まずは身体を洗おうか…」
そう呟くと、リーシェは仮面をキッチンにあるテーブルの上に置いて、シャワーのある浴室へ直行した。
◇◇◇ ◇◇◇◇◇ ◇◇◇
シャワーを浴びながら、リーシェはある事を考えていた。
(…見られてたな)
悪魔達と戦っている時に、遠方から誰かが見ている事に気付いていた。
人数は3,4人。
気配を消していたようだが、エクレシアであるリーシェは微弱な気配すら感じ取れる。
(あの気配の消し方は…『念』に近い)
『念』―――自らの肉体の精孔(しょうこう)という部分から溢れ出る「オーラ」とよばれる生命エネルギーを、自在に操る能力の事。
リーシェが生まれ育った世界で使用される特殊能力だが…此処は異世界。
本来ならば、その力を遣う能力者はいないはずだ。
(世界の壁を越えてきた…?)
ひとつの仮説が頭に浮かび上がる。
しかし、その方法は通常では敵う筈のない方法だ。
時空を超える手段―――移送方陣やグミシップ、闇の回廊、空間転位の術を身につけているなら別だが…。
あの【世界】に存在する能力者で、そのようなリスクの高い念を使える人物は、リーシェの知る限りいなかった。
(だとすれば…世界の理を知る【誰か】が介入した…かな)
次に、新しい仮説がすぐに浮かんだ。
この可能性が一番しっくりくる…。
しかし、仮にあの【世界】の人間が第三者の協力を得て、こちらの世界へきたのは理由は?
まだ漠然として解らないが、少なくとも自分と関係はある気はする。
(そういえば、あの気配―――“あいつら”に似ていたな…)
『昔馴染み』の面々が脳裏をよぎる。
彼らとは比較的、付き合いが長いけれども、リーシェから言わせれば、親しい間柄という訳でもない。
彼等は、あの【世界】では危険度が上位のクラスの盗賊団だ。
もし、彼らだとすれば、この世界の宝にでも目をつけて奪いにきたのだとしても全然おかしくない。
(…あんまり会いたくないけどね…)
付き合うのが面倒だ。
生前、組織のリーダーから勧誘を受けた事はあるが、正直入団する意志は皆無に等しい。
(ま、情報は明日から調べるとしましょうか…)
今は、気分を一新して喉を潤したい。
蛇口をひねって、シャワーを止めるとリーシェは浴室からでた。
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