第15話【表裏一体】
タカさんは、しょっちゅう流星街から外界へ旅に出ていた。
私もたびたび連れていってもらったが、その時は留守番する事になった。
留守中、私は念の技を開発したり、タカさんから言い渡された薬草学と魔術の課題をしなければならない。
とりあえず、薬学からやるか…と思い、本棚から関連書籍を抜き取る。
ぺらぺらと頁を捲り、メモに書かれている項目を調べていく。
植物の名前…薬草の作り方、毒の見分け方…効能について。
書物とは、知識の泉だ。
まっ白な脳のキャンパスに、文字と言う名の色を塗りつける。
色を組み合わせていく事で、だんだん明確な【絵】をつくりあげていく…そんな感じだ。
こういうのが苦手な人もいるみたいだけど、そこは人それぞれだ。
指先で文字を辿って小声で読み、ノートに文章を記述する。
それを何度か繰り返していく事で、頭に知識が浸透していく。
単純だけど、この作業は好きだ。
夢中になっていると、玄関の方から気配がした。
(この気配…)
私は作業をやめなかった。
何故なら、感じ取った気配がよく知る人だったから…。
「よぉ、頑張ってるな」
巨体の特徴的な風貌の人。
名前はフランクリン―――私は『フラさん』と呼んでいる。
「……こんにちは」
「おぅ、気にすんな」
お茶を淹れようと、キッチンにいこうとするが、フラさんはそのままでいいと言った。
「タカさんに頼まれてな…。留守中に、お前一人だけだと不用心だから様子みてくれって…よ」
うん、知ってる。
流星街は、身内同士の連帯感は強いけれど、中には物資を横取りしようとする人も少なくない。
この家も、外見はアレだけど中は色々充実してるから何度か襲撃された事がある。
その度にタカさんが退けていたが、私一人だけだと格好の餌食になってしまう。
だから、自分が旅で家をあけている時は信頼している人に警備を頼む事にした。
「少し大きくなったな」
「……そう?」
「ああ、初めの頃はもやしみたいにひょろっとしてたが…今は年相応になったと思うぞ」
フラさんは、大きい手でぽふぽふと私の頭を撫でる。
こういうのは嫌いじゃない。
「…お菓子たべる?」
「…じゃあ、いただこうか」
フラさんのいい所は、あまり人のあれこれを詮索しない所だ。
クロロやシャルみたいに、あれこれ興味本位で質問してきたりしないし、だからといって、他の住民のように念能力ではない魔術を使う私を物珍しくみたりしない。
まあ、彼等の事を嫌いという訳じゃないけど…。
その点 フラさんは、適度な接し方を心得ている。
「ん、どうした? クロロ、シャル」
「しぃー!」「ばれちゃうよ!」
別に噂してたわけじゃないけど、いつもの二人がきた。
この間、タカさんに一ヶ月間、家に近づくなとタカさんに言い渡されたはずだけど…。
「よっ! リーシェきたぜ!」
「うぼー、声大きすぎ…」
あっ、ウボさんとマチも来た。
ウボさんの方は、半年間自宅に入るなと禁止令が発動されていたはずだけど…効果はないみたいだ。
「お前らな…マチはともかく、はしゃぎすぎるな。そんなだから、タカさんに怒られるんだぞ」
「けっ、あのけち親父怖くて飯の宝庫を諦めるなんてできるかよ!」
フラさんが軽く窘めても、うぼさんの中には『諦め』の文字はないらしい。
「っていうか、毎回、怒られてるのはウボーが原因じゃないか!
そーいう態度がおじさんのげきりんにふれるんだよ!」
シャルが不満ありげに抗議する。
まあ、彼の言う通り、タカさんの怒る60%の原因はウボさんがつくってるのであってる。
「あの親父の沸点が低いんだよ! ちょっと飯つまみ食いしたぐらいでぎゃーぎゃー騒ぎやがって…」
「うぼーの場合は、ちょっとどころかおひつ五合分は食べてるじゃない…たかさん怒るの当然だと思う」
マチが冷静にツッコむ。
いーじゃねえか、育ち盛りなんだよ、なあクロロとウボさんは同意を求めようと、クロロに話しかけるが、クロロは苦笑いして肩を竦める。
「お前ら、騒ぐならよそでやれ。近所迷惑になるだろ」
フラさんが、いい加減静かにしろと注意した。
なんだかんだで、このやり取りを見るのは嫌じゃない。
今日も平和だという証拠だから。
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