第13話【Objective reconfirmation】
話している最中、客室の扉がきぃと開く。
「普賢さん! 目を覚ましたんですね」
やってきたのは、カナンだった。
意識を取り戻した普賢を見て、ホッと安心した表情で駆け寄る。
「心配かけたね…」
「いいえ、あの…ところでそちらの人はお知り合いですか?」
隣のベッドで、いまなお眠り続けているシズクに目がいくカナン。
普賢は穏やかに笑って「そうだよ」と答えた。
「でも大変でしたね。知り合いの人も巻き込まれるなんて…」
カナンは、同情的な視線をシズクに投げかける。
彼女の言葉に対して、普賢は首をひねる。
「うーん…彼女は“巻き込まれた”とは思わないよ。きっと」
「どちらかと言えば、【狩り損ねてしまった】と感じるでしょうね」
リーシェの発言に、えっ? とカナンは目を細める。
「この子、幻影旅団なんだよ」
「ええっ!?」
普賢の口から飛び出した爆弾発言に、カナンは驚く。
「「「ええええええ――――!!??」」」
「やれやれ……賑やかな人が多いな、この城。有名なお笑い劇団の舞台じゃあるまいし…」
閉ざされた扉越しに驚愕する声が響く。
大方、噂好きな使用人の類だろうか…。
はぁ…と面倒くさそうに息を漏らすと、リーシェは仲間の羽の治療を続行した。
【Objective reconfirmation】
一人の青年が銀色の長い髪を揺らしながら、世界のルートを駆け足で急いでいた。
(……あと少しでつく…)
何故、彼は焦っているのか。
さかのぼること数時間前―――青年…イザヤは『万屋』の仕事で、異世界を訪れていた。
今回の依頼人は、昔から懇意にしている海賊王を目指す青年…モンキー・D・ルフィ。
彼の依頼で、自分が信頼している【女性】がつくったスイーツ、肉や魚、新鮮な野菜などの食料と、年代物のワインを届けに行ったのだ。
『イザヤ~、いっしょに食おうぜ!』
すぐに帰るつもりが、半強制的に宴に誘われてしまった。
騒がしいけど、居心地がいい空間で酒を飲んでいた時…事件が起きた。
突如、次元の狭間を飛びぬけて、侍風な男が自身に襲いかかってきたのだ。
『お前がエクレシア…いや候補だっけか?』
【エクレシア】―――その単語が聞こえた瞬間、眼前の男の狙いが瞬時に解った。
チャラけていたが、外見とは裏腹に腕の立つ人物だった。あの剣豪ゾロの剣撃を器用に刀で止めるほどだ。
一気に必殺技で仕留めようにも、ルフィ達がいた事と、同盟を組んだ他の海賊団もいたため、防御に回ってしまう。
そんな窮地を救ったのは、意外にも男の所持していた携帯だった。
戦闘の最中、かかってきたその電話に男は顔をしかめながらも抜いた刀を鞘へ納める。
その際に、男が腕につけていた腕輪にはまっている妙な宝石から光が放たれる。
次元の回廊…【ルート】が開き、男はそこへ跳躍して撤退した。
…そのアイテムに見覚えがあった。
世界の理を知り、一部の渡航者しか持つ事の許されない…移動手段のひとつだ。
胸騒ぎがした。
携帯で連絡を取っている時の男の会話から、男は単独ではなく、組織ぐるみで活動しているのだろう。
おそらく、エクレシア全員も…あの男の仲間に襲撃されている可能性が高い。
俺も行く! と主張するルフィを諌めて、イザヤは移送方陣を発動させた。
(頼む…間に合ってくれ…)
そう願いながら、イザヤはほさ部のある世界へ移動していった。
【つづく】
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